四さ路で、シンジが立ち止まり、ガイドを見だした。
右脇から、ガイドを覗き込むようにする。
レイが、向こう側から、ガイドを覗き込む。
シンジが、私たちを見て、ガイドに視線を戻す。
「どっちにしようか。」
シンジが、ガイドを指差す。
「こっちとこっち。」
シンジが、展望道路と、何も書いてない道をなぞるようにする。
レイを見た。
レイが、私を見ていた。
「展望道路？」
レイに聞いてみた。
「いいよ。」
レイが小さく言う。
「いい？」
シンジを見て、言った。
「了解。」
シンジが、ガイドをバッグにしまって、歩き出した。

りんご畑の向こうに、町並みが遠く見えていた。
りんごの花のつぼみが大きくなっていて、もう少しで咲きそうだった。
「りんごの花、もう少しで咲きそうね。」
「そうだね。」
シンジが答える。
「来週くらいかな。」
「そうかもね。」
「見に来る？」
「そうだね。いいかも。」
「じゃあ、晴れたら。」
「うん。」
そう言って、レイを見た。
レイが、りんご畑を見ていた。
なんとなく、レイに聞くのを止めた。
後で聞けばいいかな。
そんな風に思った。
 

地下鉄車内

目を閉じて、地下鉄の音を聞いていた。
「次は、須坂。須坂。」
アナウンスが流れた。
しばらくして、列車が減速し、そして、止まった。
「じゃあ、私。」
レイの声がした。
目を開けると、レイが立ち上がって、私たちを見ていた。
「うん。またね。」
微笑みながら、手を振った。
「うん。」
レイが、手を振りながら降りていった。
 

メゾン松代

シンジが鍵を開けて、ドアを開ける。
中に入り、靴を脱いだ。
シンジが鍵を閉め、靴を脱ぐ。
「ミサトさん、遅いかな。」
シンジが、靴をそろえながら、言う。
「そうかもね。」
「夕飯、いらないかな。」
「そうかも。」
シンジが、立ち上がって歩きだした。

「じゃあ、後で。」
そう言って、シンジが部屋に入っていく。
「うん。」
シンジの部屋のドアを、少し見ていた。
「さてと．．．」
呟きながら、自分の部屋のドアを開けた。

バッグを机に置いた。
「どうしようかな。」
上着をハンガーにかけて、呟いた。
「部屋着に着替えればいいか。」
そう呟いて、ブラウスのボタンを外し始めた。
ブラウスとスカートをたたんで、ジャージに着替え、ベッドに横になる。
天井が目に入った。
軽く目を閉じた。

ちょっと疲れたかな。

何か音が聞こえる。
ドアをノックする音。
目を開けた。
「はい。」
ノックに答えた。
「夕飯、できたけど。」
シンジの声がした。
「あ。うん。」
そう言って、起き上がり、軽く伸びをした。
欠伸が出た。

ダイニングのテーブルには、ごはんと、から揚げ、サラダ、そしてお味噌汁が並んでいた。
から揚げとサラダは、さっき、お弁当屋さんで買ってきた。
シンジが、電話をしている。
椅子に腰を下ろして、テーブルの上を見ていた。

「じゃあ、明日の夜の９時とか、大丈夫？」

「うん。」

「うん。それじゃ。あ。」

「アスカも一緒でいい？」

「了解。」

シンジが、受話器を置いて、私の前に来た。
「お待たせ。」
シンジが、椅子に腰を下ろしながら言う。
「ううん。」
「じゃあ、食べようか。」
「うん。」
「「いただきます。」」
シンジが、箸を取った。

「電話、ミサトじゃないよね？」
箸を取りながら言った。
「うん。トウジだよ。」
シンジが、お味噌汁のお椀を取る。
「そうなんだ。珍しいね。」
私も、お味噌汁のお椀を取った。
「うん。話があるんだって。」
「そう。」
「明日、２１時、大丈夫？」
「あ。私もいいんだ。」
「そうみたいだよ。」
「了解。」
「じゃあ、松代に寄った後、一緒に行こう。」
「うん。」
そう言って、お味噌汁に口をつけた。

ドアの開く音がした。
「ただいま。」
ミサトの声がした。
「おかえりなさい。」
シンジが言う。
「おかえり。」
私も言った。

ミサトが、ダイニングに入ってきた。
「今日は、から揚げ？」
ミサトが、テーブルの上を見て言う。
「お弁当屋さんで買ってきました。」
シンジが言う。
「あ、私の分、ある？」
ミサトが、ちょっと不安そうな顔をする。
「ありますよ。」
シンジが、微笑みながら答えた。
「ありがと。じゃあ、着替えてくるね。」
ミサトが、満面に笑みを浮かべて、部屋に歩いていった。

ミサトが、缶ビールをゴクゴクと飲む。
「ぷはーっ。うまい。」
ミサトが、微笑みながら、から揚げを口に運ぶ。
「そう言えば、今日、鈴原とヒカリに会ったわよ。」
「そう。元気だった？」
「うん。」
そう言って、シンジを見た。
「それで、さっき、トウジから電話があって、明日、夜９時に、トウジと会う約束をしたんですけど。」
「そうなの。どこで？」
「長野駅の改札で待ち合わせて、多分、その近くだと思います。」
「了解。一応、予定に、そう入れておいてくれる？」
「分かりました。」
沈黙が流れた。

「鈴原君から電話．．．珍しいわね。」
ミサトが呟く。
「ええ。」
シンジが言う。
「何か、あったのかしら。」
「今日、綾波と一緒だったから、そのせいかもしれません。」
「そう。」
そう言って、ミサトが私を見る。
軽く、首をかしげた。
ミサトが、視線で頷いて、シンジの方を見る。
「もしかしたら、監視の人たちの報告を聞くと、何か分かるかもしれないけど、まあ、会ってのお楽しみ、って感じかな。」
「そうですね。」
そう言って、シンジが、視線をテーブルに落とした。
沈黙が流れた。
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モニターのこちら側 Genesis 3:80 完 

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