「私、シャワー浴びるから。」
シェルターの階段を降りたところで、シンジに言った。
「じゃ、僕もそうするよ。」
シンジが答える。
「了解。夕飯は、その後ね。」
「うん。」
シンジが微笑んだ。
思わず微笑んでいた。

衣料倉庫の前で足を止めた。
シンジが足を止めて私を見る。
「どうしたの？」
怪訝そうな顔のシンジ。
「シンジは、私が出てくるまで、ここで待ってること。」
シンジを見た。
シンジが一瞬惚けたように私を見て、次の瞬間、微笑みながら言った。
「了解。」
「よろしい。」
シンジに微笑んだ。

衣料倉庫から出てくると、シンジが、入り口の脇の壁にもたれていた。
「お待たせ。」
シンジが私を見る。
「お待ちしてました。」
シンジが微笑む。
「あっらー、シンジにしては、面白いこと言うじゃない。」
シンジがうつむく。
「変．．．かな．．．」
「クス。努力は認めるわ。じゃ、私、シャワー浴びるから。シンジも早く夕飯作るのよ。」
「了解。アスカ。」
シンジが、微笑んだ。
浴場に歩き出した。

脱衣所の籠に、着替えを入れた。
制服を脱いで、籠に入れていく。
服を全部籠に入れて、浴場に歩を進めた。

シャワーのバルブをひねる。水が出てきた。
だんだん暖かくなってくる。
髪を少し濡らして、シャンプーを手に取り、髪を洗う。
リンスをなじませて、軽く流した。
石鹸を泡立て、体に伸ばしていく。
手、胸、おなか、背中、お尻、足．．．そして顔。
顔から、シャワーで流した。

顔の水を拭き取り、頬に指を滑らせた。
「洗顔フォームが欲しいところだけど．．．しょうがないか。」
しぼったタオルで体の水を拭き取っていく。
浴場を出た。
脱衣籠の前に立ち、息を吐いた。
「これから、どうする．．．」

新しい制服を着て、脱衣所を出た。
今日着た制服を、洗濯機に入れて、スイッチを入れた。
洗濯機が動き始めた。

食堂に入ると、シンジが椅子にかけていた。
「夕飯できた？」
シンジが私を見る。
「うん。ちょっと待ってて。」
シンジが立ち上がり、調理場に入っていく。
少しして、シンジがトレイにいくつか器を載せてきた。
五目ご飯に、お豆腐のようなもの、そして、お味噌汁。
「それ、お豆腐？」
「うん。乾燥したのがあったから。」
「へー、そんなのあるんだ。」
「うん。食べよう？」
「うん。」
「「いただきます。」」
お味噌汁に口を付けた。

「やっぱり、野菜とか食べないと、体に悪いわよね。」
「多分ね。」
「どうしようか。保存食にはなさそうだし。」
「明日、少し探してみるよ。多分、そういうこと考えてあるはずだし。」
「そうよね。」

「「ごちそうさまでした。」」
シンジが食器を片していく。
「ねえ、シンジ？」
「何？」
シンジが食器を片しながら言う。
「何か、デザートみたいなものないの？」
シンジが私を見る。
「うーん。何かあったかなぁ。」
「．．．」
「あ、じゃ、野菜の代わりのものを探すのも兼ねて、食器を洗ったら、探しに行こうよ。」
「了解。そういうやさしいとこ好きよ、シンジ。」
シンジが私を見る。
「そ、そう．．．」
シンジの頬が少し赤くなったような気がした。
「クスクス。赤くなっちゃって、かぁわいい。」
「か、からかうなよ、アスカ！」
シンジが、食器を持って調理場に入っていった。

下手なこと言わないほうがいいかな．．．
少し後悔していた。
二人しかいないんだから．．．

調理場で食器を洗っているシンジを、ぼんやりと見ていた。

「アスカ？」
シンジの声がした。
シンジを見た。
「終わった？」
「うん。」
「じゃ、行こう？」
「うん。」
立ち上がって、出口に向かって歩き出した。

「ね、シンジ？」
「ん？」
「さっきは、ごめんね。」
「ん？別に気にしてないよ。」
「ありがと。」
「．．．」

二人で食料倉庫に入った。
「じゃ、僕は、こっちを探すから、アスカはそっちを探してくれる？」
「了解。」
シンジが左の方に歩き出した。私は右の方へ。
缶詰が積まれている。

