端末から、レポートに役立ちそうな資料を検索していた。
電話が着信音を鳴らす。
「はい。惣流です。」
『あ。アスカ？』
「うん。何か決まったの？」
『うん。今、大丈夫？』
「うん。じゃあ、今から行くね。」
『よろしく。』
「はい。」
そう言って、受話器を置き、端末をロックして、立ち上がった。
 

葛城ミサト 執務室 

ドアをノックした。
「はい。」
ドアの中から、ミサトの声がした。
「入っていい？」
「いいわよ。入って。」
ドアを開けて、部屋に入り、ドアを閉めた。

ミサトの机の前の椅子にシンジが腰掛けていた。
「座って。」
ミサトが、もうひとつの椅子に手を伸ばしながら言う。
軽く頷きながら、その椅子を引いて、腰を下ろした。

「例の箱根の話だけど．．．」
ミサトが話し始める。
「．．．」
シンジを見て、そして、ミサトを見た。
「ここから車で行くことになったわ。」
「時間は、普段くらいですか？」
シンジが言う。
「ええ。大体、４時間くらいで着くみたいだから。」
「そうですか。」
「レイにもここまで来てもらって、お昼は、途中、多分、富士吉田辺りで、食べることになると思う。食料の買出しとかもするかな。」
「泊まり．．．なんですよね？」
「ええ。この前のシェルターに泊まる予定。」
「なるほど。」
「実際は、何をするの？」
ミサトに聞いてみた。
「現状の調査よ。ただ、取るデータは、写真くらいだから、そんなに大した仕事じゃないみたいだけど。」
「何箇所か指定の場所があるって言う感じ？」
「そういうこと。学校とか、マンションとか、芦ノ湖とか。」
「なるほど。じゃあ、泊りじゃなくても、できなくはないんだ。」
「そうね。夜遅くなってもよければ。」
「なるほど。普段の仕事時間だと、泊りって言うことか．．．」
「そういうこと。」
ミサトが、手元の書類に目を落とす。
「じゃあ、まあ、そんな感じで。当日は、ここまで一緒に来る？大体、９時少し前、まあ、８時半よりは早くならないと思うけど。」
「そうですね。メール見て、そのまま出かける感じですよね？」
「そうね。」
ミサトとシンジが、私を見る。
小さく頷いた。
「じゃあ、そういう感じで。」
ミサトが、手元の書類を立てて、トントンと揃えた。

「あの、メモ用紙ありますか？」
シンジが言う。
「．．．」
ミサトが、メモ用紙とペンを、シンジに渡す。
『実際は、何が起きそうなんですか？』
シンジがメモ用紙に書いて、ミサトに見せた。
ミサトが、別のメモ用紙に何かを書き、私たちに見せる。
『多分、量産機が出てくるわ。』
「．．．」
シンジを見た。
シンジがメモを見せる。
『戦闘ですか？』
ミサトがメモを書き、見せる。
『こっちは、丸腰だから、戦闘じゃないわね。なぶり殺しかな．．．』
『無駄死にですか？』
『フォース・インパクトを起こしたいとすると、私たちにも、エヴァがあてがわれることになるわね。』
『．．．そうすると、戦闘になりますか。けど、シナリオ的には、死ぬことになるのでは？』
『そうかもね．．．』
『それで、いいんですか？』
『まあ、逃げられそうにないけど．．．』
シンジが、ミサトを見る。
ミサトが、シンジを見て、そして、メモを書き出した。
『この前と同じようになるのを期待してるわ。』
シンジが、メモを見て、そして、メモを書いた。
『了解。』
シンジが、ミサトを見て、そして、微笑む。
ミサトが微笑んだ。
「じゃあ、そういうことで。」
ミサトが言う。
「はい。」
シンジが答えた。
ミサトが、私を見る。
「了解。」
そう言って、ミサトに微笑んだ。
 

資料室

何度目かの昼休みを告げるベルが鳴った。
「行こっか。」
マヤが言う。
「ええ。」
マヤの方を見た。

階段を下りていくと、建物の入り口に、シンジと青葉、日向、そして、ミサトが待っていた。
「お待たせ。」
シンジに言った。
シンジが微笑む。
「じゃ、行こっか。」
ミサトが、そう言って、歩き出した。

マヤと青葉、そして日向が、先に歩いていく。
少し離れたところで、口を開いた。
「沖縄、ホントに行く？」
「そうだね。」
シンジが言う。
「沖縄？」
ミサトが聞いた。
「うん。ちょっとだけ言ったよね？」
「ああ。そうね。行こうか。」
「行ける？」
「うん。あの後？」
「うん。」
「そうね。ここの施設とか使うの？」
「本島と、石垣島と、宮古島とか行きたいんだけど．．．」
「なるほど。本島にはあるから、本島まで足がなければ、使うのもいいかもね。」
「そうなんだ。じゃあ、日にちは、そんなに気にしなくても大丈夫？」
「そうね。」
「じゃあ、終わって、２、３日したら、行かない？」
ミサトを見た。
「了解。ま、なんとかなるでしょ。」
ミサトが微笑んだ。
 

カフェテリア

「沖縄かー。」
シンジが、そう言いながら、トレイをテーブルに置く。
「うん。」
私も、トレイをテーブルに置いた。
「沖縄、どこに行こうか？」
シンジが、ハンバーグにナイフを入れながら聞く。
「そうね。本島は、それなりに全部見ようとすると、大変みたいよ。」
スパゲティーをフォークで巻きながら言った。
「２箇所くらいで泊まり？」
「北のやんばるも行こうとすると、やんばるでも泊まらないと大変みたい。」
「なるほど。一週間くらいかかるかな。」
「本島で、そのくらいかな。けど、ささっと回れば、一週間で、石垣島と宮古島も回れると思うよ。」
「そうなんだ。」
「本島に２泊して、３日目に石垣島に移動。２泊して、５日目に宮古島に移動。２泊して、帰り、かな。」
「．．．」
「石垣島と宮古島は、もう一泊ずつしてもいいかも。」
「ゆっくりするのに？」
「うん。近くに小さい島もあるし。」
「そっか。」
「うん。」
シンジが、ハンバーグを口に入れている。
私も、スパゲティーを口に入れた。
 

カフェテリアから出て、少し外を歩いていた。
「箱根、どこに行くのかな？」
日差しを感じながら言った。
「学校に行って、芦ノ湖に行って．．．」
「うん．．．」
「芦ノ湖は、一回りするのかな？」
「そうかもね。写真撮るって言ってたから。」
「家も行くかな？」
「そうだね。」
「中に入る時間とかあるかな．．．」
「どうだろうね。暗くなると大変だしね。」
「そうね。それに．．．」
シンジを見た。
シンジが、私を見て、そして、前を向いた。
「．．．そうだね。」
「．．．うん。」
沈黙が流れた。
 

資料室

昼のシフト終了のベルが鳴った。
マヤが端末を落とし、バッグを持って、椅子から立ち上がる。
「それじゃ。また明日。」
マヤが、小さく手を振りながら歩き出す。
「お疲れ様。」
そう言って、小さく手を振った。
端末の電源を落とし、バッグを持って、椅子から立ち上がる。
部屋を出た。

階段を下りると、入口で、シンジが待っていた。
「お待たせ。」
「．．．」
シンジが、首を小さく横に振る。

「今日は、夕飯は何？」
「何がいいかな。」
「カレーとか？」
「それもいいかな。」
シンジが、小さく笑う。
私も、笑った。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 
モニターのこちら側 Genesis 3:94 完 

モニターのこちら側 Genesis 3:95へ

Evaメニューに戻る