「碇君？」
レイの声がした。
シンジがレイを見る。
「何？」
「何だか、怖い顔してた。」
レイが、不安そうな顔で、シンジを見ていた。
「あ．．．ごめん。
  女の子と手を繋ぐの、初めてだから。ちょっと緊張しちゃって。」
シンジが、苦笑いする。
「そっか。通信制の高校だしね。」
レイが、おかしそうに笑う。
「うん。同い年の女の子と会うのも、久しぶりなんだ。実は。」
シンジが言う。
「そっか。そう言えば、私もそう。なんだか、似たもの同士って言う感じね。」
レイが微笑みながら言う。
「そうだね。」
シンジが微笑んだ。
 

地下鉄 車内

「それじゃ、また。」
レイが席から立ちあがる。
「うん。３０日に。」
シンジが、レイを見て微笑む
「うん。またね。」
レイが、微笑みながら手を振り、地下鉄を降りていった。

ドアが閉まり、地下鉄が走りだす。
『またね、綾波。』
『ええ。』
レイの姿が小さくなって、そして見えなくなった。
 

翌朝

目覚ましが鳴っている。
シンジが寝返りを打ち、目覚ましに手を伸ばして、目覚ましを止めた。
息を吐いて、シンジが、目を開ける。

テレビから、朝のニュースが流れている。
シンジが、スープを飲みながら、テレビを見ている。
「今日は、一日晴れるでしょう。」
オーブントースターが音を立てた。

日曜の朝。
洗濯機を回しながら、掃除機をかけていく。
洗濯物を干し、布団を窓の前に広げた。
シンジが部屋を出て、鍵を閉めた。

いつもの地下鉄に乗り、途中で別の地下鉄に乗りかえる。
小１時間で、第２新東京市拘置所に着いた。
入り口で、入所の手続きをして、中に入る。
受付で、面会の手続きをした。

シンジが、受付の前の長椅子にかけていると、受付の中から、呼びかけられた。
「碇シンジさん。第１面会室へどうぞ。」
「はい。」
シンジが立ちあがり、第１面会室へと歩いていく。

シンジが第１面会室のガラスの前の椅子に座っていると、奥のドアが開き、ゲンドウが看守に連れられてやってきた。
ゲンドウがガラスの向こうの椅子に腰を下ろす。
「体の調子はどう？」
シンジが口を開く。
「特に問題はない。」
ゲンドウが口を開く。
「そう。」
シンジが、軽く俯いた。
「大学は、どうなった。」
ゲンドウが言う。
シンジが、ゲンドウを見る。
「うん。受かったよ。」
「そうか。よかったな。」
ゲンドウが微笑む。
「うん。」
シンジが微笑んだ。
沈黙が流れた。

「監視は、相変わらずか。」
ゲンドウが言う。
「うん。」
シンジが、視線を落として言う。
「そうか。」
沈黙が流れた。

「試験場で．．．」
シンジが、唐突に口を開く。
「．．．」
ゲンドウが、シンジを見ていた。
「女の子と知り合いになったんだ。」
「．．．」
「母さんによく似てて．．．」
「．．．」
「それで、名前を聞いたら、綾波レイっていうんだって。」
「．．．」
「それで、何か、関係があるみたいなんだ．．．」
「．．．」
「けど、記録とかなくて．．．」
「．．．」
「どう思う、父さん？」
「．．．」
シンジが、視線を上げ、ゲンドウを見た。
ゲンドウが、左上に、視線を逸らしていた。
少しして、ゲンドウが、シンジを見た。
「戦自の周りの人には、相談してみたのか？」
ゲンドウが口を開く。
「うん。」
「俺には、それ以上のことは言えん。おまえに関われるわけではないからな。」
「そう．．．」
「まあ、気をつけることだ。」
「．．．うん。」
沈黙が流れた。

「時間です。」
看守が言った。
「またな。」
ゲンドウが言う。
「うん。ありがとう。」
シンジが、ゲンドウを見た。
立ちあがりながら、ゲンドウが、小さく微笑む。
ゲンドウが、ドアから出ていった。
シンジが立ちあがろうとすると、事務官の声がした。
「次の方もこちらで。」
「あ、はい。」
シンジが、再び、椅子に腰を下ろした。

しばらくして、奥のドアが開き、冬月が看守に連れられて、やってきた。
冬月がシンジの前に座る。
「大学は、どうなったかね？」
冬月が、口を開く。
「受かりました。」
シンジが微笑む。
「そうか。それはよかった。おめでとう。」
冬月が微笑んだ。
「ありがとうございます。」
シンジが微笑みながら、軽く頭を下げた。

「監視は付くのかね？」
「ええ。そうみたいです。」
「そうか。済まない。」
「いえ。もう慣れましたから。それに、冬月さんの謝ることじゃないですよ。」
「そう言ってもらえると、少し気分が楽になるよ。ありがとう。」
「いいえ．．．」
沈黙が流れた。

「父さんにも言ったんですけど．．．」
シンジが、口を切る。
「実は、試験場で、女の子と知り合って、その子が、母さんによく似ていて、しかも、綾波レイという名前なんです。」
「．．．」
冬月が、シンジを見ていた。
「何度か会って、話したんですけど、何か．．．」
「裏がありそうなのかね？」
「ええ。彼女自身は、何も知らないようなんですけど．．．」
「そうか．．．」
冬月が、腕組みをし、視線を上に向けて、何かを考えている。
シンジが、冬月を見ていた。
沈黙が流れた。

「国連が、噛んでいそうなのかね？」
冬月が言う。
「ええ。」
シンジが、冬月を見て言った。
「そうか．．．」
沈黙が流れた。

「何ともならないかもしれないな。それは．．．」
冬月が、難しい顔をして言う。
「上司にも、そう言われました。」
冬月がシンジを見る。
「そうか。まあ、そう言うだろうな。
  まあ、一人で悩まないで、上司とか、周りの人と相談してみることだ。我々は、あまり役に立たないとは思うが．．．」
冬月が苦笑しながら言った。

「時間です。」
看守が言った。
シンジが冬月を見る。
「それでは、また。」
そう言いながら、冬月が立ちあがる。
「あ、はい。」
シンジが言う。
冬月が微笑み、そして、看守に付き添われて、ドアから出ていった。
シンジが立ちあがり、面会室を出る。

「さよなら。」
警備員に、そう言って、シンジが拘置所を出た。
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モニターのこちら側 Genesis 5:29 完 

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