レイが、改札の方を見ていた。
「お待たせ。」
レイに声をかけた。
レイが私たちの方を見て、微笑む。
「待った？」
「．．．」
レイが、静かに首を振る。
「そう。よかった。」
レイが、私を見ている。
「なんか、バス、長野駅が９：３３で、バスターミナルが９：３０なんだって。」
ちょっとだけシンジを見た。
「よかったら、バスターミナルに行かない？」
「ええ。」
レイが頷いた。
 

長野バスターミナル

乗車券を買って、戸隠行きのバスの乗り場を見たが、それほど人は並んでいなかった。
「中に入ってる？」
シンジが、乗り場の方を見ながら言う。
「そうね。お菓子とか買えそうだし。」
レイを見た。
レイが小さく頷く。
「じゃあ、入ろうか。」
シンジが歩き出した。

待合室の椅子に座った。
「何か飲む？」
シンジが、私たちを見て、言う。
「うーん。」
時計を見ると、１２分だった。
「どうする？」
レイを見た。
「．．．」
レイが、私を見つめ返す。
シンジを見た。
「ペットボトルで、あったかいのがいいかな。甘いのと、甘くないの。」
「了解。」
シンジが、売店に歩いていった。
「何がくるかな。」
少しだけ笑いながらレイを見た。
「うん。」
レイが、微笑んで頷いた。

「お待たせ。」
シンジが、私に袋を渡す。
「ありがと。」
袋の中を見ると、レモンティーとウーロン茶、そしてココアが入っていた。
「どれにする？」
シンジが言う。
「シンジから飲んでいいよ。」
「じゃあ、ウーロン茶かな。」
シンジが、ウーロン茶を取った。
「レイは？」
「．．．」
レイが、レモンティーを取る。
「それ、後で飲ませてもらっていい？」
レイに聞いた。
「ええ。」
レイが微笑みながら答える。
「その後、それもいい？」
シンジを見て言った。
「ああ。了解。じゃあ、僕も、後で、それ貰うよ。」
シンジが、レイの持っているレモンティーを見て言った。
 

戸隠キャンプ場行きバス 車中

「どのくらいかかるんだっけ？」
シンジに聞いた。
「１時間くらいじゃなかったかな？」
「結構、遠いわね。」
「うん。まあ、そうだね。」
「じゃあ、まだまだね。」
窓の外には、まだ、町並みが流れていた。

３０分くらいすると、かなり上がってきて、長野の街並みが窓の向こうに広がった。

「次は、宝光社宮前。」
アナウンスが流れた。
シンジが、降車ボタンを押す。
「降りるの？」
「うん。まあ、ちょっと神社めぐりみたいになっちゃうけど。」
「そう。」
「．．．」
「まあ、門前町みたいなものなんでしょう？」
「そういうこと。」
「了解。」
 

宝光社宮前

「こっちだよ。」
シンジが、道を少し戻り始める。
「杉並木のところ？」
「そう。」
シンジが、ちょっと前にあった、杉並木の中の石段を上がっていく。

石段を登りきると、神社があった。
「これが、戸隠神社？」
「の、一つらしいよ。ここと、中社と奥社を戸隠神社っていうらしいよ。」
「そうなんだ。」
「ま、とりあえず、お参りってことで。」
「うん。」
そう言って、レイを見た。
レイが、小さく頷いた。

「２礼２拍手１礼だっけ？」
シンジに聞いた。
「そうだったよ。確か。」
「了解。」
去年の奈良とか京都のことを少し思い出しながら、２回頭を下げて、２回拍手して、１回頭を下げた。
レイが、手をたたく音がした。

「それで、この後は、どうするの？」
石段を降りながら、シンジに聞く。
「迷ったんだけど．．．」
「うん。」
「ここから、中社まで歩くと、大体、昼、少し早めくらいの時間になるから、」
「．．．」
「そこで、お昼を食べて、中社に行って、バスに乗って、奥社に行って、」
「．．．」
「植物園に行って、帰ろうかな、と。」
「了解。ちょうど丸１日っていう感じね。」
「そうだね。」
「じゃあ、歩きましょう。」
「うん。」
石段を降りて、左に歩き出した。

しばらく歩くと、また、神社があった。
「ここは？」
シンジに聞いてみた。
「えーとね。」
シンジが、ガイドをひらく。
「日之御子社っていうみたいだよ。さっきの宝光社と関係あるみたいだね。」
「そうなの。」
「桜が綺麗みたいだよ。」
「そうなんだ。」
少しだけ、立ち止まって、境内を見ていた。

またしばらく歩くと、道の両脇に竹細工のお店があった。
立ち止まって、竹細工を眺めていた。
「あとどのくらい？」
「多分、あと１５分くらいかな。」
「そう．．．」
なんとなく竹細工を見ていた。
 

中社

少し石段を登ると、境内に入った。
社の前まで行って、賽銭を入れる。
鐘をならして、２回お辞儀をして、２回拍手、そして、また、お辞儀をした。
目を閉じて、軽く手を合わせた。

目を開けて、隣を見ると、レイが、目を閉じて、手を合わせていた。
レイが目を開ける。
レイが、私の方を見た。
「何？」
レイが呟く。
「ん？ううん。別に。」
「そう。」
「いこっか。」
「ええ。」
 

徳善院蕎麦極意

「お腹すいた。」
シンジに言う。
「そうだね。」
シンジが苦笑する。
「これにしちゃおうかな。」
華コースを指差す。
「そうだね。大丈夫かも。綾波は？」
「じゃあ、同じもの。」
「了解。すみません！」
シンジが、少し大きな声を出した。

「おまたせしました。」
女中さんが、蕎麦と椀物を、私たちの前に置いていく。
「ごゆっくりどうぞ。」
女中さんが、歩いていく。

「「「いただきます。」」」
小さめの声で言って、箸を取った。
『やっぱり、お蕎麦からよね。』
つゆに薬味を入れて、軽く混ぜ、蕎麦を取って、軽く浸す。
蕎麦を口に入れて、軽く噛み、飲み込んだ。
「いいかんじね。」
シンジを見た。
「そうだね。」
シンジが、微笑みながら言う。
もう一口、蕎麦を口に入れた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 
モニターのこちら側 Genesis 3:86 完 

モニターのこちら側 Genesis 3:87へ

Evaメニューに戻る