シンジが、立っていた。１１時１０分前。レイは、まだ来ていなかった。
『まだ、少し寒いな．．．』
シンジが頭の中で呟く。
道の脇に積み上げられた雪が、空気を冷たくしていた。

「お待たせ。」
レイが少し息を弾ませて、近づいてきた。
「ううん。」
シンジが微笑む。
「どこに行こうか。」
レイがシンジを見る。
「少し、中を歩いてみる？」
シンジが、門の中を見ながら言う。
「そうね。」
レイが言う。
シンジがレイを見た。
「じゃ、行こうか。」
シンジが、微笑みながら、歩き出した。

「ここの作りって、元の東京大学と同じなんですって？」
三四郎池への階段を降りながら、レイが言う。
「そうらしいね。」
シンジが答える。
「なんだか、ちょっとした公園みたいよね。」
「そうだね。」

二人が三四郎池を見ていた。
「寒いね。」
レイが呟く。
「そうだね。
  夏は涼しくていいかもしれないけど。」
シンジが答える。
「そっか。サードインパクト前は、よかったのかもね。」
「そうだね。」
沈黙が流れた。

「行こうか。」
シンジが、そう言って、レイを見る。
レイがシンジを見た。
「うん。」
レイが微笑んだ。

「随分広いね。」
レイが言う。
「そうだね。」
シンジが答えた。
「地図で見ても広いと思ったけど、実際、歩くと、凄い広さ。」
「うん。まだ、少し、頭に入れるのに、かかりそうだね。」
「ホント。来てみてよかったかも。」
「そうだね。」
沈黙が流れた。

「ね。」
レイが口を開く。
「何？」
シンジが、レイを見た。
「お腹空かない？」
「空いた。」
シンジが微笑む。
「だよね。」
レイも微笑んだ。
「学食とか開いてるかな。」
「行ってみましょう？」
「そうだね。」
二人が歩き出した。
 

中央食堂

春休み中なので、人影はまばらだったが、食堂は営業していた。

「何にしようか．．．」
ショーケースを見ながら、シンジが呟く。
ショーケースの中には、色々な定食が並んでいた。
「日替わり定食？」
レイが、日替わり定食というプレートが立てられた器を指差して言う。
「そうだね。」
「じゃ、私も、そうする。」
「じゃ、行こうか。」
「うん。」
二人が、レーンに歩き出した。

「４５０円になります。」
レジのお姉さんが言う。
「はい。」
「ありがとうございました。」

「結構、おいしいね。」
レイが、箸をコロッケで切りながら言う。
シンジが口を動かし、コロッケを飲みこむ。
「そうだね。」
シンジが言った。
「碇君って、食事は、いつもどうしてるの？」
レイが、シンジを見る。
シンジが、レイを見て、そして視線を落とす。
「昼は．．．」
シンジが、声を潜める。
「僕は、戦略自衛隊にいるんだけど、そこのカフェテリアで食べてる。」
「．．．」
「夜は、家で、自分で、適当に作ることが多いけど。朝は、残り物かな。」
「そう．．．」
レイが、視線を落とした。
シンジがレイを見る。
「綾波は？」
レイがシンジを見て、そして、視線を落とした。
「私は．．．昼は、人工進化研究所っていうところにいて、そこのカフェテリアで食べてる。」
レイが呟く。
「．．．」
「夜は、適当に、自分で作るかな。」
「そう。」
沈黙が流れた。

「所属って、言ってもいいの？」
レイが呟く。
「難しいところかな．．．」
シンジが呟く。
「じゃあ、秘密ね。」
「うん。そういうことだね。」
「分かった。」
レイが頷く。
シンジが頷いた。

「もうすぐ誕生日だよね。」
シンジが言う。
「うん。本当かどうか分からないけど。」
レイが、それほどうれしくなさそうに言う。
「そっか。誕生日、空いてる？」
「夜なら。」
「じゃ、また、長野で会わない？」
レイがシンジを見る。
「いいよ。」
「じゃ、長野駅に６時半に。」
「うん。楽しみにしてる。」
レイが微笑む。
「了解。」
シンジが微笑んだ。

「そろそろ行く？」
シンジが口を開く。
「うん。」
そう言って、レイが椅子を後ろにずらした。

二人で、大学の周りをしばらく歩いた。
「あんまりお店とかないんだね。」
レイが口を開く。
「そうだね。」
シンジが相槌を打つ。
「皆、どの辺りに行くんだろう。」
「やっぱり、市の中心部まで行くのかな。」
「そうかもね。」
「あとは、長野まで行く人も多いかもしれないね。」
「そうだね。」
沈黙が流れた。
 

長野行列車内

「今日は、この後は？」
シンジが聞く。
「特に、ないよ。」
レイが答えた。
「そう。」
「まだ少し早いから、お茶でもしていこうか？」
「いいの？」
シンジがレイを見る。
「いいよ。」
レイが微笑んだ。
 

東急デパート内 モロゾフ

レイがミルフィーユを口に運ぶ。
シンジが、レイを見ていた。
レイが、紅茶に口をつける。
シンジが、モンブランをフォークで切り、口に運んだ。
「やっぱり、ケーキ、おいしいよね。」
レイが微笑む。
「そうだね。」
シンジが微笑んだ。

「中学のころの同級生のレイとは、喫茶店とか行ったの？」
レイが口を開く。
「え？
  うん。一緒に帰ったり、喫茶店に行ったりしたよ。」
「そう。」
「彼女は、あんまり話さなかったから、話しは弾まなかったけど。」
「そうなんだ。」
「うん。」
沈黙が流れた。

「そろそろ行く？」
シンジが、少し暗くなってきた窓の外を見て言う。
「．．．」
シンジがレイを見る。
「．．．」
レイがシンジを見ていた。
「そうだね。」
レイが、上着を引き寄せた。

「ありがとうございました。」
二人が店を出る。
「帰ろうか。」
シンジが言う。
「．．．」
シンジが、レイを見た。
レイがシンジを見ていた。

「手、つなぐ？」
シンジが、苦笑いする。
「．．．うん。」
レイが微笑んだ。
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