何度目かの昼休みを告げるベルが鳴った。
「行こっか。」
端末のスイッチを切りながら、マヤが言う。
「ええ。」
端末のスイッチを切りながら答えた。

階段を降りていくと、建物の入り口に、シンジと青葉、日向、そしてミサトが待っていた。
「お待たせ。」
マヤが言う。
シンジが私を見て微笑む。
「じゃ、行こっか。」
そう言って、ミサトが歩き出した。
 

カフェテリア

空いているテーブルにトレイを置き、椅子を引いて、腰を下ろした。
シンジが、前の椅子に腰を下ろす。
「いただきます。」
シンジが小さく言う。
「いただきます。」
私も小さく言った。
湯のみを取って、お茶を一口飲んだ。

「クリスマス、どうしようか。」
シンジが、ブリの照り焼きを口に運びながら言う。
「．．．クリスマスかぁ。」
スパゲティをフォークに絡めながら呟いた。
「あんまり好きじゃないんだっけ．．．」
シンジが呟く。
「え．．．ああ．．．よく覚えてるね。」
シンジを見た。
「う？うん。ちょっと思い出したんだ。」
シンジが、私から目をそらして、窓の外を見ながら言う。
「けど、去年みたいなのはいいかな。」
スパゲティの皿に視線を落として言った。
「そう。じゃあ、ミサトさんに都合、聞いてみる？」
「うん．．．けど、駄目かな．．．」
「そうだね。けど、一応、聞いてみよう？」
「うん。」
「なんだったら、イブじゃなくてもいいし．．．」
「そうだね。」
シンジを見た。
「じゃあ、聞いてみるから。」
シンジが私を見て言う。
「うん。」
そう言って、スパゲティを口に入れた。
 

メゾン松代 ダイニング

「ミサトさん、クリスマス、また、食事しに行きません？」
シンジが、サラダを口に運びながら言う。
「．．．」
ミサトが、カレーを飲み込みながらシンジを見る。
「．．．」
シンジが、ミサトを見ている。
「そうねー。それもいいかなー。」
ミサトが、視線を上の方に向けて、うたうように言った。
「．．．」
シンジが、私を見る。
シンジを見て、少し首をかしげた。
「先約があるようなら、いいんですけど．．．」
シンジが言う。
「うーん。まだ、約束はしてないのよ。」
ミサトが、皿に視線を落として言う。
「どうしようかな．．．」
ミサトが呟く。
「あの、イブでなくてもいいですから。」
シンジがミサトに言う。
「．．．２５日でもいい？」
ミサトが、シンジを見る。
「ええ。」
そう言って、シンジが、私を見る。
シンジに頷いた。
ミサトが、私を見て、そして、シンジを見る。
「ＯＫ。じゃあ、２５日に。予約は、私がしておくわ。」
ミサトが微笑む。
「はい。」
シンジが微笑んだ。
 

２０１９年１２月２４日 ２２３７
メゾン松代

「そろそろ寝ようかな。」
現代国語の問題集から目を上げて、伸びをしながら呟いた。

玄関のドアの開く音がした。

『帰ってきたのかな？』
そう思いながら、問題集を閉じて、椅子から立ち上がった。

リビングに入ると、ミサトがダイニングからリビングに入ってきた。
「おかえり。」
ミサトに声をかける。
「ただいま。」
ミサトが微笑んで、そして、部屋に入っていった。

ミサトの部屋の前に立つ。
「何か飲む？」
聞いてみた。
「ううん。いいわ。」
ミサトの声がした。
「そう。」
そう答えて、ドアの前から離れた。
 

１２月２５日
戦略自衛隊 松代駐屯地

昼のシフト終了のベルが鳴った。
「それじゃ、お先に。」
マヤがバッグを持って立ち上がる。
「お疲れ様。」
マヤが部屋から出て行った。

階段を下りていくと、シンジが待っていた。
「お待たせ。」
シンジに微笑みながら言う。
「ううん。」
シンジが、微笑みながら首を振った。
「お待たせー。」
後ろから、ミサトのヒールの音と声がした。
「おっそーい。」
ミサトに振り向きながら、微笑んだ。
 

ホテルメトロポリタン長野 スカイラウンジ「アポロ」

「お飲み物は何にいたしましょう？」
ウェイターさんが聞く。
「私は．．．生ビールで。」
ミサトが、私たちを見る。
「私は、じゃあ、ノンアルコールビール。」
シンジを見た。
シンジが私を見ていた。
「じゃあ、僕も、ノンアルコールビール。」
「デザートは何にいたしましょう。」
ミサトが私を見る。
「去年の、なんて言うんだっけ？」
シンジに小さく言った。
「なんだったかな。
  あの、ここでブランデーをかけて、火をつけて、それで食べるのは、なんていいましたっけ？」
シンジがウェイターさんに言う。」
「サヴァランのりんご添え、カルヴァドス風味でございますね？」
「あ、じゃあ、それを．．．２つ。」
「かしこまりました。」
ウェイターさんがミサトを見る。
ミサトがメニューを見ていた。
「私も、それにしようかな。」
「かしこまりました。食後のお飲み物はコーヒーと紅茶がありますが。」
「私は、コーヒー。ホットで。」
ミサトが言う。
「私も。」
「僕は、紅茶をホットで。」
「レモンとミルクがありますが。」
「じゃあ、レモンで。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
ウェイターさんが、メニューを持って歩いていった。

軽く息をついて、水を飲む。
グラスを置いて、窓の外を見た。
雪が少し強く降っていて、その間から街の灯りが、ちらちらと瞬いていた。
「よく降るわね。」
なんとなく呟いた。
「そうだね。」
シンジが呟く。
「また寒くなったかな。」
「そうかも。」
「もっと寒くなるのかな。」
「今年は、前より寒いんじゃなかったかな。多分、このくらいなんじゃない？」
「そう．．．」
窓の外を、雪が落ちていくのを見ていた。

「お待たせしました。」
ウェイターさんが、グラスシャンパンと、ビール、ノンアルコールビール、グラス、そして、前菜のお皿を並べていく。
「帆立とディルサーモンのミルフィーユ仕立てでございます。」
そう言って、ウェイターさんが歩いていった。
「じゃ、乾杯しよう。」
ミサトが、シャンパンのグラスを持って言う。
ミサトに頷いた。
「じゃ、今年もお疲れ様でした。
  乾杯。」
「「乾杯。」」
３人でグラスを合わせた。
グラスが小さな音をたてた。
 

「お待たせしました。」
ウェイターさんが、私達の前にデザートを置いていく。
「失礼します。」
そう言って、ウェイターさんが、デザートにブランデーをかけて火をつけていく。

やわらかな炎が、ゆらゆらと揺らめく。

「ごゆっくりどうぞ。」
ウェイターさんが歩いていった。
「食べましょう？」
ミサトを見て言った。
「うん。」
ミサトが、微笑みながら頷いた。
 

メゾン松代 リビング

ミサトとソファに腰掛けて、ハーブティーを飲んでいた。
窓の外は、あいかわらず、雪が舞っている。
「今年も、もう終わりね。」
なんとなく呟く。
「そうね。」
ミサトが呟いた。
沈黙が流れる。

「今日は、なんかよかったな。」
ミサトが呟く。
「そう。」
相槌を打った。
「気楽かな。なんとなく。」
「そう。」
「うん．．．」
「．．．」
「もう少し、このままがいいかな．．．」
ミサトが呟いた。
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モニターのこちら側 Genesis 3:62 完 

モニターのこちら側 Genesis 3:63へ

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