３人で座席に座っていた。
駅に入り、車内の音が変わる。
「それじゃ。」
そう言って、レイが立ち上がる。
「うん。またね。」
そう言って、手を振った。
レイが、微笑んで手を振る。
ドアが開いて、レイが下りていった。

列車が走り出す。
窓に映る私たちを見ていた。
シンジの手に、私の手を重ねた。
地下鉄の走行音が響いていた。
 

戦略自衛隊 松代駐屯地 資料室

ドアを開けると、マヤが端末に向かっていた。
マヤが、私の方を見て、微笑む。
小さく手を振って、マヤに微笑んだ。
席につき、端末を立ち上げた。

昼のシフト終了のベルが鳴った。
マヤが端末を落とし、バッグを持って、椅子から立ち上がる。
「それじゃ、お先に。」
「お疲れ様。」
マヤが部屋から出て行った。

しばらくして、電話が鳴った。
受話器を取る。
「はい。惣流です。」
『あ。僕だけど。』
シンジの声がした。
「そろそろ、行く？」
『うん。ミサトさんにも声かけてみる？』
「ああ。そっか。そうだね。」
『じゃあ、入り口で。』
「うん。それじゃ。」
受話器を置いた。

端末をロックして、部屋を出る。
階段を下りていくと、入り口には、まだ、誰もいなかった。

少し暗くなってきた空を、入り口の脇の壁にもたれて見ていた。
「お待たせ。」
シンジの声がした。
声の方を見ると、シンジとミサトが階段を下りてきていた。
「ごめんね。待たせちゃって。」
ミサトが、右手を立てて言う。
「ホント。待ちくたびれちゃったわ。」
少し頬を膨らませて言う。
「ごめん。何か奢るから許して。」
ミサトが苦笑いしながら言う。
「ラッキー。何にしようかな。」
そう言いながら、外に歩き出した。
 

カフェテリア

「あそこにしよっか。」
窓際の席の方を見て、ミサトが言う。
「了解。」
私が、そう言うと、ミサトが歩き出した。

ミサトが、トレイを置いて、椅子に腰を下ろす。
私たちも、トレイを置いて、椅子に腰を下ろした。

ミサトが、湯飲みの水を一口飲んで、スパゲッティにフォークを入れる。
シンジが、鶏の唐揚げを、一口齧る。
私も、ポークピカタをナイフで切って、口に入れた。

「この後、少しして行くっていう感じ？」
ミサトが聞く。
「ええ。」
シンジが答えた。
「二人が別れた後、相田君が、現れたみたい。」
「え、ケンスケですか？」
「うん。まあ、その後は、あなた達を追ったから、分からないみたいだけど。」
「そうですか．．．」
「まあ、その後のことは、会って聞いてみて。」
「分かりました。」
「久しぶりに、相田君にも会えるかもよ。」
「そうですね。」
シンジが、少し複雑な顔をしていた。
 

資料室

端末で、通販サイトを見ていた。
電話が鳴る。
「はい。惣流です。」
『あ。僕だけど。』
シンジの声。
「そろそろ出る？」
『うん。いい？』
「いいよ。じゃあ、入り口で。」
『うん。それじゃ。』
「うん。」
そう言って、受話器を置いた。
端末を落として、バッグを取り、椅子から立ち上がった。
 

長野駅 ２０５７

鈴原と相田が、改札の前に立っていた。
「トウジ、ケンスケ。」
シンジが、二人に声をかける。
「おう。シンジ。」
鈴原が、シンジを見て答えた。
相田が、微笑んで、軽く敬礼をする。
二人に、軽く会釈をした。
「ケンスケ、久しぶり。」
「ああ。久しぶり。あいかわらず、うまくいってるのかな？」
相田が、シンジと私を見る。
「え．．．あ、まあ．．．ね。」
シンジが、少し困ったように、私を見る。
「なら、いいや。」
相田が、鈴原を見る。
「じゃあ、とりあえず、どこか入ろうや。」
「うん。」
シンジが、頷いた。
 

