ゲンドウが墓穴に土を戻していく。
リツコとマヤに土がかかっていく。
シンジがリツコとマヤを見ていた。

ゲンドウが杭を立てる。
黙祷するゲンドウ。
シンジもそうした。

「父さん？」
シンジが口を開く。
「なんだ？」
ゲンドウが墓を見たまま呟く。
「．．．」
沈黙が流れた。

「生きることだ。
　ユイもそう言っていたろう。」
ゲンドウが口を開く。
シンジがゲンドウを見た。
ゲンドウが微笑む。
シンジが肯いた。

「行くぞ。」
ゲンドウが言う。
「うん。」
シンジが言った。
 

シェルターの階段を降りていく。
「シャワーを浴びてくる。」
ゲンドウが言う。
「うん。」
シンジが答えた。

衣料庫の前でゲンドウと別れ、シンジは、食堂に歩いていった。
調理室に入り、おにぎりを包んでいく。
おにぎりを包み終わり、水筒に水を入れた。

シンジが椅子に腰を下ろしているとゲンドウが入ってきた。
「いいか？」
ゲンドウが口を開く。
「うん。」
シンジが答えた。
 

ゲンドウとシンジが校舎を出る。
シンジが空を見た。
赤い帯が少し薄くなったような気がした。
「父さん？」
シンジが呟く。
「なんだ？」
ゲンドウが言う。
「帯が薄くなってないかな。」
ゲンドウが空を見る。
「そうだな。」
「皆、帰ってきているのかもしれない。」
「そうだな。」
ゲンドウが空を見ていた。

１時間程歩いて芦ノ湖の見える高台に着いた。
「休んでいい？」
シンジが口を開く。
「ああ。」
ゲンドウが呟く。
シンジが傘をとじる。
シンジがビニールシートを敷いていく。
ゲンドウがシートに腰を下ろした。
シンジもそうした。
シンジが鞄から水筒を出し、水を飲む。
ゲンドウもそうした。

ゲンドウとシンジが芦ノ湖を見ていた。
「行くか。」
ゲンドウが言う。
「うん。」
シンジが答えた。
ゲンドウが立ちあがる。
シンジがシートを畳んでいく。
シンジがシートを鞄に入れた。
シンジがゲンドウを見る。
ゲンドウが肯いた。
ゲンドウが歩き出す。
シンジも歩き出した。

１時間ほど歩いて、芦ノ湖に着いた。
「飯にしよう。」
ゲンドウが言う。
「うん。」
シンジがビニールシートを敷いていく。
ゲンドウがシートに腰を下ろした。
シンジもシートに腰を下ろす。
それぞれ、鞄からおにぎりを出し、食べ始めた。

ゲンドウとシンジが芦ノ湖を見ていた。

芦ノ湖に小さな影が浮かんだ。それは、だんだんと岸に近づいてきて、姿を現した。
ゲンドウとシンジが、その人を見ていた。

その人がゲンドウとシンジの前に立った。

「碇。おまえも戻ってきていたのか。」
ゲンドウが立ちあがる。
「ユイに追い返されました。」
「そうか。」
冬月がシンジを見る。
「君が決めたのだな？」
シンジが冬月を見る。
「はい．．．」
「そうか。」
冬月がゲンドウを見た。
「腐れ縁だな。」
「そうですね。」
ゲンドウが苦笑する。
「いつ戻ってきた。」
「私は、一昨日です。」
冬月がシンジを見る。
「シンジ君は？」
「４日前の夜、戻ってきました。」
「他にはいないのか？」
シンジが顔を曇らせる。
冬月がゲンドウを見た。
「何があった？」
「シンジは、惣流君の姿をしたレイと戻ってきたのですが．．．」
「．．．」
「私と同時に戻ってきた伊吹君がレイを恐れ、殺しました。」
「．．．」
「昨日、赤木君が戻ってきたのですが、伊吹君が殺し、その後自殺しました。」
「．．．そうか。」
視線を落とす冬月。

冬月がゲンドウを見る。
「今は、どこにいる。」
「７０７にいます。」
「あそこは、破壊を免れたのか。」
「ええ。」
「ここには、なぜ来た？」
「戻ってくる人を探しに。」
「そうか。」
「これから、２時間程周囲を見るつもりですが。」
「分かった。私も手伝おう。」
「銃はお持ちですか？」
「ああ。」
「では、私は、シンジと左側を、冬月先生は、右側をお願いできますか？」
「分かった。」
「それでは、２時間後に、ここで。」
「分かった。」
冬月が歩き出した。

ゲンドウとシンジが冬月を見ていた。
「人が戻ってくるね。」
シンジが呟く。
「そうだな。」
ゲンドウが呟いた。
「行くぞ。」
ゲンドウが言う。
「うん。」
シンジが言った。

１時間程歩いた。
シートに腰を下ろすゲンドウとシンジ。
「誰もいないね。」
「そうだな。」
ゲンドウが水筒の水を飲む。
シンジもそうした。

ゲンドウとシンジが元の場所に戻ってきた。
冬月が、青葉、日向と話していた。
「戻ってきたな？」
冬月がゲンドウに言う。
「こちらは、誰にも会いませんでした。」
ゲンドウが言う。
「私も、今、会ったところだ。」
「「お久しぶりです。司令。」」
青葉と日向が声を揃える。
「俺は、もう司令ではない。」
ゲンドウが言う。
「だが、松代のマギにアクセスして、データを取り出してくれると助かる。近い将来、我々が、身を守るために。俺達は、ともかく、君達が、人類の敵呼ばわりされるのは、濡れ衣だからな。」
「そうだな。」
冬月が言う。
「私も、そう言っていたのだが．．．いいかね？」
「「はい。」」
青葉と日向が答える。
「じゃあ、行こう。７０７が生きているそうだ。」
「「はい。」」
「碇。案内してもらえるか？」
「はい。」
ゲンドウが歩き出し、その後を冬月、青葉、日向が歩き出した。

シンジは、少しの間、芦ノ湖を見ていた。
そして、踵を返して、歩き出した。
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モニターのこちら側 Genesis 5:10 完

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