「行こうか。」
レイを見て、シンジが呟く。
シンジを見ていたレイが、視線を前に落とす。
「そうね。」
レイが呟いた。
 

列車内

ボックス席に、シンジとレイが並んで座っていた。
「ね。」
レイが呟く。
「何？」
シンジが呟いた。
「私達、どうなるのかな？」
「どうって？」
「．．．」
「．．．」
「二人共、監視されてるのよね。」
「．．．」
「私達、例えば、結婚とか、できるのかな？」
「．．．できるんじゃないのかな。」
「ほんとに？」
「．．．分からない．．．」
「．．．」
「．．．」
「このまま、好きになっても大丈夫なのかな．．．」
「．．．」

『綾波？』
『何？』
『綾波は、何て言って欲しい？』
『私には、何て言ってくれるの？』

「碇君？」
「大丈夫だよ、綾波。
  僕は、ずっと綾波のことを想ってるから。」
レイが、シンジの手を強く握った。
シンジが、レイを見る。
レイがシンジを見ていた。
「碇君．．．」
レイが、目を閉じる。
シンジが、レイを見つめる。
シンジの唇が、レイの唇に重なった。

シンジが、唇を離す。
レイが目を開けた。
「碇君．．．」
レイが、シンジの左腕を取り、もたれかかった。

シンジが、窓から外を見ていた。
レイが、左手にもたれて、寝息をたてていた。
『綾波？』
『ありがとう。』
『．．．』
シンジが、窓の外の夕闇に微笑んだ。
 

長野駅 ２１：３８

「遅くなっちゃったね。」
レイが言う。
「そうだね。ま、パレード、最後まで見ちゃったし。」
苦笑しながら、シンジが言う。
「夕飯、どうしようか。」
「この時間だと．．．」
駅前を見まわしながら、シンジがいう。
「ラーメンにしようか。」
「そうね。」
同じように駅前を見まわしていたレイがいう。
「じゃ、あそこの屋台っていうことで。」
シンジが、レイを見る。
「うん。」
レイが微笑んだ。
 

屋台

「なんにしましょう？」
屋台の親父さんが言う。
「僕は、とんこつラーメン。」
「私は、塩ラーメン。それで、チャーシュー抜いてもらえますか？」
思わず、レイを見るシンジ。
シンジの方を向いて、そして、不思議そうな顔をするレイ。
「私、何か、おかしなこと言った？」
「え．．．いや．．．」
「．．．」
「どうして、チャーシュー抜くのかなって、思って。」
「ああ。ちょっとダイエット。それに、あんまり脂っこいもの好きじゃないし。」
微笑みながらレイが言う。
「そうなんだ。」
「そ。こう見えても、女の子は、大変なのよ。」
「そっか。気付かなくて、ごめん。」
「ふふ。別に謝るようなことじゃないけどね。」
「ありがと。じゃ、ケーキとかも、あんまり食べに行かないほうがいいね。」
「えー、それとこれとは、別なの！」
「了解。」
シンジが、苦笑する。
「もー、いじわるなんだから。」
「ごめん。」
「もお。」
レイが、シンジを軽く叩くようにしながら、笑った。
 

「どうぞ。」
レイとシンジの前に、ラーメンが置かれた。
「食べようか。」
シンジが言う。
「うん。」
レイとシンジが、ラーメンを食べ始めた。

「中学のころ、綾波と、やっぱり、こんな風に屋台にラーメンを食べに来たことがあったんだ。」
ラーメンを啜りながら、シンジが口を開く。
「．．．」
「二人で来たんじゃないんだけど。」
「そう．．．」
「それで、彼女は、チャーシュー抜きのにんにくラーメンを注文したんだ。」
「．．．」
「彼女は、肉がきらいで．．．」
「．．．」
「それで、さっき、綾波が、チャーシュー抜きのラーメンを頼んだときに、ちょっと驚いたんだ。」
「そうだったんだ。」
「うん。」
沈黙が流れた。
 

「「ごちそうさま。」」
「まいどありい。」
シンジとレイが、屋台を出た。
「おいしかったね。」
シンジが言う。
「そうね。」
レイが答えた。
 

地下鉄列車内

「ね。」
レイが少し大きな声で言う。
「何？」
シンジが答えた。
「中学の同級生のレイって、私と似てるの？」
レイが聞く
シンジが、レイを見て、そして、前を見る。
「似てるよ。とてもよく似てる。」
「そう．．．」
沈黙が流れた。

「私、やっぱり、彼女なのかな？」
レイが、呟いた。
シンジが、レイを見る。
レイが、俯いて床を見ていた。
「．．．」
沈黙が流れた。

「彼女は、無口だったんでしょう？」
レイが、唐突に言う。
「うん。」
「性格は、似てなかった？」
「そうだね。」
「もし、記憶が戻ったら、私．．．今の私は、いなくなっちゃうのかな？」
シンジが、レイを見る。
レイが、俯いて床を見ていた。
シンジが、前を向いて、そして、上の方を見た。
『綾波？』
『．．．』
『何て言ったらいいんだろう。』
『外見が違うことを言ったら？』
『それで、いいのかな．．．』
『分からない．．．』

「碇君？」
レイが言う。
「何？」
シンジが、レイの方を見る。
レイがシンジを見ていた。
「私．．．碇君と離れたくない．．．」
シンジが、レイの手を握る。
「大丈夫だよ。僕は、ずっと綾波のそばにいるよ。」
「けど、もし、私の記憶が戻ったら、私は、この姿のまま、昔の彼女になって、それで、碇君は、彼女と．．．」
「．．．」
「彼女と、仲良くするんでしょう？」
「綾波．．．」
「私のことなんか忘れちゃうんでしょう？！」
「綾波？！」
「わたし、そんなの我慢できない！」
「綾波！！」
シンジがレイを抱きしめ、唇を合わせる。
レイの体から力が抜けて、手が、ゆるやかにシンジの背中にまわった。

『綾波？』
『何？』
『綾波は、いなくならないよね？』
『．．．ええ。』
『ありがとう。』
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モニターのこちら側 Genesis 5:32 完

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