鮭、鯖、シーチキン、焼き鳥、おでん．．．おかずばっかり。

そういう棚がかなり続いた。ま、ここに入る人数からすると、この位はいるわよね。
だが、そのうち、別の缶詰を見つけた。

みつまめ。パイン。みかん。あんこ．．．

あるじゃない。思わず顔がほころんだ。
とりあえず、みつまめの缶を２つ取った。
そういう棚がしばらく続いた。
うーん。分かってるじゃない。やっぱり、甘いものは、必要なのよ。
そして、最後に種があった。
早く育つものないかしら。
ま、シンジに任せちゃえばいいかな。

倉庫の左側を通って、入り口に戻った。
入り口にシンジがいた。
シンジが私を見る。
「何かあったんだ。」
シンジが私の手を見て言う。
「ええ。みつまめの缶詰。」
「へー。僕も食べていい？」
「もっちろん。シンジは、何か見つかった？」
「こっちは、ご飯物のパックとか、お米だから。まあ、かなり持ちそうというのは、分かったよ。」
「そう。あと、一番奥に種を見つけたから、後で見ておいてくれる？」
「ほんと？よかった。僕の方じゃ、海苔くらいしかなかったから、どうしようかと思ってたんだ。」
「ふふふ。おかずは、右側みたいね。」
「そうみたいだね。」
「ま、とりあえず、みつまめ食べましょ？」
「うん。」
シンジが微笑んだ。

食堂の椅子に座っていた。
「お待たせ。」
シンジが私の前に、みつまめの入ったお椀を置く。
前の席に、お椀を置き、シンジが椅子にかける。
「はい。」
シンジが私にスプーンを渡す。
「ありがと。じゃ、食べましょ？」
「うん。」
スプーンで寒天を口に運ぶ。
「おいしい！」
シンジに微笑んだ。

「「ごちそうさま。」」
シンジがお椀とスプーンを片し、調理場に歩いていく。
「シンジ？」
シンジが振りかえる。
「何？」
「ここ、マギにアクセスできたりしないのかしら？」
「どうかなぁ。多分何かあるだろうけど。」
「ちょっと、探してみるわ。」
「了解。僕も後から行くよ。」
「了解。」
シンジが調理場に歩いていく。
私は、食堂の入り口に歩き出した。

「まあ、コントロールルームとか、そういう所よね。多分。」
シェルターを奥に歩きながら、そう呟いた。
まさに、制御室という名前の部屋があった。
ドアのノブをひねると、ドアが開いた。
ドアの脇の壁を探って、スイッチ見つけ、電気を点けた。
モニターがいくつも並んでいる。
「ここね．．．」
スイッチがたくさん並んでいる。
MONITOR、MAGI TOKYO-3、MAGI MATSUSHIRO．．．
モニターのスイッチを入れる。

チー。

パソコン特有の音がし始める。
壁に埋め込まれたモニターにシェルターの内部が映し出された。
「次は、マギね．．．」
まず、ここのマギのモニターのスイッチを入れた。
真ん中の机のモニターが音を立てる。
しかし、何も表示されなかった。

死んでるんだ。マギが．．．
次は、松代．．．

スイッチを入れようとして、手を止めた。
「モニターを立ちあげるとログが残るわ．．．ここに誰かがいることがログに残る．．．他に何か情報を集める方法はないかしら．．．いきなり、松代のマギにアクセスするのは、危険な気がする。下手したら戦自が攻めてくるわ．．．もしかしたら、このシェルターを動かした段階で、すでに．．．」

「アスカ？」
シンジの声がした。
振り向くとシンジが入り口に立っていた。
「どう？」
「うん。まあね．．．」
少し青い顔をしていたのかもしれない。
「そう．．．」
シンジが、目線を落として、そう呟いた。
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モニターのこちら側 Genesis 3:6 完 

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