ロイヤルホスト

ドリンクバーで、飲み物を入れてきたカップを置いて、椅子に座った。
鈴原とシンジが、ウーロン茶の入ったカップに口をつけた。
相田が、ジャワティーの入ったカップをテーブルに置く。
デイパックからノートパソコンを取り出し、テーブルに置いて、操作しだす。
私は、紅茶に砂糖とレモンシロップを入れながら、３人を見ていた。

「それで、話って．．．」
シンジが口を開く。
鈴原が、カップを置いて、シンジを見た。
「多分、分かってる思うけど、あの、綾波レイの話や。」
「うん。」
「あの女、どこからきたんや？」
「ちょうど２年くらい前に、戻ってきたって、聞いたけど。」
「聞き方がわるかったかもしれん。あの女、何者なんや？」
「何者って．．．」
「ちょっと、これ、見てもらえるかな．．．」
相田が、ノートパソコンを回して、画面を、私たちに向ける。
「これが、昔の綾波。いいよね？」
相田が、シンジを見る。
「うん。」
シンジが頷く。
「そして、これが、昨日の綾波。」
「．．．」
シンジが、画面を見て、そして、相田を見る。
「これを重ねて．．．」
「．．．」
「で、これが、昔の惣流。」
「え。」
思わず、声を出してしまった。
「これが、今の惣流。重ねると．．．」
「．．．」
シンジが、画面を見ている。
「惣流みたいな変化が普通なんだ。綾波の変化は、ちょっと不自然。整形のような感じがする。」
「整形？」
シンジが、相田を見る。
「まあ、ちょっと、だけどね。」
相田が、シンジ、そして、私を見て、言った。
「思い当たること、ないんか？」
鈴原が言う。
沈黙が流れた。

「僕らは、３人しか知らないことって、ないから．．．」
少しして、シンジが口を開く。
「！」
鈴原の目が、少し大きく開かれる。
「確かめようがないんだ。」
そう言って、シンジが、カップに口をつけた。
鈴原が、私を見る。
私も、首を振った。
「そうか．．．それでいいんか？」
鈴原が言う。
シンジが、カップを置く。
「まあ、罠かもしれないとは、ミサトさんも言ってたよ。」
「ならなして．．．」
シンジが、鈴原を見る。
「逃げられそうにないから。」
「！」
トウジが、驚いたような表情をして、そして、悲しげな、諦めたような表情になった。
シンジが、視線を落とす。
沈黙が流れた。

「あの時、僕は、結局、何もしなかった。いや、人を殺すのが怖くて、何もできなかったんだ。」
シンジが呟く。
「．．．」
「けど、それで、アスカや、ミサトさんは、死んでしまった。綾波もいなくなってしまった。」
「．．．」
「そういうのは、もう嫌なんだ。」
「．．．」
「逃げられないんだったら、逃げちゃ駄目なんだよ。」
「．．．」
「だから、」
「分かった。」
シンジが、鈴原を見る。
鈴原が、シンジを見ていた。
「もお、ええ。」
「トウジ。」
「そこまで、覚悟してんなら、もう何も言うことはない。」
「．．．」
沈黙が流れた。
 

地下鉄列車内

「そいじゃ、わしらは、ここやから。」
そう言いながら、鈴原と相田が立ち上がる。
「うん。」
シンジが、鈴原を見上げて言う。
「シンジ。」
「何？」
「死ぬなよ。」
「うん。」
鈴原が、私を見る。
鈴原に頷いた。
鈴原が頷き、そして、シンジを見た。
「ほいじゃ。」
「うん。それじゃ、また。」
「ああ。」
「それじゃ。」
相田が言う。
鈴原と相田が、右手を上げて、列車を降りていった。
シンジも、右手を上げて、二人を見送る。
私も、右手を上げた。
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モニターのこちら側 Genesis 3:81 完 

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