「あー、終わった、終わった。」
思わず伸びをしながら、口に出した。
「ホントだね。」
シンジも、伸びをしながら言う。
「海、いつごろ行こうか。」
シンジと、レイを見ながら言った。
「いつがいいかな。けど、あんまり遅くならない方がいいよね。８月頭とか。」
「うん。」
そう言って、レイを見た。
レイが、小さく頷く。
「どこにする？」
シンジを見た。
「どこがいいかな．．．」
シンジが、黒板の方を、ぼんやりと見ながら言う。
「．．．」
沈黙が流れた。

次の試験を受けるらしい学生達が、教室の席を埋めだした。
「そろそろ出ようか？」
シンジが言う。
「うん。」
そう言って、席を立った。

建物を出ると、初夏の日差しがまぶしかった。
「なんか、夏ねー。」
目の前に手をかざしながら言った。
「そうだね。」
シンジが、まぶしそうに目を細めながら言う。
「海、すぐ行ってもいいかもね。」
「そうだね。」
「どこがいいかな．．．」
「この前の新潟とか。」
「あそこもいいけど、泊まりがいいな。できたら。」
「なるほど．．．あの辺、宿、なくはないと思うけど．．．」
「もうちょっと遠くがいいかな。金沢とか。」
「あ。そういうことか。なるほど。」
「ね。」
そう言って、レイを見た。
レイが、苦笑しながら、私を見ていた。

「この後、バイトでしょ？」
レイに聞いた。
「ええ。」
レイが、小さく答える。
「どのくらいで終わりそう？」
「５時半くらい。」
「私たちも、そのくらいかな。」
シンジを見た。
「そうだね。」
「そしたら、夜、会わない？」
そう言って、レイを見た。
「いいよ。」
レイが言う。
「少し飲みながら、計画を練るとか。」
シンジを見た。
「ああ。そうだね。それもいいかも。」
「じゃあ、６時半くらいで大丈夫？」
レイを見た。
「了解。」
レイが小さく頷いた。
 

戦略自衛隊 松代駐屯地

資料室に入ると、端末に向かっていたマヤが、私を見て微笑んだ。
軽く頭を下げて、席につき、端末のスイッチを入れた。
ミサトから、部屋に来て欲しいというメールが来ていた。
なんだろう．．．
そう思いながら、他のメールをチェックしていた。

メールを見終わって、受話器を取った。
『はい。葛城です。』
「アスカですけど。」
『あ。アスカ？』
「うん。今から行っても大丈夫？」
『うん。大丈夫。』
「じゃあ、今から行くから。」
『はい。よろしくね。』
「はい。」
そう言って、受話器を置き、端末をロックして、立ち上がった。
 

葛城ミサト 執務室

ドアをノックした。
「はい。」
ドアの中から、ミサトの声。
「入っていい？」
「いいわよ。入って。」
ドアを開けて、部屋に入り、ドアを閉めた。

ミサトの机の前の椅子にシンジが腰掛けていた。
「座って。」
ミサトが、もう一つの椅子に手を伸ばしながら言う。
「うん。」
その椅子を引いて、腰を下ろした。
ミサトを見た。
「シンジ君にも話してたんだけど、８月の頭に箱根に行くことになりそうなんだけど、いいかしら？」
「箱根？」
ミサトを見て、そして、シンジを見た。
シンジが、私を見て、小さく頷く。
ミサトを見た。
「一応、現状の調査みたいな名目なんだけど、国連から来てるのよね。」
「ミサトに？」
「うん。あと、あなた達。」
「そう．．．」
シンジを見た。
「あと．．．」
「あと？」
ミサトの方を見た。
「レイも行くみたい。」
「レイも．．．」
「ええ。」
「．．．」
この４人で、箱根に現状の調査．．．
何故？
ミサトの向こうの壁を窓を見ながら考えていた。
「．．．予定は空いてる？」
「．．．え？何？」
「あ。ごめんね。８月５日と６日なんだけど、予定、空いてる？」
「え。まあ．．．」
そう言って、シンジを見た。
「何か予定、立ててる途中だったんだ。」
「ええ。３人で、海に行こうかと思って、今夜、飲みに行って決めようかと思ってたところ。」
「なるほど。まあ、水曜日と木曜日で、木曜日は予備日みたいな感じだから、そのまま遊びに行ってもらってもいいし、なんだったら送るわよ。」
「そう．．．」
そう言って、シンジを見た。
「海は、まだ、日程も決まってないので、予定自体はいいんですけど、行くところと、メンバーが、ちょっと．．．」
シンジが、ミサトに言う。
「怪しい？」
ミサトが言う。
「ええ。」
シンジが答えた。
「そうね．．．」
ミサトが腕組みをする。
「ミサトは、どう思うの？」
ミサトに聞いてみた。
「うん。まあ、何か企みがあるでしょうね。これは。」
「．．．」
「最悪、またやるのか。」
「またやるって．．．」
「フォース・インパクト。」
「．．．」
「なんか、作ってるみたいなのよ。また。」
「エヴァ？」
「ええ。詳しくは分からないんだけど．．．」
「．．．」
「まあ、そんな感じで。今回、私たちは何も持ってないから、そのまま従うだけかな、と思って。」
「そう．．．」
「そう．．．」
「じゃあ、もしかしたら、死ぬかもしれない？」
ミサトを見た。
ミサトが私を見る。
「かも．．．ね．．．」
ミサトが、私たちから目を逸らした。
沈黙が流れた。

シンジを見た。
シンジが私を見ていた。
シンジが、ミサトを見る。
「ミサトさん？」
シンジが言う。
「何？」
ミサトがシンジを見た。
「手続きとかは、ミサトさんがしてくれるんですか？」
「ええ。しておくわ。」
「じゃあ、詳しいスケジュールとか、分かったら教えてください。」
「ええ。」
「じゃあ、そういうことで。」
シンジが、私を見た。
「アスカは？」
ミサトが言う。
ミサトを見た。
「え？ああ。私も、詳しいスケジュールとか分かったら教えて。」
「了解。」
「これ、レイも、もう知ってるのよね。」
「多分。」
「了解。じゃあ、それで。」
「了解。ありがと。」
ミサトが、少し悲しげに、微笑んだ。
「ううん。お互い様だから。」
少し目を伏せて、小さく首を振った。
「ありがと．．．」
ミサトが呟いた。
沈黙が流れた。

「じゃあ、詳しい話は、また。」
シンジが口を開いた。
「ええ。」
ミサトが言う。
「それじゃ、今日はこの辺で。」
そう言って、シンジが立ち上がる。
「ええ。お疲れ様。」
ミサトが、私たちを見て、言う。
「それじゃ、家でね。」
立ち上がりながら言った。
「ええ。」
ミサトが私に微笑んだ。
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モニターのこちら側 Genesis 3:90 完 

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