「僕は．．．これは違うと思う、って言って．．．」
「．．．」
「綾波を引き剥がした．．．」
「．．．」
沈黙が流れた。

「けど、拒絶したつもりじゃなくて．．．」
「．．．」
「その後も、しばらく、綾波といたんだ．．．」
「．．．」
「けど、戻ってきて、空を見ていて．．．」
「．．．」
「ふと、芦ノ湖の方を見たら、綾波が一瞬見えて、そして、消えたんだ。」
「．．．」
「そして、隣を見たら、アスカがいた．．．」
「．．．」
沈黙が流れた。

「そう．．．」
口を開いた。
「．．．」
シンジが、床を見ていた。
「何で、違うと思ったの？」
何、聞いてるんだろう。私。
シンジが、私を見る。
「何で．．．」
シンジが、私から視線を逸らして、右上の方を見る。
沈黙が流れた。

「何で．．．」
シンジが呟く。
「．．．」
「あれを持っていたから．．．かもしれない．．．」
「．．．あれ？」
「ミサトさんの．．．」
「．．．」
「ペンダント．．．」
「そう．．．」
シンジが、私を見た。
シンジが、床に視線を落とす。
沈黙が流れた。

「あの．．．アスカ？」
シンジが、私を見て、呟く。
「何？」
「あの．．．ミサトさんに会いたかったわけじゃないから．．．」
「．．．そう。」
「あ．．．」
シンジが、慌てたような顔をする。
その顔を見て、椅子から立ち上がった。
「アスカ？」
シンジが、立ち上がろうとする。
シンジの肩に手を置いて座らせて、隣に腰を下ろした。
「いいよ。別に。」
シンジにもたれて、言った。
「アスカ．．．」
シンジが、安心したように言う。
「少し、このままでいて．．．」
「うん．．．」
シンジの体温を感じた。
沈黙が流れた。

「さっき、シンジが、レイの手を引き抜いたのを、思い出したんだ。」
口を開いた。
シンジが、小さく震える。
「そう．．．」
「その後、一緒にいたのも。」
「．．．」
「シンジ、私とレイが並んだら、レイに近づいちゃうでしょう．．．」
「！」
シンジが、震える。
「けど、私、強くないから。」
「．．．」
「だから、私を一人にしないで．．．」
「．．．」
「．．．」
シンジの手が、私の肩にまわる。
沈黙が流れた。

シンジの手が、肩から離れる。
「アスカ。」
シンジが呟く。
「何？」
シンジにもたれたまま、呟いた。
「ごめん。そろそろ、夕飯の準備しないと。」
シンジから離れて、シンジを見た。
「あ．．．うん。ごめんね。」
「ううん。ホントは、ずっと、このままいたいんだけど．．．」
「クス。シンジ．．．」
そう言って、シンジに短くキスした。
「アスカ．．．」
シンジが微笑む。
シンジに微笑んだ。
 

自室

ベッドで、うつらうつらしていた。
コンコン。
ドアを叩く音がした。
「アスカ？」
シンジの声。
「はい．．．」
小さく言った。
「夕飯できたから。」
「うん。」
シンジが、歩いていく音がした。

起き上がって、少しボーっとしていた。
「行こっか。」
そう呟いて、ベッドから降りた。
 

ダイニング

椅子を引いて、腰を下ろす。
私の前に、カレーとサラダの皿、そしてフォークとスプーンが置かれる。
「カレーなんだ。」
なんとなく呟いた。
「うん。なんとなくね。」
シンジが、水の入ったコップを置きながら言う。
「そう．．．」
そう呟いて、スプーンを取り、一口、口に入れた。
「なんか、ちょっと違うコクがある．．．」
「少し栗を入れてみたけど。」
「そうなんだ。おいしいかも。」
「ありがとう。」
シンジが微笑む。
「ううん。」
微笑みながら、首を振った。
 

リビング

ソファにもたれて、外を見ていた。
街の灯りが瞬いている。
チャイの入ったカップに口をつける。
ため息をついた。

洗い物の音がしなくなって、シンジの足音が近づいてくる。
隣に、シンジが、腰を下ろした。
シンジを見た。
シンジが、カップに口をつけていた。
「チャイ？」
カップを見ながら言った。
「うん。」
シンジが、カップから口を離して言う。
「そう。」
沈黙が流れた。

「明日、どこか行くの？」
シンジに聞いてみた。
「久しぶりに、父さんに会いに行こうかと思って。」
シンジが、窓の外を見ながら言う。
「ああ。大学も決まったしね。」
「うん。そう。」
「私も行っていい？」
「いいよ。」
「いつごろ行くの？」
「今日と同じくらいかな。朝ごはん食べて、洗濯とかしてから。」
「分かった。じゃあ、出るとき、声かけて。」
「うん。いいよ。」
「あ。ミサト、誘う？」
「そうだね．．．どうしようか．．．」
「．．．聞いてみる？」
「そうだね．．．」
シンジが、立ち上がって、ミサトの部屋の前に歩いていく。
シンジが、ミサトの部屋のドアをノックする。
「はい。」
ミサトの声がした。
「あの、明日、父さんに会いに行くんですけど、ミサトさん、どうします？」
「．．．」
沈黙が流れた。

ミサトの部屋のドアが開く。
「何時ごろ行くの？」
ミサトが聞く。
「そうですね。今日と同じような感じだと思います。」
シンジが答えた。
「そう。一緒に行っても、いいの？」
ミサトが、少し躊躇いながら聞く。
「ええ。」
シンジが、苦笑しながら答えた。
「じゃあ、そうするわ。」
「はい。」
「よろしくね。」
ミサトがウインクして、そして、ドアを閉めた。
シンジが、私を見る。
シンジに頷いた。
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モニターのこちら側 Genesis 3:71 完 

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