| −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「おまたせ。」 シンジが、豚肉の冷しゃぶを盛り付けた皿をテーブルに置く。 「ううん。」 レイが、そう言いながら、茶碗にご飯を盛っていく。 「じゃあ、食べようか。」 「うん。」 「「いただきます。」」 箸を味噌汁につけて、豚肉を取り、たれにつけて、口に運ぶ。 「なかなかいいかも。」 レイが言う。 「そうだね。」 シンジが答えた。 「それでさ。」 シンジが口を開く。 「ん？」 レイが、口を止めて、シンジを見る。 「第３新東京市なんだけど、戦自の許可がいるんだって。」 「．．．そうなんだ。」 「僕は、普通に許可を取ればいいみたい。」 「そう。」 レイの顔が少し暗くなる。 「それで、レイも、多分、普通に許可を取ればいいんじゃないかって。」 「そうなの。」 レイが、少し驚いたような、うれしそうな顔になる。 「うん。まあ、国連の問題だから、まだ分からないけど。」 「そう。」 「それで、ついでだから、僕の上司に、連れていってくれないか聞いてみたんだけど、それは、ちょっとまだ分からないんだ。」 「行くのに許可がいるのなら、上司に連れていってもらうのも仕方ないかもね。」 「うん。僕が車を運転していくこともできるみたいだけど。」 「そうなの。」 「まだ、どれがいいか聞いてるところだから。」 「そう。」 「それで、その辺りが分かったら、日程とか決めて、許可を取ろうよ。」 「うん。分かった。じゃあ、分かったら教えてね。」 「多分、そんなに長くはかからないと思うから。それに、お盆前にするんだったら、そんなに日もないし。」 「うん。楽しみだな。」 「．．．」 微笑みながら、少し遠くを見ているレイを、シンジが見ていた。 戦略自衛隊 松代駐屯地 資料室 「おはようございます。」 「「おはよう。」」 青葉と日向が、端末に向かっていた。 荷物を置いて、シンジが椅子に腰を下ろし、端末のスイッチを入れる。 メールを調べると、結城レイコからメールが来ていた。 第３新東京市行きについて詰めたいので、部屋に来て欲しいというものだった。 シンジが、受話器を取り上げる。 『はい。結城です。』 「碇ですけど。」 『おはよう。』 「おはようございます。例の件ですけど、今からいいですか？」 『ええ。いいわよ。』 「はい。じゃあ、伺います。」 『はい。それじゃ。』 「はい。」 『ガチャ。ツー。ツー。ツー。』 シンジが、受話器を置き、椅子から立ちあがった。 結城レイコ 執務室 シンジがドアをノックする。 「はい。」 中から、レイコの声がした。 「碇です。」 「開いてるわ。入って。」 「はい。」 シンジが、ドアを開けて中に入り、ドアを閉めた。 シンジが、レイコの机の前に立つ。 レイコがシンジを見た。手を差し出す。 「かけて。」 「はい。」 シンジが椅子に腰を下ろした。 「それで、色々聞いたけど、私が行くことにするわ。」 「そうですか。」 「ただ、全部付き合うわけには行かないから、御殿場まで、来て欲しいんだけど。」 「分かりました。 結城さんは、どうするんですか？」 「私は、富士裾野の演習場まで、ヘリで行って、そこから車で行くわ。」 「そう言えばありますね．．．」 シンジが、不審そうな顔でレイコを見る。 「３人で行かないのは、組織的な理由だと思って。」 「なるほど。」 「まあ、そういう感じ。 御殿場から往復して、それで、湯河原に行ってもらえるかな？」 「分かりました。」 「それで、いつごろ行くの？」 「お盆前ということで、８月の第１週くらいかと思ってるんですけど。」 「なるほど。平日？」 「どっちがいいですか？」 「そうねえ。平日の方がいいかな。仕事だし。道の混み具合は、大して変わらないかもしれないけど。」 「じゃあ、平日にします。水曜日とかどうですか？」 「水曜日。２泊３日で、土日休みか．．．