「ん．．．」

シンジの隣りから声がした。
シンジが、目を開ける。
天井が目に入った。
布団が、少し動いて、シンジの視界をレイの顔が埋めた。
「ふふ。おはよう、シンジ。」
「おはよう、レイ。」
レイの唇が、シンジの唇に重なる。
『おはよう、綾波。』
『おはよう、碇君。』
レイの舌が、シンジの舌に絡む。
レイの唇が離れた。
レイが、シンジを見る。
「今日、休んじゃおうか。」
「どこか行くの？」
「ふふ。ここにいるの。」
レイの手が、シンジの胸からお腹の辺りを滑る。
「．．．」
『どう思う。綾波？』
『葛城三佐みたいね。』
『そうだね．．．』
シンジが、手を伸ばし、レイの頬に触れる。
「今日、昼間行く最後だし、レイも行ったほうがいいと思うんだけど、どうかな．．．」
レイが、虚を突かれたような顔をして、そして、少し表情を曇らせて、顔を逸らした。
「．．．そうだね。」
レイが、布団に腰を下ろして呟く。
シンジが、起きあがった。
「ごめん。レイ。」
「ううん。」
「．．．」
「服、乾燥機の中？」
「うん。」
「ちょっと着てくるね。」
「うん。」
レイが、タオルを巻いて、お風呂の方に歩いていった。

「お待たせ。」
レイが、水色のブラウスと白のズボンをはいて立っていた。
「ううん。じゃ、着替えてくるね。」
シンジが、タオルを巻いて、お風呂の方に歩いていった。
シンジが、風呂場から出ると、コンロにやかんがかかっていた。
居間に戻ると、レイが、お膳の脇に座っていた。
「ありがとう。布団、たたんでくれて。」
シンジが、レイの向かいに置かれた座布団に腰を下ろした。
「ううん。朝ご飯、何にする？」
レイが、シンジを見る。
「ケーキ．．．は、ちょっと重い？」
「それでもいいかなって思ってた。」
「そう。ちょっとご飯あるけど、卵焼きとかで、食べる？」
「うーん。ちょっと重そう。」
「じゃあ、ケーキを食べて、足りなかったら、途中で、マックとか。」
「それ、いいかも。」
「じゃ、そうしよう。」
「うん。」
レイが微笑んだ。

レイが、紅茶の入ったポットと、砂糖、カップ、お皿、そしてフォークを載せたお盆を持って、居間に入ってきた。
「お待たせ。」
レイが、お盆を置きながら言う。
「悪いね。」
シンジが、レイを見ながら言う。
「ううん。そんなことないよ。」
レイが、イチゴのショートケーキを皿に載せ、シンジの前に置く。
もう一つのショートケーキを皿に載せ、自分の前に置いた。

レイが、カップに紅茶を注ぎ、シンジを見る。
「一つ？」
「うーん。今は、入れないでいいかな。」
「はい。」
レイが、シンジの前に、カップを置く。
「ありがと。」
「ううん。」
レイが微笑みながら、自分のカップに紅茶を注いだ。

「食べよう？」
レイが、シンジを見る。
「うん。」
シンジが頷いた。

「いちご、好き？」
レイが聞く。
「ん？うん。おいしいよね。」
シンジが答える。
「そう。私も好き。」
レイが、微笑みながら、シンジを見る。
「そう。」
シンジが、レイを見ながら微笑んだ。

レイが、皿やカップを洗っていた。
「悪いね。」
シンジが言う。
「ああ。けど、昨日は、シンジにやってもらったし。」
「ありがと。」
「ううん。」

「お待たせ。」
居間に入ってきたレイが言う。
テレビを見ていたシンジが、レイを見る。
「少し休んでから行く？」
レイが、シンジの隣りに腰を下ろして、テレビの方を見る。
「時間、あんまりないんじゃない？」
「そうだね。
  行こうか。」
シンジが、レイを見る。
「うん。」
レイが頷いた。
 

須坂駅前 マクドナルド

「なんにしようか。」
シンジが、メニューを眺めながら言う。
「２セットだと多いかな。」
レイが、メニューを眺めながら言う。
「そうだね。」
「．．．ホットケーキ、半分づつ食べようか？」
「いいよ。」
「じゃ、席取っといて。」
「分かった。」
 

「お待たせ。」
レイが、トレイをテーブルに置いて、椅子に腰を下ろした。
「ううん。」
シンジが、レイを見る。
「実は、初めてなんだ。」
ホットケーキのカバーを取りながら、レイが、顔をほころばせて言う。
「僕も、そうだよ。」
「朝なんて来ないから。」
「うん。」
レイが、蜂蜜の封を切り、ホットケーキにかけていく。
ハートマークが描かれた。
レイが、ハートマークの真中に、マーガリンを置く。
「はい。シンジ。」
「あ．．．ありがとう。」
「ふふ。顔、赤くなってる。」
レイが悪戯っぽく微笑みながら言う。
「レイもね。」
シンジが言った。
「うん。ちょっとドキドキしてる。」
レイが、上目遣いでシンジを見ながら言う。
「じゃ、食べるね。」
シンジが、ホットケーキを切り、口に入れた。
「どう？」
レイが、シンジの顔を覗き込む。
口を動かしているシンジ。
シンジが、ホットケーキを飲みこんだ。
「うーん。」
シンジが、視線を逸らす。
「どうしたの？」
シンジが、視線を戻す。
「なんか、緊張しちゃって、あんまり味わかんないね。」
シンジが、苦笑いする。
「そっか。ごめんね。」
「ううん。レイも食べてみてよ。」
「うん。」
レイが、ホットケーキを切り、口に入れる。
シンジが、レイを見ていた。
レイが、ホットケーキを飲みこむ。
「そうかも。」
レイが、苦笑いしながら言った。

シンジとレイが、ウーロン茶を飲んでいた。
「明日から、大学か．．．」
レイが、呟く。
「そうだね。」
シンジが、答えた。
「しばらく忙しいかな。」
「多分ね。
  けど、時間割とか決めちゃえば、すぐに慣れると思うよ。」
「そうね。」
「サークルとかは、入るの？」
「うーん。多分、入らないと思う。」
「そう。」
「シンジは？」
「僕も、多分、入らないと思う。
  ちょっと難しそうだし。」
「．．．そうね。
  夕方、行かないといけないしね。」
「うん。」
沈黙が流れた。

「ね．．．」
レイが呟く。
「何？」
シンジが答えた。
「シンジの家、また行ってもいいよね。」
「いいよ。」
「うん。ありがと。」
「．．．」
「ね、シンジ？」
「何？」
「好き．．．」
レイが呟いた。
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