「バス、何時なの？」
お茶を飲んでいるシンジに聞いた。
「１２時半に中社宮前じゃないかな。」
シンジが湯のみを置いて、メモを取り出しながら言う。
「そうみたいだね。」
腕時計を見ると、１２時１０分くらいだった。
「じゃあ、トイレ行って来るね。」
「了解。」
シンジが言う。
「じゃあ、私も。」
レイが、そう言って立ち上がった。

席に戻ると、シンジが立ち上がった。
「もう出る？」
「ううん。僕もトイレ。」
「了解。」
シンジが歩いていくのを見て、そして、コップの水をほんの少し飲んだ。

レイとシンジが戻ってきた。
「行く？」
二人に聞いた。
「うん。行こう。」
シンジが、私に言って、そして、レイを見る。
レイが、軽く頷いた。
 

中社宮前

少し待っていると、バスがやってきた。
「乗ろう。」
シンジが言う。
レイと二人で頷いた。

車内は結構混んでいた。
「混んでるね。」
シンジに言った。
「そうだね。」
シンジが私を見る。
バスが急な坂を上り始めた。
「．．．」
シンジを見ていた。
「まあ、１０分ちょっとだから。」
「うん。」
そう言って、窓の外を見た。

「次は、奥社入口。」
走り出したバスの中に、アナウンスが流れる。
シンジが、降車ボタンを押した。
「次、止まります。」
アナウンスが流れた。
 

奥社入口

ほとんどの人が、ここで降りた。
とは言っても、前のバス停で半分くらいの人が降りたので、そんなにたくさんではなかった。

バス停の脇から参道っぽい道が伸びている。
「この道を歩いていくの？」
シンジに聞いた。
「そう。ただ．．．」
シンジが、ガイドを見ている。
「ただ？」
「何か買っていった方がいいかもね。」
シンジが、ガイドから顔を上げて、周りを見る。
「何もないっていうこと？」
「一応あるけど、念のため。」
「そうなんだ。」
「あそこでいいんじゃないかな。」
シンジが、レストハウスを見て言う。
「どのくらい買うの。」
「うーん。多分、ないと思うけど、一晩分かな。」
「．．．了解。」
思わず、ちょっと嫌そうな顔をしたかもしれない。
「まあ、一応、用心っていうことで。」
シンジが苦笑する。
「了解。」
少し苦笑した。
 

レストハウス

「なんにする？」
レイに聞いた。
「チョコとか。」
レイが板チョコに手を伸ばす。
「そうだね。」
私も板チョコと、あと、おかきに手を伸ばした。
レイが、おせんべいを取った。
「あと、水？」
レイに呟いた。
「うん。」
レイが呟く。

「チョコとおせんべいでいい？」
シンジに聞いた。
「うん。ありがと。水は、僕が、少し大きめなの買うから。」
「了解。一応、小さいの買っておくね。」
「うん。ありがと。」

レストハウスを出ると、参道には、ほとんど人影がなかった。
「じゃあ、行きますか。」
シンジに言った。
「そうだね。」
そう言って、シンジが歩き出す。
レイを見た。
レイが頷いて、そして、歩き出した。

しばらく歩くと、鳥居が見えた。
「あそこ？」
聞くともなしに聞いた。
「いや。あそこは、真ん中辺りかな。」
シンジが答える。
「そうなんだ。」
「うん。あの辺りから、杉並木がよくなるらしいけど。」
「そう。」
そう言って、鳥居の向こうの杉並木を見た。

鳥居を超えると、坂が少しきつくなった。
しばらく歩いていると、石段が現れた。
「そろそろ着く？」
「うん。その予定。」
「了解。」

石段を登りきると、神社が現れた。
「ここ？」
「そう。」
シンジが答える。
「結構、きつかったかも。」
「うん。ちょっときつかったね。」
「お参りは、あそこ？」
賽銭箱の置いてある社の方を見た。
「そうみたいだね。」

賽銭箱にお金を入れて、３人で並んで、頭を下げて、拍手をした。

目を開けて、隣を見ると、シンジが、私を見ていた。
レイが、目を開けて、そして、私を見た。
「行く？」
シンジが言う。
「うん。行こうか。」
シンジとレイを見ながら言った。
レイが私に頷いた。

参道を下り、鳥居を超えると、右側に道があった。
「ここかな。」
シンジが言う。
「ここ？」
シンジに聞いた。
「うん。ここから森林植物園に入れるみたいなんだけど．．．」
「そうなんだ。じゃあ、行きましょう？」
「そうだね。２、３０分道なりに行くと、少し大きな池があるみたいなんだよね。そこで、休憩かな。」
「そうなの。」
そう言って、シンジの持っているガイドを覗き込んだ。
向こうから、レイが、ガイドを覗き込む。
「今、ここで、」
シンジが、随神門と書かれた辺りを指差す。
「ここを入って、ここまで行こうかと。」
シンジの指が、ささやきの小径と書かれた線をたどり、鏡池と書かれた池まで動く。
「了解。」
「うん。」
シンジが、ガイドをポケットに入れて、歩き出した。

しばらく歩いていた。
「なんか、あいかわらず、林の中って言う感じ。」
シンジに言った。
「うん。ここ、森林植物園って言っても、登山道っぽい道をつけて、高山植物を少し足したっていうくらいみたいだから。」
シンジが答える。
「そうなの。」
「まあ、そういう趣旨なんだと思うよ。」
「そう。」
そう言って、林を眺めた。
林の中の静かな音がしていた。

小さな神社を通り過ぎて少しすると、大きな池に着いた。
「綺麗。」
池を見ながら言った。
「そうだね。」
シンジが言う。
沈黙が流れた。

池の脇には、軽い食事のできるお店があった。
「お菓子買わなくてもよかったんじゃないの？」
シンジに言った。
「そうだね。いや、ここ、車で来られるから、混んでたら、ちょっと嫌なかなって思って。」
確かに、結構人がいた。
「あと、ちょっと早めかなって思って。」
時間を見ると、２時２０分くらいで、微妙な時間だった。
「なるほど．．．」
「寄ってく？」
「うーん。植物園は、結構歩くの？」
「うーん。１時間弱かなって思ってるけど。」
「そう。バスは？」
「バスは．．．」
シンジが、ガイドを見る。
「３時２０分、４時１０分、５時、５時５０分、６時４０分．．．
３時２０分だと、ちょっと早いけど、空いてるかもね。」
シンジが、私を見る。
「なるほど。」
そう言って、レイを見た。
「どうする？」
「早いのでいいかも。」
「うん。そう思う。」
シンジを見た。
「了解。じゃあ、行こうか。」
「うん。」
そう言って、３人で歩き出した。
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