少し行くと、右に食堂、左に理学部の校舎があらわれた。
「なんか建てこんでるわね。」
「まあ、都会だから。人多いし。」
ミサトが言う。
「そんなもの？」
「そんなものよ。」
少し笑いながら、ミサトが言った。

すぐに突き当たりになって、そこを左に曲がった。
「あれ？外に出ちゃうんじゃないの？」
ミサトに聞いた。
「うん。外から回ってもよかったんだけど、どうせなら、中から回ったほうがいいかと思って。」
「そういうこと。」
「うん。この校舎の入ってすぐのところみたいよ。」
「そう。」

少し歩くと、大学院生物科学研究科と書かれた立て札があった。
「ここ？」
ミサトを見る。
「多分ね。」
「そう．．．」
そう言いながら、シンジを見た。
シンジが、校舎を見上げていた。
私も、校舎を見た。
沈黙が流れた。

「ここに、副司令がいたの？」
ミサトに聞いてみた。
「多分ね。あと、シンジ君のお母さんも。」
「そう。」
そう言って、シンジを見た。
シンジは、まだ、校舎を見ていた。

「入ってみる？」
ミサトが口を開いた。
「え？」
そう言って、シンジが、ミサトを見た。
「大学って、結構、入れるのよ。」
「そうなんですか。」
「うん。ちょっと入ってみる？」
「じゃあ、ちょっとだけ。」
「了解。じゃあ、行こうか。」
ミサトが、入り口の方に歩き出す。
シンジが、私を少し見て、そして、歩き出した。

扉を開けて中に入ると、暗い廊下の所々に棚が置かれて、書類や実験器具のようなものが入れられていた。
「こんな感じなんですか？」
シンジが、きょろきょろしながら言う。
「そうみたいよ。」
ミサトが、周りを眺めて、ゆっくり歩きながら答えた。
少し歩くと建物の端に着いたので、入ってきた扉に戻り、外に出た。
夕焼けで、辺りが、赤く染まり始めていた。
「この後、どうしようか？」
ミサトが言う。
シンジが、私を見た。
私は、ミサトの方を見た。
「帰るか、本部の方を少し見るか、かな。」
シンジが、私を見た。
「ま、一応、本部を見ておくのは、いいかもね。」
そう言って、シンジに微笑んだ。
シンジが、うれしそうな顔をする。
「じゃ、そうしようか。」
ミサトが、微笑んだ。

すぐ先に見えていた門から出て、道路の向かい、右斜め前の門に入った。
建物の間を少し行くと、建物に突き当たったので、右に曲がり、また、建物の間を進んだ。
大き目の建物の前を、いくつか通り過ぎると、また、建物に突き当たったので、今度は左に曲がった。
「今、どの辺？」
なんとなく聞いてみた。
「半分くらい来たんじゃないかな。」
ミサトが言う。
「そう。」
半分くらいって、なんなんだろう。そう思ったけど、口には出さなかった。

建物を通り過ぎると、塔のような建物が目に入った。
「あれかな。」
ミサトが言う。
どこかで見たことのあるような建物だった。
少し歩くと、その建物の前に来た。
「そうみたいですね。」
シンジが言う。
時計台を見上げながら歩いた。

時計台の前にはロータリーがあって、その前が門になっていた。
門から出た。
「とりあえず、京大終了？」
ミサトが私たちを見ながら言う。
シンジを見た。
シンジが、私を見ていた。
視線を、シンジからミサトに移して、頷いた。
「ＯＫ。ところで、ここからは、どう帰るの？」
ミサトがシンジを見る。
「えーと．．．」
シンジが、ガイドを見る。
「あそこの角にバス停があるみたいです。」
「了解。じゃ、帰ろう？」
ミサトが、私たちに言った。

京大正門前から京都駅行きのバスに乗った。
ホテルに着いたのは、６時くらいだった。
とりあえず、夕飯を食べることにした。
 

レストラン トップオブキョウト

「お待たせしました。」
ウェイトレスが、ミサトの前にビール、そして私たちの前にウーロン茶を置いていく。
軽く頭を下げて、歩いていった。
ミサトがグラスを上げる。
「じゃあ、奈良京都旅行の旅程終了を祝って、乾杯。」
「「乾杯。」」
グラスを合わせて、そして、ウーロン茶を少し飲んだ。
ミサトが、グラスを勢いよくテーブルに置く。
「ぷはーっ。うまいっ！」
ミサトの顔がほころんだ。
思わず苦笑しながら、シンジを見た。
シンジも、グラスに口をつけながら、苦笑いしていた。

スープを飲み込んで、口を開いた。
「修学旅行って、大体、こんな感じなの？」
ミサトを見た。
ミサトが、スープを飲み込む。
「回る場所は、こんな感じなんじゃない？もしかしたら、もっと回るかもしれないけど。」
「そう。」
「ただ、まあ、普通は、もう少し羽目を外せるかもね。」
「．．．」
「今回は、先生つきっきりみたいなもんだから。その点は、ちょっと申し訳ないと思ってるわ。」
「まあ、けど、それは、仕方ないでしょう？」
「まあ、そうなんだけどね。」
「それは、ミサトのせいじゃないわ。気にすることないわよ。」
「そう言ってくれると、少しは気が楽になるわ。ありがと。」
ミサトが微笑む。
微笑んで、ちょっとだけ胸と目頭が熱くなった。
スープの器を見て、そして、スプーンを器に入れた。

コーヒーを飲みながら、少しづつ動いていく夜景を見ていた。
「昼間の方がいいかもね。」
遠くの暗闇を見ながら言った。
「そうね。明日の朝は、ここで食べる？」
ミサトが、暗闇を見ながら言う。
「いいかも。」
「了解。」
暗闇を見ながら、コーヒーカップに口をつけた。
 

エレベーター内

「この後、どこか出かける？」
ミサトが言う。
「明日、帰るんでしょう？」
ミサトを見た。
「うん。そうだけど。」
「また、何時間か高速乗るんでしょう？」
「ま、そういうこと。」
「じゃあ、早く寝るんでいいわ。」
「サンキュー。じゃ、そうしましょう。」
エレベーターのドアが開いた。
 

翌朝
フロント

チェックアウトを終えて、ミサトが近づいてくる。
「おまたせ。」
「ううん。」
「じゃ、行きましょう？」
 

駐車場

シンジが、バッグをトランクに入れていく。
シンジが、トランクを閉めた。
シンジが私を見る。
「ありがと。」
シンジに微笑んだ。
「ううん。」
シンジが微笑む。

シンジが座席を立て、助手席に乗り込み、ドアを閉める。
「いい？」
ミサトが、バックミラー越しに私たちを見る。
「ええ。」
「はい。」
「ＯＫ。」
ルノーが動き出した。
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モニターのこちら側 Genesis 3:58 完 

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