「やはり、サード・インパクトで、人の遺伝子は、変化しているようです。」
研究員が、プロジェクタに映し出された映像を指しながら言う。
「こちらが、サード・インパクト前の人の遺伝子パターン、こちらが、サード・インパクト後の人の遺伝子パターン、そして、これが、使徒の遺伝子パターンです。」
研究員が、キールの方を見る。
「サード・インパクト前の人と、使徒の遺伝子パターンは、０．１１％違っていましたが、サード・インパクト後の人の遺伝子パターンは、その０．１１％の違いを含んだ上で、０．２２％違っています。」
「つまり、使徒の遺伝子が含まれているということかね？」
「そうです。」
「残りの０．１１％は？」
「残念ながら、未知の遺伝子です。」
「分かった。ご苦労。」
「失礼します。」
研究員が、パソコンを片付け、退出した。

「どう思うかね？」
キールが、他の委員を見渡しながら言う。
「アダム、そして、リリスの遺伝子が含まれるようになったということかね？」
「神とヒトが一つになり、均質のまま、分かれたということか。」
「サード・インパクト後、ヒトの数は、増えてもいない。減ってもいない。」
「これが、人類の新生かね。」
「新たな補完をすべきだろう。全ての生命が『死』をもって一つになるために。」
「リリスは失われている。我々の中に。そして、リリスの分身たる、エヴァ初号機も。それを手中に収める必要がある。」
キールが口を開く。
「次回の会合は、追って連絡させていただく。以上。」
委員らの映像が、次々に消えていく。
「神の見えざる手か。」
そう呟いて、キールの映像が消えた。
 
 

「おはようございます。」
「おはよう。」
「おはよう。」
シンジが資料室に入ると、いつものように、青葉と日向が先に来ていた。

シンジは席に着いて、参考書と問題集を出す。そして、端末のスイッチを入れた。
そして、掲示板とメールを読む。
「Shigeru Horaki．．．誰だろう。」
見覚えのないアドレスからのメールが来ていた。メールを開いてみる。
 

Subject: はじめまして
Date: Wed. 7 Aug 2019 18:01:29 +0900
From: Shigeru Horaki <shigeru_horaki@army.jssdf.gov>
To: Shinji Ikari <shinji_ikari@pm.jssdf.gov>
Security: Personal
Importance: Normal

はじめまして。洞木ヒカリの伯父の洞木シゲルといいます。
いつも姪がお世話になっております。

実は、姪から、同窓会に碇君を呼びたいと言われ、お知らせする次第です。
日時、場所は以下の通りです。ご都合をお知らせください。

日時：８／１５ １１：４５
場所：松代 旅館定鑑堂
予算：４０００円程度

以上
 

「洞木さんの伯父さんか．．．」
シンジは、そう呟くと、メールを打ち始めた。
 

Subject: How about joining the class reunion party?
Date: Thr. 8 Aug 2019 09:15:32 +0900
From: Shinji Ikari <shinji_ikari@pm.jssdf.gov>
To: Reiko Yuuki <reiko_yuuki@pm.jssdf.gov>
Security: Personal
Importance: Normal

I've got the following mail.
How about joining the class reunion party?

Regards,
Shinji Ikari

---------- forwarded mail ----------

   Subject: はじめまして
      Date: Wed. 7 Aug 2019 18:01:29 +0900
      From: Shigeru Horaki <shigeru_horaki@army.jssdf.gov>
        To: Shinji Ikari <shinji_ikari@pm.jssdf.gov>
  Security: Personal
Importance: Normal

はじめまして。洞木ヒカリの伯父の洞木シゲルといいます。
いつも姪がお世話になっております。

実は、姪から、同窓会に碇君を呼びたいと言われ、お知らせする次第です。
日時、場所は以下の通りです。ご都合をお知らせください。

日時：８／１５ １１：４５
場所：定鑑堂
予算：４０００円程度

以上
 

メールを送り終わると、シンジは、日本史の参考書と問題集を開いた。

何度目かのベルが鳴った。
「行こうか。」
青葉の声がした。
物理の問題集を閉じて、シンジが立ちあがった。

空いている席に腰を下ろすと、誰からとも無く、定食に箸をつけ始めた。
鳥のから揚げにキャベツの千切り、ジャガイモのサラダ、そして漬物がついていた。
シンジが、から揚げを一口食べた。

「行きますか。」
日向が言う。
青葉とシンジが頷いた。
３人がお盆を持って立ちあがった。

３人で、カフェテリアの入っている建物の脇を歩いていた。
「暑いな。」
青葉が言う。
「ああ。」
日向が答えた。
沈黙が流れた。

「前、同級生の伯父さんが、ここにいるっていう話し、しましたよね？」
シンジが口を開く。
「ああ。そう言えば、そんなこと言ってたね。」
青葉が言う。
「一年くらい前だっけ？」
日向がフォローした。
「ええ。
  それで、今朝、その人からメールを貰ったんです。」
「．．．」
「同窓会に誘って欲しいって言われたらしくて。」
「そう。」
青葉が相槌を打った。
「行ってもいいんでしょうか？」
シンジが、視線を落として、言う。
「結城さんには、聞いてみたのかい？」
日向が問う。
「メールは転送しました。」
「なら、あとは、結城さんの返答次第だと思うけど。」
沈黙が流れた。

「クラスの皆は、僕がエヴァのパイロットだったって知ってるんです。」
シンジが、口を開く。
「そう．．．」
日向が言う。
沈黙が流れた。

「許可が出たら、行ったほうがいいと思うな。」
青葉が口を開く。
「もし、皆に責められたとしても、それは、今と何も変わらない。
  そうでなければ、友達が増えるってことだから。」
シンジが、青葉を見る。
「違うかな。」
青葉が言う。
沈黙が流れた。

「そうですね。」
シンジが呟いた。
 

昼のシフト終了のベルが鳴った。
「終わった、終わった。」
青葉が言う。
「今日は、どうする？」
日向が言う。
「今日も暑いが、昨日も飲みにいったからな。」
「ま、そうだな。
  それじゃ、シンジ君、お先に。」
「お先に。」
「お疲れ様でした。」
青葉と日向が資料室を出ていった。
シンジは、数学の問題集を閉じると、メールボックスを開いた。
レイコからメールが来ていた。
 

Subject: It's OK, but...
Date: Thr. 8 Aug 2019 16:23:02 +0900
From: Reiko Yuuki <reiko_yuuki@pm.jssdf.gov>
To: Shinji Ikari <shinji_ikari@pm.jssdf.gov>
Security: Personal
Importance: Normal

It's OK, please join the class reunion party, but don't talk about secrets.

It's no problem to tell your address or phone number to your friends.
But, as you are watched and your talk on the phone is tapped, please take care of your talk.

Regards,
Reiko Yuuki
 

レイコからのメールには、同窓会に参加してもよいが、機密事項は話してはいけない、と書かれていた。また、友人に住所や電話番号を教えてもいいが、監視、盗聴されているので、話す内容に気をつけるようにとも書かれていた。

シンジは、洞木シゲルに
「同窓会に参加させていただきます。よろしくお伝えください。」
と書いたメールを送った。
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