| −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ２０２０年８月５日 ０８５８ 長野駅 窓の外の、駅のホームが後ろに動き出した。 シンジが、窓の外から、隣のレイの方に目を移す。 「結構、楽な時間でよかったね。」 シンジが口を開く。 レイが、窓の外から、シンジの方に目を移した。 「そうね。お昼も駅弁だし。」 レイが微笑む。 「そうだね。」 「うん。」 レイが、シンジの手のひらに、手をのせた。 シンジが、手のひらを見て、そして、レイを見て、窓の外に視線を移した。 『綾波？』 『何？』 『．．．なんでもない。』 『そう。』 窓の外を街並みが流れていく。 沈黙が流れた。 旧ネルフ松代支部 国連直轄 人工進化研究所 所長室 スクリーンに、シンジ達の映像が、映し出されている。 「動き出したな。」 「再び、約束の時が近づいた。」 「新たな補完の時。」 「失われたリリスの、本来の意志による人類の新生を。」 「全ての生命が『死』をもってひとつになるために。」 「リリスの導きのままに。」 キールが、口を開く。 「エヴァシリーズの打ち上げ準備を。 儀式に向けて、追って連絡させていただく。」 スクリーンに、各支部で移送されていく、エヴァシリーズの映像が映し出される。 委員らの映像が、次々に消えていった。 キールが、手元のディスプレイに触れる。 レイの映像が映し出された。 「本来の意志．．．」 キールの映像が消えた。 ０９４７ しなの６号車内 車内アナウンスが流れていた。 「次は、松本。松本。大糸線、中央本線、松本電鉄はお乗換えです。」 椅子にもたれていたシンジが、目を開ける。 シンジが、レイの方を見た。 レイが目を開く。 「乗り換えだね。」 レイが微笑みながら言う。 「うん。」 シンジが、微笑みながら頷いた。 ０９５４ あずさ５８号車内 動き出した電車の中で、シンジが、荷物を網棚に上げている。 レイが、シンジを見あげていた。 シンジが、レイの隣に腰を下ろす。 「結構あわただしかったね。」 レイの方に顔を向けながら、シンジが口を開いた。 「そうね。」 「まあ、あんまり待つよりはいいけど。」 「うん。 お昼、いつ食べる？」 「えーと、どの辺りがいいんだっけ？」 シンジが、メモ帳を取り出して開いた。 レイが、メモ帳を覗きこむ。 「１１時１５分に、山梨市に着いて、そこから、普通列車なんだ．．．」 「うん。座れるかな？」 「そうだね．．．どうかな。」 「１２時４９分に富士吉田に着いて、すぐに、出発だから、その前には食べたいよね。」 「うん。」 「．．．そうだな．．．富士吉田まで食べられなかったら、第３新東京市にいる時間を短くしてもらって、富士吉田で、車の中で食べるとか。」 「．．．そうね。それで、いいかな。」 「第３新東京市、どこか見たいところ、ある？」 「うーん。憶えてるわけじゃないから。シンジは、どこか行きたいところある？」 「そうだな．．．」 シンジが、メモ帳から目を上げて、天井の方に目を向けた。 レイが、シンジを見る。 沈黙が流れた。 シンジが、前を見る。 「学校とか、住んでたマンションとか、あとは、第３新東京市を見渡せるパーキングエリアとか．．．くらいかな。あとは、湖になっちゃってるし。」 「そうなの。」 レイが、少し視線を落とした。 「けど、そんなには、行けないと思うよ。１時間くらいだから。」 「そう。」 「そうだな。どこがいいかな。あんまり考えてなかった。」 「そう。」 「レイの打ち上げられた辺りに行ければいいかなって。」 レイが、シンジを見る。 シンジが、レイを見た。 「ん？」 シンジが言う。 「ううん。」 レイが、小さく微笑んで、そして、視線を落とした。 レイが、シンジの手に手を載せる。 「うん。」 シンジが呟いた。 １１２７ 中央本線 普通列車内 ボックス席に座っていた。 「少し早いけど、食べる？」 シンジが、口を開く。 「うん。」 レイが頷く。 シンジが立ちあがり、棚から、駅弁の袋を下ろした。 シンジが、椅子に腰を下ろし、駅弁を取り出して、レイに差し出す。 「はい。」 「ありがと。」 レイが、駅弁を取り、ひざの上に置いた。 「駅弁なんて、はじめてかも。」 駅弁をひざの上に置きながら、シンジが言う。 「そう．．．」 二人が、かけられた紐を解いていく。 シンジが箸を割った。 「じゃ、いただきます。」 「いただきます。」 シンジが、から揚げを口に運ぶ。 「ん。なかなか。」 レイが、かまぼこを口に入れた。 「そうね。」 シンジを見て微笑む。 シンジが微笑んだ。 １２５５ 富士急行 富士吉田駅前 シンジが、駅前のロータリーを見まわした。 向かい側に、いかにも、という感じの大型乗用車が止まっていた。 「あれかな？」 シンジが呟く。 「そうなの？」 レイが呟いた。 「とりあえず、行ってみようか。」 そう言って、シンジが歩き出す。 レイも歩き出した。 乗用車に近づくと、ドアが開いて、レイコが降りてきた。 レイコが、軽く手を上げて微笑む。 シンジが、軽く頭を下げた。 レイが、レイコを見ながら、頭を下げる。 「お待たせしました。」 シンジが言う。 「いいえ。特に問題はなかった？」 レイコが言う。 「ええ。 あ、こちら、綾波レイさん。」 シンジが、レイの方に手を向けて言う。 「こちら、結城レイコさん。」 レイの方を見て、レイコの方に手を向けて言う。 「結城です。よろしく。」 レイコが、軽く頭を下げる。 「あ、はじめまして。綾波レイです。」 レイが、頭を下げた。 「じゃあ、行きましょうか。荷物、トランクに入れる？」 レイコが言う。 「はい。」 レイコが、トランクを開けて、シンジ達を見た。 シンジが、自分とレイの荷物をトランクに入れる。 「いい？」 「はい。」 レイコが、トランクを閉める。 横に回り、後部座席のドアを開けた。 「乗って。」 レイコが、シンジとレイを見て、そして、運転席に回っていく。 「レイ。」 シンジが、レイの方を見る。 「うん。」 レイが、後部座席に乗り込んだ。 シンジが、乗りこみ、ドアを閉めた。 レイコが、ドアを閉め、シートベルトを締める。 「いいかしら？」 レイコが言う。 「はい。」 シンジが答える。 「はい。」 車が動き出した。 「どこに行くとか、決まってるんだっけ？」 レイコが口を開く。 「電車の中でも少し話したんですけど、１時間だから、レイの打ち上げられた所とか、そのくらいでいいかなって。」 シンジが答える。 「どこだか分かる？」 シンジが、レイを見る。 レイが首を振った。 「まあ、湖畔だから、どこも、あまり変わらないかもね。」 「そうですね。そう言えば、僕がいたときは、皆同じようなところに帰ってきたような気がします。」 「ああ。駐在所があるところね。あそこの近くなのかな。」 レイコが、バックミラーを見る。 「よく分かりません。」 レイが首をかしげた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− モニターのこちら側 Genesis 5:46 完 |