シンジがアスカを見ていた。 

シンジがアスカの唇に唇を近づける。 
「碇君．．．」 
アスカが呟いた。 
シンジが動きを止める。 
アスカを見るシンジ。 
シンジが布団に横になる。 
「綾波．．．レイ．．．」 
シンジが呟いた。 

目を醒ますアスカ。 
起き上がり、時計を見る。朝７時。 
隣を見ると、すでに布団はなかった。 
アスカがタオルを持って部屋を出ていく。 

アスカが、調理室に入っていくと、シンジが、おにぎりを作っていた。 
「おはよう、綾波。」 
「おはよう、碇君。」 
アスカが、シンジの隣に立つ。 
「何かすることある？」 
「．．．水筒、あったかな？」 
「なければ、ミネラルウォーターの瓶を使うのね？」 
「うん。」 
「探してくるわ。」 
「うん。」 
アスカが調理室から出ていった。 

アスカが食堂に入ってくる。 
手に、丸い緑色の大きな水筒を持っていた。 
「見つかったんだ。」 
「ええ。」 
「中、洗っておく？」 
「後でいいんじゃないかな。それより、ご飯食べよう？」 
「ええ。」 
アスカがシンジのいるテーブルの椅子に腰を下ろす。 
テーブルの上には、１５個程のおにぎりと、お味噌汁。 
「「いただきます。」」 
シンジがお味噌汁に口を付ける。 
アスカもそうした。 
「綾波、いくつ食べる？」 
「２つ、食べられるかな。」 
「なら、間に合いそうだね。」 
シンジがアスカに微笑む。 
「そう。」 
アスカがシンジに微笑んだ。 

「「ごちそうさま。」」 
シンジが、お椀と箸を持ち、立ち上がる。 
アスカは、水筒を持って、立ち上がった。 
調理室に入る二人。 
シンジが、お椀と箸を洗い始める。 
アスカは、水筒の口を開け、水を注ぎ始めた。 
水筒の口を閉め、水筒を回すように振るアスカ。 
アスカが、水筒の口を開け、水を流す。 
流れていく水を見ているアスカ。 
アスカが、また、水を注ぎ始める。 
水筒の口を閉め、水筒を振る。 
水筒の口を開け、水を流す。 
シンジがアスカを見ていた。 
「入れるのは、この水でいいの？」 
アスカがシンジに聞く。 
「うん。」 
シンジが答える。 
アスカが水筒に水を注いでいく。水筒の口を見ている。 
水が一杯になったのを見て、アスカが水を止める。 
アスカが水筒の口を閉めた。 
シンジは、広間に戻ったようだった。 

アスカが広間に入ると、シンジが着替えていた。 
「ごめんなさい。」 
アスカが広間から出て行く。 
「あ．．．ごめん。ちょっと待ってて。」 
「うん。」 

「いいよ、綾波。」 
アスカが広間に入ってくる。 
「ごめんね。」 
「ううん。いいの。」 
「じゃ、僕、食堂で待ってるから。」 
「うん。」 
シンジが、広間から出ていった。 
アスカが、着替え始める。 

アスカが、食堂に入っていくと、シンジが、ラップに包んだおにぎりを紙で包んでいた。 
アスカが、椅子にかける。 
シンジが、おにぎりの包みと水筒を持ち比べている。 
「同じ位かな．．．どっちがいい？」 
「．．．碇君が決めて。」 
「そう．．．とりあえず、水筒を持ってくれる？」 
「分かったわ。」 
アスカがシンジから水筒を受け取り、布の鞄に入れた。 

衣料倉庫で帽子を、武器倉庫で拳銃を取った。 
「じゃ、行こうか。」 
「ええ。」 

１時間程歩いて、芦ノ湖の見える高台に着く。 
「ここで、少し休もうか。」 
「ええ。」 
アスカが、鞄から、ビニールシートを取り出し、広げる。 
靴を脱ぎ、シートの上に横座りするアスカ。 
シンジも靴を脱ぎ、シートの上に胡座をかく。 
アスカが鞄から水筒を取り出す。 
「はい。」 
アスカがシンジに水筒を渡す。 
「ありがとう。」 
シンジがアスカに微笑む。 
アスカがシンジに微笑んだ。 

シンジが、水筒の口を開け、水を飲む。 
それを見ているアスカ。 
シンジが、水筒から口を離す。 
「はい。」 
シンジがアスカに水筒を渡す。 
アスカが水を飲む。 
アスカが水筒から口を離し、水筒の口を閉める。水筒を鞄に入れた。 
シンジが、芦ノ湖を見ている。 
「まだ、赤いんだね。」 
「そうね。」 
シンジの肩に、アスカの肩が触れた。 
シンジがアスカを見る。 
アスカがシンジを見ていた。 
「シャンプーの匂いがするね。」 
シンジは、そう言うと、また芦ノ湖に視線を移した。 

