「あの．．．」
マヤが口を開く。
「何？」
リツコが口を開く。
沈黙が流れた。

「先輩？」
マヤが口を開く。
「何？」
リツコが口を開く。
沈黙が流れた。

「あの．．．」
マヤが口を開く。
「．．．」
沈黙が流れた。

「先輩の前には、あの時、誰が現れたんですか？」
マヤが意を決したように言う。
「．．．」
沈黙が流れた。

「補完計画が発動した時のこと？」
地面に視線を落としたままリツコが言う。
「はい。」
マヤが、やはり地面に視線を落としたまま言った。

「死んでいたわ。」
リツコが、何か他人事のように呟いた。
「え？」
マヤがリツコを見る。
リツコは、相変わらず、地面を見ながら歩いていた。
「母さんをプロテクトした時、少しプログラムを変えたの。」
「．．．」
マヤが視線を地面に落とす。
「私と自爆してくれるように。」
「．．．」
「司令と、私と、自爆してくれるように。」
「．．．」
「けれど、CASPERは、それを否定した。」
「．．．」
「母さんは、私より、自分の男を選んだのよ。」
「．．．」
「けれど、当たり前よね。だって、私だって．．．」
「．．．」
「そして、司令に撃たれたのよ。」
「．．．」
「ターミナルドグマで。」
「．．．」
沈黙が流れた。

「先輩？」
マヤが呟く。
「．．．」
リツコは、地面を見ながら歩いていた。
「いいんですか？」
マヤが呟く。
「．．．」
リツコは、あいかわらず地面を見ていた。
「このままで。」
マヤが言う。
「．．．」
リツコは、あいかわらず地面を見ていた。
「殺されたんでしょう？」
マヤが声を荒げる。
リツコがマヤを見た。
「どうしろって言うの？」
リツコがマヤを睨む。
「あ．．．」
マヤが、目を見開く。
リツコが、視線を地面に落とした。
「．．．」
沈黙が流れた。

「先輩？」
マヤが呟く。
「．．．」
リツコは、地面を見ながら歩いていた。
「あの。」
マヤが呟く。
「．．．」
リツコは、地面を見ながら歩いていた。
「ごめんなさい。」
マヤが呟く。
「．．．」
沈黙が流れた。

「ごめんね。マヤ。」
地面を見ながら、リツコが呟いた。
「．．．」
沈黙が流れた。
 

ゲンドウ、リツコとマヤ、そしてシンジが学校に戻ってきた。
空が赤く染まっていた。
シェルターへの階段を降りていく。
「シャワーを浴びてくる。」
ゲンドウが言った。
「僕もいい？」
シンジが言う。
「ああ。」
ゲンドウが呟いた。

ゲンドウとシンジが、衣料庫に入っていった。
「先輩？」
マヤがリツコを見る。
リツコがマヤを見た。
「何？」
「シャワー、浴びません？」
「ええ。着替えは？」
「あそこにありますけど。」
マヤが衣料庫を指差しながら言う。
「そう。」
「シンジ君達が出てきたら．．．」
マヤがリツコを見る。
「そう。」
リツコが衣料庫を見ていた。

衣料庫から、ゲンドウとシンジが出てきた。
ゲンドウがリツコとマヤを見る。
「すまない。」
「いいえ。」
マヤが言った。
ゲンドウとシンジが浴場へ歩いていく。
「先輩？」
マヤがリツコを見る。
「ええ。」
リツコが歩き出した。

「先生用の服のようなんですけど．．．」
服を見ながらマヤが言う。
「そうね。」
服を見ながらリツコが言う。
「白衣のあるところが気に入ったわ。」
「そうですね。」
マヤがリツコを見る。
リツコがマヤを見て微笑んでいた。

リツコが脱衣籠に白衣を入れる。
「マヤ？」
リツコがベルトを外しながら言う。
「はい。」
マヤがスカートのジッパーを降ろしながら言った。
「服．．．汚しちゃったわね。」
リツコが、スカートのジッパーを降ろしながら言う。
「あ．．．そんなこと、どうでもいいんです。」
マヤがリツコを見た。
「．．．」
リツコがマヤを見る。
「先輩が、生きていてくれれば。」
「．．．」
「．．．」
「そう。」
「．．．」
「ありがとう。」
リツコが目線を前に戻し、スカートを足から抜いた。

リツコが、じっとして体を動かさずにシャワーを浴びている。
マヤが、その様子をじっと見ていた。

マヤが、ランドリーの椅子に座っていた。
「お待たせ。」
リツコが声をかける。
マヤがリツコを見た。
「いいえ。」
マヤが微笑む。
リツコがマヤの隣に腰を下ろす。
洗濯機が動いている。
沈黙が流れた。

「夕飯の用意しなくちゃね。」
リツコが言う。
「ええ。」
マヤが、気のない返事をする。
「シンジ君が作ってくれるの？」
リツコが言う。
「このまま、ここに居たら．．．多分。」
洗濯機を見ながら、マヤが言う。
「そう。」
リツコが呟いた。

「先輩．．．」
洗濯機を見たまま、マヤが言う。
「何？」
リツコがマヤを見る。
「司令に、松代のマギを占拠するように言われました。」
洗濯機を見ながら、マヤが言った。
「そう。」
リツコも洗濯機を見る。
「断りました。」
マヤが言う。
「そう。」
リツコが言った。
マヤがリツコを見る。
「先輩は、どうしますか？」
「．．．」
リツコが洗濯機を見ていた。

「私は、汚れているから．．．」
リツコが呟いた。
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モニターのこちら側 Genesis 5:7 完 

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