「早く寝るんだぞ。」
ゲンドウが言う。
「うん。」
シンジが呟く。
少しの間、ゲンドウがシンジを見ていた。
ゲンドウが踵を返し、階段の入り口へと歩いていった。

キーッ。

扉が音を立てた。
 

シンジが調理場で朝食の用意をしていた。
「おはよう、シンジ君。」
「おはよう。」
冬月とゲンドウの声がした。
「おはようございます。」
シンジが答える。
冬月とゲンドウが椅子に腰を下ろす。
「「おはようございます。」」
青葉と日向が食堂に入ってきた。
「おはよう。」
冬月が答える。

シンジが、ご飯、味噌汁、海苔、梅干を並べていく。
「いただくよ。」
冬月が言う。
「はい。」
シンジが答えた。

「「「「ごちそうさま。」」」」
「何時にするかね？」
冬月が切り出す。
「０９００でどうでしょう？」
ゲンドウが答えた。
「結構時間があるな。」
「それなりに時間もいるでしょうから。」
「そうだな。それでいいかね？」
冬月が青葉、日向を見る。
「「はい。」」
冬月がゲンドウを見る。
「シンジ君は、どうする。」
「行ってもいいですか？」
シンジが口を開いた。
「一人で置いていく訳にはいかないか。」
冬月がシンジを見た。
「分かった。」
「はい。」
シンジが微笑んだ。

青葉と日向がランドリーで、服が洗いあがるのを待っていた。
「どうなるんだろうな？」
日向が口を開いた。
「さあ。とりあえず、拘束と取り調べは免れないんじゃないのか？」
青葉が椅子に掛け、伸びをしながら答える。
「問答無用だったからなぁ。」
「ああ。」
二人が、天井を見上げていた。
沈黙が流れた。
 

５人が校舎を出る。
日差しが圧力を感じさせる。
「今日も暑くなりそうだな。」
冬月が言う。
「ええ。」
ゲンドウが答えた。

「しかし、全然人がいないというのも妙な感じですね。」
日向が、誰とはなしに呟く。
「そうだな。
　ここは、皆、疎開していたし．．．！」
そう言って、冬月が立ち止まる。
ゲンドウ、そしてシンジが立ち止まった。
「どうかしましたか？」
ゲンドウが言う。
「補完の時にいたところに戻ってくるのだろうか？」
「さあ．．．我々に関しては、そのようですが。」
「もし、そうだとすると、ここには、あの時、本部にいた職員と、戦自の戦闘員が戻ってくることになる。」
「そうですね。」
冬月が声をひそめる。
「もし、死んだ者が戻って来ないとすれば、ここには、ほとんど戻ってくる者はいない。」
ゲンドウが冬月を見た。ゲンドウも声をひそめる。
「どういうことです？」
「惣流君は、レイだったのだろう？」
「ええ。」
「彼女は、あの時の戦闘で、弐号機もろとも死んでいる。」
「．．．」

「司令！副司令！どうしたんですか？！」
青葉の声がした。
冬月が青葉を見る。
「ああ、すまん。すぐ行く。」
冬月がゲンドウを見る。
「後で少し考えてみよう。」
「はい。」
そう言って、ゲンドウがシンジを見た。
シンジが頷いた。

５人が芦ノ湖に着く。
波の音がしていた。
「それでは．．．」
冬月が全員を見る。
「青葉君と日向君で左側を見てくれるか？我々は右側を見る。」
「「了解。」」
青葉と日向が答えた。
青葉と日向が歩き出す。
「それじゃ、いってきます。」
日向が言った。

「行こうか。」
冬月が言う。
「はい。」
ゲンドウが答えた。
冬月、ゲンドウ、シンジが歩き出す。
「伊吹君と赤木君は、二人とも、本物だったのかね？」
冬月が切り出す。
「いいえ。赤木君は、レイでした。」
「そうか。」
「．．．」
「なぜ分かった？」
「シンジには、分かるようです。」
冬月がシンジを見た。
「そうか。」
冬月が前を見る。
「赤木君は、君が殺したのか。」
「はい。」
「そうか。」
沈黙が流れた。

「そうだとすると、ここに戻ってくるものは、ほとんどいないことになる。」
冬月が口を開く。
「はい。」
ゲンドウが同意する。
「職員が何人か、何十人か．．．戦自の戦闘員は、ジオフロントが掘削された時に、死んでいる。」
「．．．」
「松代のマギへのアクセス、さらに重要になったな。」
「ええ。」
「厳しいな。これは。」
「はい。」
沈黙が流れた。

「惣流君と赤木君は、どんな風に見えた？」
冬月が言う。
「どういう意味ですか？」
ゲンドウが問う。
「本物のように振舞っていたかということだ。」
「伊吹君は、赤木君を本物と思っていたようです。ただし、同じ能力を持っていたかは不明です。マギにアクセスする前に殺されましたので。」
「そうか。惣流君は？」
「どうだった、シンジ？」
ゲンドウがシンジに問う。
「綾波として振舞うことも、アスカとして振舞うこともありました。」
「そうか．．．」
冬月が呟いた。
沈黙が流れた。

「今度も、レイが鍵のようだな。」
冬月が呟く。
「ええ。」
ゲンドウが呟いた。
「そして、シンジ君が。」
「はい。」
沈黙が流れた。

「そろそろ昼飯にするかね？」
冬月が言う。
「はい。」
ゲンドウが答え、レジャーシートを敷いていく。
冬月、ゲンドウ、シンジが腰を下ろした。

「いませんね。」
ゲンドウが口を開く。
「あの推論が正しければ、こんなものだろう。職員の皆には、悪いことをした。」
そう言って、冬月が、水筒に口をつけた。
沈黙が流れた。

「戻ろうか。」
そう言いながら、冬月が立ちあがる。
「はい。」
ゲンドウがレジャーシートを畳みはじめた。

冬月、ゲンドウ、シンジが、元の場所に戻ると、青葉と日向が立ち話をしていた。
「「おかえりなさい。」」
青葉と日向が言う。
「お互い、誰にも会わなかったようだな。」
冬月が言う。
「はい。」
青葉が答えた。

バシャ。

水音がした。
５人が一斉に水音の方を見る。

バシャ。バシャ。バシャ。

人が歩いてきて、皆の前に立つ。
「ただいま。」
「お帰りなさい。」
青葉が言う。
「お帰りなさい。葛城さん。」
日向が、顔を歪めながら言う。
「ただいま、日向君。青葉君。」
ミサトが日向と青葉を見る。
ミサトが冬月とゲンドウを見た。
「お久しぶりです。司令。副司令。」
「ああ。」
「無事でなによりだ。」
冬月とゲンドウがミサトに言う。
ミサトがシンジを見た。
「ただいま。シンジ君。」
同時にシンジの頭の中で声がした。
『ただいま。碇君。』
ミサトが微笑む。
「おかえりなさい。ミサトさん。」
シンジが微笑んだ。
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モニターのこちら側 Genesis 5:12 完 

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