ランドクルーザーが動き出す。
『いよいよね。』
頭の中で呟いた。
『そうね。』
レイの声がした感じがした。
レイを見た。
レイは、窓の外を見ていた。
『レイ？』
頭の中で呟く。
『．．．』
答えはなかった。
『気のせい．．．？
  けど．．．』
そう思いながら、流れていく街並みに目を移した。
 
 

旧ネルフ松代支部
国連直轄 人工進化研究所 所長室

スクリーンに、シンジ達の映像が、映し出されている。
「動き出したな。」
「再び、約束の時が近づいた。」
「新たな補完の時。」
「失われたリリスの、本来の意志による人類の新生を。」
「全ての生命が『死』をもってひとつになるために。」
「リリスの導きのままに。」
キールが、口を開く。
「エヴァシリーズの打ち上げ準備を。
  儀式に向けて、追って連絡させていただく。」
スクリーンに、各支部で移送されていく、エヴァシリーズの映像が映し出される。
委員らの映像が、次々に消えていった。
キールが、手元のディスプレイに触れる。
レイの映像が映し出された。
「本来の意志．．．」
キールの映像が消えた。
 
 

長野インターから上信越自動車道に乗る。
スピードが上がった。

左右に山並みを見ながら、変わり映えのしない風景が続いていく。
「この前と同じところ？」
フロントガラスから外を見ながら言った。
「この前？ああ。京都の時のこと？」
ミサトが答える。
「うん。そう。」
「そうよ。岡谷ジャンクションまで同じ。」
「この前休憩したのは、その先？」
「そう。その先。」
「そうなんだ。」
「行きたかった？」
「ちょっとね。」
「まあ、同じくらいの時間で、河口湖まで着いちゃうから。」
「そう。」
「ま、今日は、時間が遅いから、それで、１２時くらいになるけど。」
「そうなんだ。」
「ええ。」
沈黙が流れた。

うつらうつらしながら、前を見ていた。
車が、大きく回りながら速度を落としていく。
「河口湖？」
少しボーっとしながら聞いた。
「インターチェンジだけどね。」
車が止まった。
信号が赤になっていた。

街中を抜けて、しばらく畑や林の中を走っていると、湖が見えてきた。
少し湖畔を走って、そして、車が止まった。
「ここは？」
シートベルトを外しながら、ミサトに聞いてみた。
「山中湖。
  で、その湖畔にある、イタリアン。」
ミサトが、キーを回しながら言う。
「お昼？」
「うん。ちょっと遅くなっちゃったけどね。」
「了解。」
そう言って、レイを見た。
レイが頷いた。
 

レストラン キャンティ・コモ

ウェイトレスさんが、水を置いていく。
「ご注文、お決まりでしょうか？」
ミサトが、私たちを見る。
ミサトに頷いた。
「じゃあ、マルゲリータのセットを１つ。」
ミサトが言う。
「お飲み物は？」
「コーヒーで。」
「はい。」
ウェイトレスさんが、シンジを見る。
「カルボナーラのセット。コーヒーで。」
シンジが言った。
レイを見た。
「アラビアータのセット。レモンティーで。」
レイが言う。
「ペペロンチーノのセット。レモンティーで。」
ウェイトレスさんを見て、言った。
「かしこまりました。少々お待ちください。」
そう言って、ウェイトレスさんが歩いていった。

「あとどのくらいなの？」
ミサトに聞いてみた。
「そうね。」
ミサトが地図を見る。
「あと、４０ｋくらいだから、まあ、１時間くらいかな。」
「そう。」
「まあ、ここを１時過ぎに出て、着くのが２時過ぎ。まあ、一回りするのは問題ないんじゃない？」
「そうね。それで、泊まり？」
「そうね。そういう感じ。」
「夕飯は？」
「一応、車に積んであるけど．．．」
ミサトが、私を見て、そして、シンジを見た。
「シンジく〜ん。」
ミサトが少し甘えたような声を出す。
「分かりました。」
シンジが苦笑しながら答えた。

「お待たせしました。」
ウェイトレスさんが、私たちの前に皿を置き始める。
サラダと、ピザ、そしてパスタ。
「ごゆっくりどうぞ。」
ウェイトレスさんが歩いていった。
「じゃあ、食べましょう？」
ミサトが言う。
「「「「いただきます。」」」」
小さめの声で言って、水を少し飲んだ。

「それ、おいしいの？」
レイに聞いてみた。
「食べる？」
レイが、私を見て、言う。
「うん。」
そう言って、レイのお皿にフォークを入れて、少し回す。
フォークの巻きついたスパゲティーを口に入れた。
「辛いんだ。」
「そう。」
「なかなかおいしい感じ。」
「．．．」
レイが微笑んだ。

「お待たせしました。」
ウェイトレスさんが、私たちの前に、カップを置いていく。
「ごゆっくりどうぞ。」
ウェイトレスさんが歩いていった。

紅茶にレモンを入れて、少しかき回し、レモンを取り出した。
カップに口をつける。
レモンの味が、口の中に広がった。
カップをトレイに下ろした。

「そろそろ行く？」
ミサトが言う。
「トイレ、行ってくるね。」
ミサトに言った。
「了解。皆行く？」
シンジとレイが頷いた。
「そうだよね。じゃあ、私、先に行っていい？」
「ええ。」
シンジとレイも頷いた。
「じゃ、お先に。ごめんね。」
「．．．」
視線をテーブルに落として、首を振った。

店を出て、車に乗り込む。
少しして、レイが乗り込んできた。
レイが、シートベルトを締める。
「いいかな？」
ミサトが言う。
「．．．」
バックミラーのミサトに頷いた。
「ＯＫ。」
車が動き出した。

湖畔を少し走ったところで、右に曲がり、林の中を走っていく。
途中、畑や、カントリークラブの緑が目に入った。

しばらく走ると、街中に入ってきた。
「ここは？」
ミサトに聞いてみた。
「御殿場。」
ミサトが答える。
「あ．．．そうなんだ。」
「そう。あともうちょっと。」
「そう。」
沈黙が流れた。

御殿場の市外を抜けると、カーブが多くなり、少しづつ高度が上がっていく。
何回かゲートをとおり、そのたびに、ミサトが、許可証を見せていた。

トンネルを抜けると、湖が見えた。
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モニターのこちら側 Genesis 3:96 完 

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