「キス、してくれないの？」 
俯きながら、アスカが呟く。 
シンジが、アスカを見る。 
アスカが、シンジを見た。 
沈黙が流れた。 
「起きてたの？」 
シンジが言う。 
「ええ。」 
アスカが答える。 
「そう．．．」 
シンジは、そう言って、視線を芦ノ湖に移しながら呟く。 
「頭に浮かぶんだ．．．水槽の中のたくさんの綾波が．．．」 
「．．．」 
「ごめん．．．」 
「．．．」 
「．．．」 
「いいの．．．ありがとう．．．私と居てくれて．．．」 
「．．．」 
「私を生かしてくれて．．．」 
「．．．」 
シンジがアスカを見る。 
芦ノ湖を見ているアスカ。アスカの頬をつたう涙。 
「綾波．．．」 
「．．．」 
シンジを見るアスカ。 
「綾波．．．」 
シンジがアスカに口付ける。 
目を閉じるアスカとシンジ。 

シンジが唇を離した。 
アスカを見るシンジ。 
アスカが俯いて、シンジを抱きしめる。 
シンジが視線を芦ノ湖に移す。 

「行こうか。」 
シンジが呟く。 
「ええ。」 
そう言って、アスカが立ち上がる。 
アスカがシートを畳んでいく。 
シンジがアスカを見ている。 
「行きましょう？」 
「うん。」 

１時間程歩いて、芦ノ湖に着いた。 
赤い水と白い砂浜。 
「暑いね。」 
「ええ。」 
「どうしようか。」 
シンジがアスカを見る。 
「．．．」 
アスカがシンジを見る。 
沈黙が流れた。 
「．．．とりあえず、左に１時間位歩いてみようか。」 
「ええ。」 
「それで、ここに戻ってくれば、丁度お昼だし。」 
「そうね。」 
「じゃ、行こう。」 
「ええ。」 
二人が歩き出す。 

延々と続く砂浜。 
二人は、疲れないように、ゆっくりと歩いた。 
１１時。 
「人、いないね。」 
「そうね。」 
シートに腰を下ろした二人が呟く。 
アスカが、おもむろに傘を出し、開く。 
シンジも、そうした。 
「かなり違うね。」 
「ええ。」 
「そっか。早く気付けばよかった。」 
「フフフ。そうね。」 
「戻るの、少し楽になるね。」 
そう言って、シンジが微笑む。 
「そうね。」 
アスカが微笑んだ。 

二人が、元の場所に戻って来た。 
「なんにもないね。」 
「そうね。」 
「とりあえず、お昼にしようか。」 
「ええ。」 
レイがシートを取り出し、敷いていく。 

一つの傘の下で、おにぎりを食べる二人。 
「なんだか、妙な感じだね。」 
「傘をさしているから？」 
「そうかな。」 
「晴れているから？」 
「そうかな。」 
「．．．私と．．．だから？」 
アスカを見るシンジ。 
俯いているアスカ。 
「．．．そ、そんなことないよ．．．」 
「そう．．．」 
俯いて、おにぎりを食べているアスカ。 

「水筒、くれる？」 
シンジがアスカに言う。 
「はい。」 
アスカが、鞄から水筒を取り出して、シンジに渡す。 
シンジが水を口に含み、軽くすすぐ。 
そうしながら、水筒とおにぎりの包みを持ち比べるシンジ。 
「ありがとう。」 
シンジがアスカに水筒を渡す。 
アスカも同じようにした。 
水筒の口を閉め、鞄に入れるアスカ。 

シートを畳み、鞄に入れるアスカ。 
「じゃ、右の方、行こうか。」 
「ええ。」 

元の場所に戻ってきた二人。 
芦ノ湖を見ている二人。 
「誰もいなかったね。何もなかった。」 
「．．．」 
「まだ、戻って来ないのかな。誰も。」 
「皆が、ＬＣＬ化する時、皆の前に私が現れた。」 
シンジがアスカを見る。 
「．．．」 
「けれど、その後、私は、何もしていない。」 
「．．．」 
「ただ、碇君と話していただけ。」 
「．．．」 
「私が、ここに来て、アンチＡＴフィールドは弱まったから．．． 
  一人一人の心は、一人一人に分かれているはず。」 
「．．．」 
「皆、夢を見ているのかもしれない。」 
「．．．」 
「自分の中の夢。」 
アスカがシンジを見る。 
「そう。」 
シンジが芦ノ湖を見た。 

「皆、帰って来られるかな。」 
「分からない。」 
「そう。」 
「碇君は、初号機に取り込まれた時、どうして戻ってきたの？」 
「！」 
シンジがアスカを見る。 
「．．．」 
アスカが芦ノ湖を見ている。 
「あの時と同じ？」 
「ええ。」 
アスカがシンジを見る。 
「．．．」 
「．．．」 
「分からない。」 
シンジが俯く。 
「そう．．．」 
「．．．」 
「．．．」 
アスカが芦ノ湖を見る。 
「あの時は、赤木博士が、ＭＡＧＩを使って、干渉した。」 
「．．．」 
「けれど、それは、失敗したわ。碇君のお母さんの時と同じように。」 
「．．．」 
「それまで排出されなかったエントリープラグが勝手に排出され、碇君の溶けたＬＣＬが流れ出した。」 
「．．．」 
「そして、なぜかは分からないけれど、碇君があらわれたのよ。」 
アスカがシンジを見る。 
「．．．そう。」 
芦ノ湖を見ながら、シンジが呟いた。 
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