「皆、お茶でいい？」
シンジが聞く。
「うーん。私は、コーヒーがいいかな。」
ミサトが言う。
「私は、お茶でいいわ。」
シンジに答えた。
「綾波は？」
シンジが、レイに聞く。
「私も、お茶で。」
レイが答えた。
「了解。」
そう言って、シンジがキッチンの方に体を向けた。

「いつ戻ってきたの？」
ミサトが、レイを見て言う。
「２年くらい前です。」
レイが呟くように言う。
「そう．．．芦ノ湖に？」
「いえ。人工進化研究所のベッドに寝ていました。」
「そう．．．」
ミサトが、テーブルに視線を落とした。
沈黙が流れた。

ミサトがレイを見る。
「行動には、何か制限があるの？」
レイが、ミサトを見た。
「いえ．．．特には．．．あの頃と同じです。」
レイが言う。
「そう．．．」
ミサトが、視線を左上に移した。
沈黙が流れた。

「おまたせ。」
シンジが、私たちの前に湯のみ、そして、コーヒーカップを置いていく。
そして、羊羹ののったお皿を置いた。楊枝が４本、添えられていた。
シンジが、椅子に腰を下ろす。
シンジが、私を見た。
ミサトに視線を向けた。
「じゃあ、食べよっか。」
皆が、軽くうなづく。
ミサトが、羊羹の一切れに楊枝を刺し、口に運んだ。
「ん．．．なかなか。」
私たちも、羊羹を口に運んだ。
「なるほど。」
シンジが呟く。
あまり甘くなく、さっぱりした味だった。
ミサトが、コーヒーを一口飲む。
「やっぱり、お茶の方がよかったかな。」
そう言って、ミサトが苦笑した。

ミサトが、羊羹を飲み込み、コーヒーを飲んだ。
「レイ？」
ミサトが言う。
「．．．」
レイが、ミサトを見る。
「人工進化研究所って．．．」
ミサトが、左下に視線を落とす。
「．．．」
「やっぱり、また、起こすの？」
「．．．」
沈黙が流れた。

「分かりません。」
レイが小さな声で言う。
「．．．そう。」
ミサトが呟くように言った。

「私たちは、ネルフの資料みたいなものを作ってて、実質的には、何もしてないんだけど、レイは、何かしてるの？」
ミサトが言う。
「いえ。何も。」
レイが答えた。
「そう．．．」
沈黙が流れた。

「レイ？」
ミサトが口を開く。
「はい。」
レイが、ミサトを見た。
「ごめんね。尋問みたいなことしちゃって。」
ミサトが、レイを見て、そして、視線を落とした。
「いいえ。」
レイが、軽く頭を振る。
「ありがと。」
ミサトが小さく言った。

「それじゃ、そろそろ、私．．．」
レイが言う。
「うん。ごめんね。つき合わせちゃって。」
ミサトが言う。
シンジを見た。
シンジが頷く。
「じゃあ、駅まで送るね。」
レイに言った。
「．．．」
レイが頷いた。

レイが、靴を履いて、立ち上がり、外にでる。
「それじゃ、またね。」
ミサトが言う。
「それじゃ、また。」
シンジが言う。
「それじゃ、また。」
レイが、軽く頭を下げた。
ミサトが、手を振りながら、ドアを閉めた。

「行こっか。」
小さく言った。
「ええ。」
レイが、小さく頷いた。

エレベーターに乗る。
沈黙が流れた。

エレベーターから降り、エントランスホールを抜ける。
「エレベーターに乗ってるとき、ちょっと思い出した。」
そう言って、レイを見た。
「．．．」
レイが、私を見る。
視線を前に落とした。
「私のシンクロ率が落ちてきたとき、エレベーターの中で、『心を開かなければ、エヴァは動かないわ。』って言われたこと、思い出したよ。」
「そう．．．」
沈黙が流れた。

「あのマンション、昔のマンションに似てる．．．」
レイが、呟いた。
「そうね。与えられたマンションだから、何か意味があるのかもね。」
「．．．」
沈黙が流れた。

ふと思いついた。
「今、どんなところに住んでるの？」
聞いてみた。
「私も、似た部屋に住んでる。」
レイが、小さく言う。
「そう。」
「．．．」
「え？！」
思わず、そう言って、レイを見た。
「似た部屋って、あの部屋？！」
レイが私を見る。
「少し違うけど。」
レイが、視線を前に戻す。
「直さないの？」
「別に、いいかと思って。与えられた部屋だし。」
「そう．．．」
沈黙が流れた。
 

改札前

「それじゃ、また、大学で。」
そう言って、右手を頭の脇で振った。
「ええ。また。」
そう言って、レイが、軽く頭を下げる。
「うん。」
レイに微笑んだ。
レイが微笑んで、そして、改札に入っていった。
 

メゾン松代 １２１号室 前

鍵を開けて、中に入り、鍵を閉める。
靴を脱いで、スリッパを履く。

ダイニングとリビングは静かだった。
シンジの部屋のドアをノックする。
「はい。」
シンジの声がした。
「入っていい？」
「いいよ。」
ドアを開けた。

シンジが、ベッドに横になっていた。
椅子に腰を下ろす。
シンジが起き上がって、ベッドに座る。
「どうしたの？」
シンジが言う。
「うん。特には。」
「そう。」
沈黙が流れた。

「お昼食べたとき、レイとトイレに行ったじゃない？」
床を見ながら言った。
「うん。」
「その時、『何か気になることとかあるの？』って聞いたら．．．」
「うん。」
「『私は、いない方がいいかと思って．．．』って言われたわ．．．」
「そう．．．」
シンジを見た。
シンジが、床を見ていた。

突然、融合していたレイの手を、シンジが引き抜いた場面が、頭の中に流れた。

沈黙が流れた。
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モニターのこちら側 Genesis 3:70 完 

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