制御室のドアが開いて光が広がっている。
中に入った。
ミサトがモニターの前に座り、シンジがその後ろに立っていた。
ミサトがモニターを見ている。
「今のところ、アクセスした人いないみたいね．．．」
ミサトがキーをたたく。
ミサトがモニターを見る。
「それなりにデータは取れている．．．か。
　シンジ君の記憶とは合ってる？」
ミサトがモニターを見ながら言う。
「．．．多分．．．合ってると思います。」
ミサトがシンジを見る。
「そう．．．
　アスカ？」
ミサトが私を見た。
「見てくれる？」
「ええ。」
モニターの方に歩を進めた。
「ＩＤとパス、生きてたんだ。」
ミサトの後ろからモニターを覗き込む。
「ううん。加持の作ったＩＤよ。私達のＩＤなんてないわ。」
「そう．．．」
ミサトがキーをたたく。
「この辺りから．．．」
地底湖から立ちあがる弐号機の映像。
舞い降りる量産機。
量産機を倒す弐号機。
再生する量産機。
ついばまれ、槍に貫かれる弐号機。
量産機に咥えられ、持ち去られる弐号機．．．
「記憶と合ってる？」
「．．．ええ。」
「そう。
　コピーしといた方がよさそうね．．．」
ミサトがキーをたたいた。

「じゃあ、これ。」
ミサトが私とシンジにマイクロチップを渡す。
「まあ、有利になるばかりじゃなくて、不利になることもあるかもしれないけど、一応、持ってるといいわ。」
ミサトが微笑む。
「そうね．．．」
「それじゃ、もう少し調べますか。」
ミサトが、そう言いながら椅子に腰を下ろす。
「他のマギを見てみるの？」
「そう。他にアクセスした人がいるかどうか。」
ミサトがキーをたたく。
私もモニターを見た。
ドイツ、中国、アメリカ．．．
沈黙が流れた。

「寝ようか。」
モニターを見たまま、ミサトが言う。
「ミサト．．．」
ミサトの背中を見ながら言った。
「お酒．．．ないよね．．．」
ミサトが呟く。
「．．．少しなら．．．」
シンジが呟いた。
「そう．．．
　ね、シンジ君？」
ミサトが、モニターを見たまま言う。
「．．．はい。」
シンジが答える。
「約束．．．憶えてる？」
シンジを見た。
シンジが辛そうな顔をしていた。
「．．．」
「．．．」
ミサトが振り返って、シンジを見る。
シンジも、ミサトを見る。
「．．．」
「．．．」
「．．．冗談だから．．．ごめん．．．」
ミサトが立ちあがり、部屋を出ていった。

「約束って？」
シンジに聞いた。
「．．．」
シンジがモニターを見ている。
沈黙が流れた。

「ミサトさんに初号機のケージ直通のエレベーターに送ってもらったんだ。」
シンジが話しだす。
「ミサトさん撃たれちゃって．．．
　それで、ミサトさんが僕にキスをして．．．
　帰ってきたら続きをしましょうって．．．
　エレベーターに押し込まれた．．．」
沈黙が流れた。

「するの？」
何聞いてんだろ。あたし。
「え？」
シンジが私を見る。
「ミサトと続きをするのかって、聞いてんのよ。」
シンジが視線をモニターに戻す。
「アスカは．．．」
シンジの声が途切れた。
「あたしが、どう思うかなんて関係ないでしょう？！」
なんなのよ、こいつは。
「けど、僕は、アスカが．．．」
「あー、もう、ぐちゃぐちゃうざったいわね。
　もしかして、あたしがやれって言ったら、あんたやるわけ？！！！」
「アスカが、そう言うなら．．．」

バシッ

思わず、シンジの頬を叩いていた。
「あんた、馬鹿？！
　ふざけんじゃないわよ！！！！
　あーあ。こんな奴と、一瞬でも仲直りしてやろうと思った私が馬鹿だったわ。」
シンジを睨みつける。
「さよなら。」
そう言って、ドアの方へ向き直り歩き出した。
「待って！」
シンジが私の手をつかむ。
「ごめん。ごめんよ、アスカ。アスカが何と言ったってミサトさんと続きをしたりしないから、だから、だから、僕といてよ。僕と話しをして。僕を．．．」
「殺さないで？」
ゆっくりとシンジの方に向き直った。
「．．．」
シンジが、私を見ていた。
「．．．」
沈黙が流れた。

「分かった。」
そう、シンジに呟いた。
シンジが、救われたような顔をする。
「手、離してくれる。」
シンジに言った。
「あ。」
シンジがあわてて手を離す。
シンジを見ていた。
シンジがうつむく。
「．．．ごめん。」
シンジが呟いた。
「寝るわ。
　疲れたから。」
シンジに言った。
シンジが私を見る。
「うん。」
シンジが言った。
「おやすみ。」
そう言って、ドアの方へ向き直り歩き出した。
「おやすみ。」
背後でシンジが言った。
 

翌朝。７時。
顔を洗って、食堂に行った。
シンジが朝食の用意をしていた。
「おはよう。」
シンジに声をかけた。
「おはよう。」
シンジが微笑む。
「ミサトは？」
「まだ起きてこないけど。」
「そう．．．」
そう言いながら、椅子に腰を下ろした。

「ミサトさん、呼んでくるね。」
シンジが調理場から出てきて言う。
「了解。」
シンジが食堂からでていく。
ふと嫌な予感がした。
．．．まさかね．．．
立ちあがって、シンジの後を追った。

シンジがミサトのいる部屋の入り口に立つ。
少し離れてシンジを見ていた。
「ミサトさん？！」
「んー。」
「朝ご飯、できましたけど。」
「了解。すぐ行くわ。」
「はい。」
シンジが、こちらに向き直る。
シンジが私の方に歩いてきた。
「どうしたの、アスカ？」
シンジが不思議そうに私を見る。
「ちょっとね。」
踵を返し、食堂へ歩き出した。
「ミサトさん、大丈夫そうだね。」
シンジが言う。
「そうね。」
シンジに呟いた。

食堂で椅子に腰かけていた。
シンジが海苔を巻いたおにぎりとお味噌汁を持ってくる。
ミサトが食堂に入ってきた。
「おはよう。」
ミサトが言う。
「おはようございます。」
シンジが言う。
「おはよう。」
ミサトに言った。
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モニターのこちら側 Genesis 3:9 完 

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