目覚ましが鳴っていた。
布団から手を出して、目覚ましを止め、頭を出した。
あくびをしながら、伸びをする。
『少し暖かくなったのかもしれない。』
そんな風に思いながら、ベッドから起き上がった。

洗面所から出て、ダイニングに入る。
テーブルに、スープの入った皿が載っていた。
椅子に腰をおろす。
シンジが、キッチンに向かっていた。
トースターが、音を立てて、トーストが出てくる。
トーストを少し見て、スープを飲み始めた。

スープを飲み終えて、トーストを取り、バターを塗り始める。
シンジが、ベーコンエッグを、私の前と自分の前に置いて、椅子に腰をおろした。
シンジが、私を見た。
「はい。」
バターを塗ったトーストを、シンジに渡した。
「ありがと。」
シンジが、微笑んで、トーストを受け取る。
「ううん。」
シンジに微笑んで、トーストを取り、パンをトースターに入れた。

「今朝、寒かったね。」
コーヒーを飲みながら、言った。
「そうだね。雪が降ったみたいだよ。」
シンジが、コーヒーを飲みながら、言う。
「そうなんだ。どおりで、寒くて目がさめたわ。」
「少し、毛布か布団増やしたほうがいいかもね。」
「そうね。」
「冬か．．．」
シンジが、リビングの方を見ながら言う。
「もう、何度も来てるのに、まだ、慣れない感じ。」
「そうだね。」
シンジが、コーヒーカップに口をつける。
沈黙が流れた。
 

戦略自衛隊 松代駐屯地

「「おはようございます。」」
「おはようございます。」
警備員さんにIDカードを見せて中に入る。
敷地内をしばらく歩く。

「雪、積もり始めたね。」
そこかしこに残っている雪を見ながら、シンジに言った。
「そうだね。」
シンジが、目を配りながら言う。

建物に入った。
「それじゃ、また後で。」
シンジが言う。
「うん。後で。」
シンジに微笑んだ。

階段を上がって、３３号室に入る。
「おはよう。」
「おはよう。」
マヤが、私を見て微笑む。

「今朝、寒かったね。」
バッグを机に置きながら、マヤに言った。
「そうね。そろそろ、雪の支度しないと。」
「そうね。やだな。」
椅子に腰を下ろし、端末のスイッチを入れながら言った。
「そうね。」
ほんの少し笑いながら、マヤが端末の方に向き直った。
 

何度目かの昼休みを告げるベルが鳴った。
「行こっか。」
マヤが言う。
「ええ。」
化学の参考書を閉じながら、答えた。

階段を下りていくと、建物の入り口に、シンジと青葉、日向、そしてミサトが立っていた。
「お待たせ。」
口を開いた。
シンジが微笑む。
「じゃ、行こっか。」
そう言って、ミサトが歩き出した。
 

カフェテリア

空いているテーブルにトレイを置き、椅子を引いて、腰を下ろした。
前の席にシンジが腰を下ろす。
「食べよう？」
シンジを見た。
「うん。」
シンジが頷いて、生姜焼きに箸をつける。
私は、お茶に口をつけた。

シンジが、外を見ながら、お茶を飲んでいる。
私は、お茶に口をつけながら、シンジの見ている方に視線を向けた。
沈黙が流れた。
 

昼のシフト終了のベルが鳴る。
「それじゃ、お先に。」
マヤが、バッグを持って立ち上がる。
「お疲れ様。」
マヤを見ながら言う。
「お疲れ様。」
そういいながら、マヤが部屋から出て行った。
端末を落としながら、現代国語の問題集を閉じて、バッグに入れた。

階段を下りていくと、入り口にシンジが立っていた。
「おまたせ。」
シンジに微笑む。
「ううん。」
シンジが微笑んだ。

出口に向かって通路を歩いていく。
「今日って．．．」
シンジが口を開く。
「．．．」
シンジを見た。
「誕生日だよね。」
シンジが私を見る。
「．．．うん。」
頷いて、少し視線を落とした。
「これ。」
シンジが、私に、小さな箱を手渡す。
「あ．．．
  受験だし、よかったのに。」
シンジを見た。
シンジが微笑みながら、私を見ている。
視線を箱に落とした。
「ありがと。」
少し小さな声で言った。

シンジを見て、そして、箱に視線を戻す。
「開けてもいい？」
箱を見たまま言った。
「いいよ。」
シンジが答えるのを聞いてから、箱を開ける。
ブルーの石のついたネックレスが入っていた。
取り出して、着けてみる。
「似合う？」
シンジを見た。
「似合うよ。アスカ。」
シンジが微笑む。
「ありがと。」
シンジに微笑んだ。
 

メゾン松代

「ただいま。」
ミサトの声が聞こえた。

「アスカ？」
しばらくして、シンジが私を呼ぶ。
「はーい。」
地理の問題集を閉じて、立ち上がった。

ダイニングに行くと、ミサトが、夕飯の皿の並んだテーブルについていた。
ミサトの前の椅子に腰を下ろす。
ミサトが、ネックレスを見ている。
「そのネックレスいいわね。」
ミサトが口を開いた。
「シンジに貰ったの。」
シンジの方を、ちょっと見て、ミサトを見た。
「あ、そうか。誕生日だっけ。」
「そういうこと。ミサトは、何かくれないの？」
「ごめん。すっかり忘れちゃって。」
ミサトが、顔の前に右手を立てて、少し頭を下げながら言う。
「ミサトらしいわね。」
苦笑いしながら言った。

「去年は、イヤリングだっけ？」
ミサトが言う。
「そう。」
頷いて、シンジを見た。
シンジが、鰤の照焼きをほぐしていた。
「来年は、何にするの？」
ミサトが、シンジを見ながら言う。
「え？」
シンジが、ミサトの方を見て、そして、私を見た。
「何がいいかな？」
シンジが、私を見ながら言う。
「え．．．うーん．．．」
シンジを見ながら考えていた。
「なんか、聞いた私がバカだったみたい。」
ミサトが言う。
「「え？」」
シンジと一緒にミサトを見てしまった。
「なんか、ホントお似合いよ、あなたたち。」
ミサトが苦笑いしながら、私たちを見ていた。
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モニターのこちら側 Genesis 3:60 完 

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