ＯＫ。じゃあ、そうしましょう。えーと、５日ね。御殿場に着く時間とか分かる？」 「いいえ。調べます。」 「ちょっと待ってね。」 レイコが端末のキーボードをたたき出す。 「こっちは、何時ごろ出るの？」 「８時くらいだとどうですか？」 「８時ね．．．」 レイコが、マウスやキーボードを操作している。 「甲府からの接続が悪いみたいね。封鎖されてるから、仕方ないか．．．富士吉田だと．．．乗り換えが多いけど、本数はあるみたい。０８５８発で、４時間弱。富士吉田からにする？」 「お任せします。」 苦笑いしながら、シンジが言う。 「じゃあ、富士吉田駅に１３時にいるようにするから。第３新東京市までは、大体、５０Ｋｍくらいだけど、道が悪いから、１時間半くらいかな。」 「．．．」 「向こうに１時間いたとして、帰りは、御殿場で、３０分くらいだから、明るいうちには、湯河原に着けると思うわ。」 「分かりました。」 「細かい時間は、もう一度、二人で検討して。」 「はい。」 「じゃあ、８／５のつもりで予定入れておくけど、許可は、早めに出してね。」 「はい。分かりました。」 「他に何かある？」 「いいえ。じゃあ、相談して、予定とか出しますので。」 シンジが、椅子から立ちあがる。 「うん。よろしく。」 「ありがとうございました。失礼します。」 シンジが、ドアを開けながら、軽く頭を下げた。 「はい。それじゃ。」 軽く手をあげて、レイコが手を振る。 ドアが閉まった。 レイコは、しばらくドアを見て、そして、端末に向き直った。 メゾン松代 レイがカレーを口に運ぶ。 「それでね。」 シンジが口を開いた。 「ん？」 レイが、手を止めて、シンジを見る。 「第３新東京市に行く話だけど．．．」 「うん。」 「第３新東京市の近くは、僕の上司が、車に乗せてくれるって。」 「そう。」 「それで、一番近くの駅は、ここからの接続が、あまりよくなくて、富士吉田から行くんだって。」 「そうなの。」 「ただ、そこも、かなり接続が悪くて、長野からだと、６時くらいと、８時くらいみたいなんだよね。」 「６時ね．．．ちょっときつそう。」 「うん。８時だと、富士吉田に１２時過ぎに着くんだけど、お昼どうしようかと思って。」 「ああ．．．そうね。富士吉田って、何か食べられるのかな？」 「どうかな．．．」 「そう．．．そこから、第３新東京市は、どのくらいかかるの？」 「１時間半くらいだって。」 「そう．．．」 「うん．．．」 「けど、お弁当、持っていくんでしょ？」 「そうしようか。」 「うん。少し遅くなるけど、第３新東京市で食べてもいいし。車の中で食べてもいいし。」 「そうだね。その辺は、聞いておく。あと、８／５にしようと思うけど、いいかな？」 「大丈夫だと思う。」 「じゃあ、そうしよう。レイも、許可とか取っておいて。」 「うん。分かった。」 「よし。これで、あとは、切符とか取れば、いいかな。」 シンジが微笑む。 「そうね。」 レイが微笑んだ。 シンジとレイがベッドに横になっていた。 「第３新東京市か．．．」 シンジが呟く。 「．．．」 「なんだか、不思議な感じがする。」 「そう．．．」 「ちょっと、いろんなことがありすぎて、まだ、自分の中で、どうしたらいいか、よく分からないんだ。」 「そう．．．」 「レイは？」 「私は、何も憶えてないから。」 「そう．．．」 「ただ、そこに戻ってきたって聞いたから、一度見ておきたいなって思って。」 「そう．．．」 「うん。」 「それもいいかもしれないね。」 「うん。」 沈黙が流れた。 『行って、湖を見たら、僕は、何を考えるんだろう．．．』 『．．．』 『綾波は．．．』 『いろんなことがあった所。そして、何度も死んだ所。』 『！』 『．．．』 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− モニターのこちら側 Genesis 5:45 完 |