ビストロ クエルドクエル

「それじゃ、ハッピーバースデー、レイ。」
シンジが、ジンジャーエールのグラスを持ち上げて言う。
「ありがとう。」
レイが、微笑みながら、グラスを、シンジの持つグラスに、軽く当てた。
二人が、グラスに口を付ける。

『綾波？』
『何？』
『誕生日じゃないのかもしれないけど。ハッピーバースデー。』
『．．．ありがとう。』
『どういたしまして。』

レイがグラスを置く。シンジがグラスを置いた。
「もう少ししたら、ワインで、乾杯できるね。」
レイが、シンジを見て言う。
「そうだね。シャンペンの方がいいかな。」
「ふふ。そうね。」
レイが、微笑みながら、海老とハーブのサラダにフォークを入れた。

「ケーキ、家で食べる？」
シンジが、骨付きハムのソーピケにナイフを入れながら言う。
「ここもデザートあるよね？」
レイが、サーモンの薄切りにナイフを入れながら言う。
「いらない？」
「どうしようかな．．．」
「．．．」
シンジが、ハムを口に入れる。
「やっぱり食べようかな。」
レイが、サーモンを口に入れる。
「了解。」
シンジが、パンをちぎって、口に入れた。
 

ビストロ クエルドクエル前

レイが、店の前に立っていた。
シンジが、支払いを済ませて出てくる。
「ごちそうさま。」
レイが、微笑みながら言う。
「誕生日だからね。」
シンジが言う。
「ありがと。」
レイが、シンジの右手に左手を絡める。
二人が歩き出した。
「ケーキ買わないと。」
シンジが言う。
「うん。」
レイが、呟いた。
「この時間だと．．．」
シンジが呟いた。
 

長野ワシントンホテルプラザ内 カフェ・ド・パリ 売店

ケーキの並んだショーケースの前に、シンジとレイが立っていた。
「どれにする？」
シンジが言う。
「定番のイチゴショートも捨て難いし、モンブランもおいしそうだし、けど、ノワールもおいしそうだし．．．」
「．．．」
前かがみになってショーケースを覗き込むレイを、苦笑しながらシンジが見ていた。

『綾波？』
『何？』
『綾波は、どれがいい？』
『モンブランかな。』
『分かった。』

「シンジ？」
レイが、シンジの方を見て言う。
「決まった？」
「うん。イチゴショートとモンブランにするわ。」
「了解。
  すみません。」
シンジが、店員さんに声をかける。
「はい。お決まりでしょうか？」
「あの、イチゴショートとモンブランを２つづつお願いします。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
店員さんが、ショーケースの扉を開けた。
 

地下鉄内

シンジとレイが、並んで座っていた。
「何か、不思議。」
レイが、少し大きな声で言った。
「何が？」
シンジが、少し大きな声で答えた。
「昨日は、あんなに不安だったのに。今日は、なんだか安心してる。」
そう言いながら、レイが、シンジの肩に頭を預けるように載せた。
「そう．．．」
シンジが、呟く。
「うん．．．」
レイが、シンジの手を握っていた手を少し動かして、指を絡めた。
 

メゾン松代

「ここなんだ。」
そう言いながら、シンジが鍵を開ける。
「どうぞ。」
ドアを開けながら、シンジが言った。
「おじゃまします。」
そう言って、レイが、中に入った。

トイレ、バス、そしてキッチンを通り抜けると、畳み敷きの部屋にお膳が置かれていた。
「畳みなんだ。」
レイが言う。
「うん。嫌い？」
シンジが、暖房のスイッチを入れる。
「ううん。」
レイが首を振る。
シンジが、押し入れから、座布団を出して、お膳の脇に置いた。
「どうぞ。」
レイを見て、シンジが言う。
「うん。ありがとう。」
レイが、座布団に腰を下ろした。
シンジが、お膳にケーキの箱を置いて、キッチンに歩いていった。

シンジが、紅茶の入ったポットと、砂糖、カップ、お皿、そしてフォークを載せたお盆を持って、居間に入ってきた。
「お待たせ。」
お盆を置きながら、シンジが言う。
「ううん。ごめんね。」
レイが言う。
「ううん。そんなことないよ。」
シンジが、そう言いながら、ケーキの箱を開ける。
「どっちにする？」
シンジが、レイに視線を移す。
「うーん。モンブランかな。」
「了解。」
シンジが、モンブランを皿に取り、レイの前に置く。
「ありがとう。」
もう一つ、モンブランを取り、自分の前に置いた。

シンジが、カップをレイの前に置き、紅茶を注ぐ。
「一つだっけ？」
シンジが、砂糖の入れ物の蓋を取りながら言う。
「うん。」
シンジが、砂糖をスプーンに一杯分入れた。
「ありがとう。」
レイが言う。
シンジが、自分の前にカップを置き、紅茶を注いで砂糖を入れた。
「お待たせ。」
シンジが、レイを見て微笑む。
「ううん。」
レイが微笑んだ。
「じゃあ、食べようか。」
シンジが言う。
「うん。」
レイがフォークで、モンブランを軽くすくい、口に入れる。
「おいしい。」
レイが微笑んだ。
 

シンジが、キッチンで、後片付けをしていた。
「ね、シンジ？」
レイが隣りに来て言う。
「何？」
シンジが、カップを洗いながら答えた。
「シャワー浴びていい？」
レイが、ほんの少し甘えるように呟く。
「いいよ。」
「じゃ、借りるね。」
「うん。
  タオルとか、棚に入ってるから。」
「はーい。」
レイが、バスルームに入っていった。

片づけを終えて、シンジが、居間に戻った。
レイが、シャワーを使う音がしていた。
「布団でも敷いておくか。」
シンジが、お膳を壁際に片し、押し入れから布団を出して敷いて行く。
マットレス、敷布団、シーツ、毛布、掛け布団、そして枕。
シンジが、敷き終わった布団に腰を下ろす。
シャワーの音がしていた。
シンジが、布団の上に横になった。
 

「．．．ジ、シンジ。」
シンジが、目を開けると、レイが、シンジを見ていた。
「レイ．．．」
シンジが呟く。
「ごめんね。長くなっちゃって。」
「ううん。横になったら、眠っちゃって。ごめん。」
「シンジも、シャワー浴びる？」
「うん。そうするよ。」
「分かった。布団、入ってていい？」
「いいよ。」
「ありがと。」
シンジが、立ちあがって、バスルームの方へ歩き出す。
レイが、布団を少し折って、足を入れ、タオルを外した。

シンジが、風呂から上がって居間に戻ると、レイが、布団の中で寝息を立てていた。
「レイ．．．」
そう呟いて、シンジが微笑む。
シンジが、静かに、レイの隣りに潜り込んだ。
「おやすみ、レイ。」
『おやすみ、綾波。』
『．．．』
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モニターのこちら側 Genesis 5:35 完

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