列車が走り出して、鈴原と相田の降りた駅を出た。
向かい側の窓に映るシンジと私を見ていた。
「シンジ？」
少し大きな声で言った。
「何？」
シンジが言う。
「どうしようか。」
「綾波のこと？」
「うん。」
「別に、変わらないんじゃないかな。怪しいのは、前からだし。」
「．．．そうだね。」
「今までと同じでいいんじゃないかな。」
「そう。」
「アスカ。」
シンジの手が私の手に触れた。
「うん。」
沈黙が流れた。
 

メゾン松代

シンジがドアを閉め、鍵を閉める。
たたきから上がって、脱いだ靴を揃えた。
「お風呂、先に入る？」
シンジが言う。
「うん。けど、ミサトに少し話す？」
「ああ。そうだね。」
そう言って、シンジが、奥へ歩きだす。
私も、その後から歩き出した。
 

リビング

「ミサトさん？」
シンジが、ミサトの部屋のドアの前で声をかける。
「はい。」
中から、ミサトの声。
少しして、ドアが開いた。
「お帰りなさい。」
ミサトが私たちを見て言う。
「ただいま。」
ミサトに言った。
「．．．」
ミサトが私たちを見る。
「．．．」
私たちもミサトを見ていた。
「どうしたの？」
ミサトが私たちを見ながら言う。
シンジを見た。
シンジが私を見ていた。
「あの、今日の話をしようと思って。」
私から話し始めた。
「ああ。どんな話だったの？」
「レイが、別人なんじゃないかって。」
「．．．」
「相田が、レイの昔の写真と、今の写真を比べて、整形なんじゃないかって。」
「．．．そう。」
ミサトが、私を見て、そして、シンジを見た。
「まあ、前から、怪しいとは思ってたから、何か変わるわけじゃないとは思うけど．．．」
視線をミサトの足元に落としながら言った。
「そうね．．．まあ、今まで同様、気をつけてみて。」
「うん。」
そう言って、ミサトを見た。
「まあ、これだけなんだけど．．．」
「了解。明日になれば、私にも報告されると思うから、何かあったら、教えるね。」
「うん。ミサト、お風呂入った？」
「入ったわよ。これから入るんでしょう？」
「うん。それじゃ、おやすみ。」
「おやすみ。」
そう言って、微笑むと、ミサトは、ドアを閉めた。
ドアに微笑んで、そして、シンジを見た。
シンジが頷く。
シンジに頷いた。
「じゃあ、お風呂、入るね。」
「うん。」
シンジが部屋の方に歩き出す。
私もその後について歩き出した。
 

脱衣所

ジャージを脱いで、かごに入れる。
ブラジャーを外し、パンティーを脱いで、かごに入れた。

浴室に入り、浴槽のお湯に手を入れた。
『ちょっとぬるいかな．．．』
股を洗って、軽く体にかけて、浴槽に入り、お湯を足していく。
水音を聞きながら、軽く目を閉じた。
『レイ．．．偽者なんだ．．．』
この何ヶ月かのことが頭の中に浮かんでくる。
『よく似てたけど．．．けど、本物は、どこにいるのかしら．．．』
目を開けると、お湯が一杯になりそうになっていた。
「おっと、危ない。」
そう呟いて、お湯を止めた。

お湯から出て、頭を洗っていく。
『どうしようかな。けど、今日までと同じようにやっていくしかないんだろうな。』
シャンプーを流し、体にボディソープを伸ばしていく。
『そこまでしてるとなると、人工進化研究所も本気だろうし、私たちに何かできるわけでもない．．．向こうが動くのを待つだけ．．．か．．．』
ボディソープを流し、洗顔フォームを顔に伸ばしていく。
『いつ、来るのかな．．．』
シャワーで洗顔フォームを流し、頭から、シャワーを浴びた。
『ま、がんばっても仕方ないか．．．』
湯船に入って、体を伸ばした。

ため息をついた。

浴槽から出て、軽く体を拭き、脱衣所に出た。
脱衣所で、体を拭いて、下着と部屋着を着た。
 

シンジの部屋の前に立つ。
「おまたせ。」
そう言って、シンジの部屋のドアを見ていた。
「はい。」
シンジの声。
少しして、ドアが開いた。
「ありがと。」
シンジが微笑む。
「ううん。」
少しうつむいて、首を横に振った。
「じゃあ、お風呂、入ってくるから。」
「うん。」
シンジが歩いていくのを見送って、自分の部屋に入った。

椅子に座って、ドライヤーで髪を乾かす。
皆が一つになっていたときのことを思い出していた。
『私の中にもいるのかな．．．もしかすると．．．』
そんなことを思った。
なんとなく、
『そうよ．．．』
と言われたような気がした。
髪を乾かしながら、少し微笑んでいた。
 

目覚ましが鳴っていた。
目覚ましに手を伸ばし、目覚ましを止める。
起き上がって、深呼吸をした。
「行きますか．．．」
小さな声で言って、ベッドから出た。

洗面所からダイニングに戻り、椅子に腰を下ろす。
トースターのタイマーが小さな音を立てていた。
「何にする？」
シンジが、キッチンに向かったまま聞く。
「コーヒーかな。薄めで。」
「了解。」
沈黙が流れた。

「おまたせ。」
シンジが、私の前に、コーヒーの入ったカップとベーコンエッグの載ったお皿を置く。
「ありがと。」
そう言いながら、トースターからトーストを取り出して、新しいパンを入れた。
トーストにバターを塗っていく。

「おはよう。」
ミサトが、髪に指を通しながら、洗面所へ歩いていく。
「おはようございます。」
「おはよう。」
そう言って、コーヒーを一口飲んだ。

ミサトが、私の隣の椅子に腰を下ろす。
「何にしますか？」
シンジが言う。
「コーヒー。濃い目で。」
「はい。」
シンジが、コーヒーを入れ始めた。
 

「それじゃ、行ってきます。」
シンジが、ミサトの部屋の前で言う。
「行ってらっしゃい。」
中からミサトの声が聞こえた。
 

地下鉄列車内

列車がホームに入り、減速していく。
ドアが開いた。
レイが乗り込んできて、私の隣に腰を下ろす。
「おはよう。」
レイが言う。
「おはよう。」
レイに言った。
「おはよう。」
シンジが、私の隣から、声をかけた。

「今度の週末、空いてる？」
少し大きな声でレイに言った。
「え？ええ。」
レイが、少し大きな声で答える。
「じゃあ、一昨日のりんご畑、行かない？」
「いいの？」
「ええ。」
「じゃあ。」
レイが微笑む。
「了解。」
レイに微笑んだ。
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モニターのこちら側 Genesis 3:82 完 

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