「今日、私の家、来る？」
レイが口を開く。
「え．．．うん、いいよ。」
シンジが、ちょっと虚を突かれたような表情をして、そして、答えた。
「じゃあ、私の家の近くの公園で、桜を見ることにして、こっちから行こう。」
レイが、左に伸びる道を指差しながら言う。
「了解。」
シンジが微笑んだ。

レイとシンジがバス停に立っていた。
「随分歩いたね。」
レイが言う。
「うん。疲れた？」
「うん。ちょっとね。」
レイが、シンジの腕を取って、体を預けるようにする。
「レイ．．．」
「．．．」
沈黙が流れた。
 

地下鉄車内

レイが、シンジの肩にもたれて目を閉じていた。
「次は、須坂。須坂。」
アナウンスが流れた。
シンジが、レイを見る。
「レイ。」
「．．．」
シンジが少し肩を揺らす。
「ん．．．」
レイが目を開けた。
「レイ。」
「ん．．．どこ？」
「もうすぐ須坂。」
「．．．そう。」
レイが、眠そうな顔をして、体を起こす。
「大丈夫？」
「うん。」
レイが、シンジを見て頷いた。
 

須坂駅前

「公園は、どう行くの？」
シンジが口を開く。
「うん．．．ちょっと疲れたから、帰ってもいい？」
「あ、うん、分かった。」
「じゃあ、帰りましょう。」
「うん。」
レイが、シンジの手を取って歩き出した。
 

須坂ハイツ ４０２号室

「お邪魔します。」
シンジが、そう言いながらドアを閉め、鍵を閉める。
レイが、部屋に歩いていくのを見て、靴を脱ぎ、そして靴をそろえた。

シンジが部屋に入ると、レイがベッドにうつ伏せになっていた。
「レイ。」
「ん．．．」
「風邪ひくよ。」
「うん．．．」
レイが仰向けになる。
「寝るんだったら、着替えたほうがいいよ。」
「うん．．．」
レイが、ぼんやりした目でシンジを見て、立ちあがり、服を脱ぎ始める。
「終わったら、呼んでね。」
シンジが、レイから目をそらし、トイレの方に歩き出した。

しばらくして、シンジが部屋に戻ると、レイがベッドで眠っていた。
レイを見て、シンジがため息をつく。
「レイ．．．」
シンジが、押し入れから、布団と毛布を出して、ベッドの脇に敷く。
『綾波？』
『．．．』
『おやすみ。』
『．．．』
 

「．．．ジ。シンジ。」
「ん．．．」
シンジが目を開けると、レイが、シンジの顔を覗きこんでいた。
「あ．．．レイ。」
「ごめんね。寝ちゃって。」
「ううん。今、何時かな。」
シンジが、布団から手を出して、腕時計を見る。
「７時半。そんなに遅くないね。」
「うん。」
「夕飯は？」
「うーん。パンならあるけど。」
「そう。公園は、夜桜とか見られるのかな？」
「一応、街灯はあったと思うけど、普段は行かないから。」
「ああ。そうだね。」
「お店は、駅前に行けば、まだやってるわよ。」
「そう．．．けど、とりあえず、布団から出て、ちょっと落ちついてからにしよう。」
「分かった。お茶飲む？」
「うん。」
「はい。」
レイが、立ちあがって、キッチンの方に歩いていった。
シンジが、布団を畳み出した。

シンジの携帯が鳴った。
携帯を取り、オフフックボタンを押す。
「はい。」
『シンジか？ワイや。トウジや。』
「ああ、トウジ？珍しいね。」
『ああ。ちいと話したいことがあるんやが、長野、出て来れるか？』
「今から？」
『都合悪ければ、シンジの都合のいいときでええ。』
「じゃあ、明日の夜の９時とか、大丈夫？」
『わかった。ほな、明日、月曜の夜９時、長野駅改札やな。』
「うん。」
『ほな、そんときに。』
「うん。それじゃ。」
『ああ。』
「．．．」
『ガチャ。ツー、ツー、ツー．．．』
シンジが、オンフックボタンを押す。

トウジが話したいこと．．．

「電話？」
シンジが、声の方を見る。
レイが、ポットとカップを載せたお盆を持って立っていた。
「うん。」
「そう．．．」
レイが、腰を下ろし、お膳にお盆を置く。
「トウジからだよ。さっき会った。」
「ああ。鈴原さん？」
レイが、紅茶葉を入れた茶漉しをカップにのせて、お湯を注いでいく。
「そう。」
「そうなんだ。お砂糖入れる？」
「うん。一つ。」
レイが、砂糖を一つ入れて、カップを僕の前に置いた。
「ありがとう。」
「ううん。」
レイが、自分のカップに茶漉しをのせてお湯を注ぐ。
紅茶に砂糖を一つ入れた。
「お待たせ。」
レイがシンジを見て微笑む。
「ううん。」
シンジが微笑んで、カップに口をつけた。
 

臥竜公園

「結構、広いんだね。」
シンジが呟く。
「そうね。けど、昼間来たほうが楽しそう。」
「そうだね。動物園とか博物館とかあるみたいだし。」
「うん。」
「桜は散っちゃってるかもしれないけど、来週、来ようか。」
「うん。」
シンジの手を握るレイの手に、少し力が入った。
 

須坂ハイツ ４０２号室

お弁当屋さんで買ってきた、から揚げ弁当とシャケ弁当、サラダ、そして味噌汁が、お膳の上に並んでいた。
「いただきます。」
「いただきます。」
シンジが、味噌汁に割り箸をつけて、から揚げを齧る。
「結構いけるかな。」
レイが、から揚げを一つ取って齧った。
「そうね。」
シンジがごはんを口に入れる。
レイもそうした。
シンジが、サラダに箸をのばす。
レイの箸とシンジの箸がぶつかった。
「「あ、ごめん。」」
レイとシンジが箸を引く。
レイとシンジが顔を見合わせた。
「フフフ。」
「ハハハハ。」
二人共笑っていた。
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モニターのこちら側 Genesis 5:40 完

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