道の両側に木が生い茂り、その間の砂利道を車が、ゆっくりと進んでいく。
「一応、整備してあるみたいね。」
ミサトが言った。

少し行くと、急に視界が開けて、湖と砂浜のような湖岸が広がった。
ミサトが車を止める。
「ちょっと待っててね。」
ミサトが、車を降りて写真を撮り始める。
「ここ、戻ってきた辺りかな。」
小さく言った。
「そうかもね。」
シンジが答える。
「街に近いし。」
「そうだね。」
「．．．」
窓から、写真を撮っているミサトを見ていた。

「お待たせ。」
ドアを閉めて、ミサトが言う。
「これで終わり？」
ミサトに聞いてみた。
「ううん。あと、何箇所か。けど、そんなに時間かからないわよ。」
車が動きだした。

湖を右側に見ながら、車が湖岸を進んでいく。
流木を避けて、水際から少し離れて進んでいく。
林が近くまで迫っていた。

１０分くらい走って、ミサトが車を止める。
湖上に、壊れた天使像が突き出していた。
ミサトが、車を降りて写真を撮っている。
「僕も降りていいかな？」
シンジが言う。
「ん？いいけど。」
シンジを見た。
「うん。じゃあ、ちょっとだけ。」
シンジが、車を降りて歩いていく。
ミサトと車の間に立って、天使像の方を見ていた。
「私も降りてくるね。」
レイに言った。
「了解。」
レイが言った。

シンジの隣に立った。
シンジが壊れた像を見ている。
沈黙が流れた。
『これ．．．』
そう思った瞬間、頭の中に映像が流れた。
シンジが、ここで、渚カヲルと会ったこと。
そして、彼を倒した後、ここでミサトと話したこと。
『そうなんだ．．．？！』
『これ、私が、入院してるときのこと．．．』
『これと似たこと．．．いつか．．．』
『！』
『補完計画が発動しているときに、レイに見せられたのと似てる。』
『まさか．．．』
『．．．』
沈黙が流れた。

「行くけど。いい？」
ミサトの声がした。
「ええ。」
シンジの声。
「アスカ。」
シンジが私を呼ぶ。
「うん。」
そう言って、シンジを見た。
シンジが微笑む。

「ね。」
シンジに言った。
「何？」
シンジが答える。
「ここ。どうしたの？」
「ああ。うん。ちょっとね。」
「思い出があるの？」
「うん。アスカがいなくなってたときにね。後で話すよ。」
「そう。」
シンジが車のドアを開けた。

ドアを閉めた。
『あれ、本当なんだ．．．』
『レイ．．．いるんでしょ？』
『．．．』
『ま、いいか。』
車が動き出した。

ゆっくりと１０分くらい走って、また、車が止まった。
ミサトが降りていく。
変わり映えのしない湖の風景が広がっていた。
湖上に、かげろうがゆらめいている。

ミサトがドアを閉める。
車が動き出した。
「あと、どのくらい？」
ミサトに聞いてみた。
「あと、反対側２箇所。」
ミサトが答える。
「そうなんだ。結構時間かかるね。」
「そうね。」
沈黙が流れた。

来た道を戻り、さらに１０分くらい走って、車が止まった。
ミサトが降りていく。
「これ、なんか意味があるのかしら。」
なんとなく呟いてみた。
「どうかな。」
シンジが言う。
「そうよね。」
沈黙が流れた。

「ま、仕方ないかな。」
シンジが呟く。
「そうね。」
窓の外の湖を見ながら呟いた。

ミサトがドアを開けて車に乗り込む。
「お待たせ。」
そう言いながら、ミサトがドアを閉める。
「あと１箇所？」
ミサトに聞いてみた。
「うん。もうちょっとね。」
「うん。」
沈黙が流れた。

ゆっくりと１０分くらい走ったところで車が止まった。
ミサトが車を降りる。
ミサトが写真を撮りだした。
「これで終わりみたいね。」
ミサトを見ながら言った。
「そうみたいだね。」
シンジが答える。
「いつ、来るのかな。」
「どうだろうね。」
シンジを見た。
シンジが、遠くを見るような目をして、窓の外を見ていた。
レイを見た。
レイも、遠くを見るような目をして、窓の外を見ていた。
沈黙が流れた。

ミサトが戻ってきて、ドアを閉める。
「終了？」
ミサトに聞いてみた。
「そうね。あとは、シェルターに行くだけ。」
ミサトが答える。
「シェルター、メンテされてるの？」
「一応、されてるみたい。急遽したのかもしれないけど。」
「なるほど。」
「ま、この辺だと、あそこが一番快適だと思うわ。」
「まあ、そうね。」
車が動き出した。

湖岸をゆっくりと戻り、砂利道を戻る。
駐在員の人に通行証を見せた。
「お疲れ様でした。」
駐在員の人が言う。
「お疲れ様。」
ミサトが答える。
車が、ゆっくりと動き出した。

マンモス団地、コンフォート１７マンションを通り過ぎ、坂を上って、第壱中学校についた。
シンジが、車を降りて門を開ける。
車が中に入り、シンジが門を閉めた。
シンジが、ドアを閉める。

ミサトが、駐車場に車を止める。
「おつかれさま。」
ミサトが言った。
「「「おつかれさま。」」」
皆で言った。
「まだ、早いけど、今日はここまでってことで。お風呂入って、夕飯にしましょう？」
ミサトが言う。
「シンジ君、ごめん、よろしく。」
ミサトがシンジを拝むようにする。
「了解です。」
シンジが苦笑いしながら言った。

校舎に入って、シェルターのドアを開け、階段を下りていく。
「なつかしいわね。」
思わず呟いた。
「そうね。」
ミサトが言う。
「レイは、かなり久しぶり？」
レイに聞いてみた。
「ええ。」
「非難訓練以来？」
「そう。」
「そっか。」
「色々あったよね。」
シンジを見た。
「そうだね。」
シンジが苦笑した。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 
モニターのこちら側 Genesis 3:98 完 

モニターのこちら側 Genesis 3:99へ

Evaメニューに戻る