「はい．．．」
受話器を置く音。
トイレのドアの閉まる音がした。

「．．．カ．．．アスカ．．．」
私の肩が揺すられて、シンジの声がした。
「うん．．．」
目を開けると、シンジが、私を見ていた。
「朝だよ。」
シンジが言う。
「うん．．．」
そう呟いて、寝返りを打ちつつ、体を起こした。
「今日は、どこに行くんだっけ？」
ぼーっとした頭で、目をパチパチさせながら、聞いた。
「今日は、清水寺とか、銀閣寺とか。」
「そっか．．．」
そう呟いて、ベッドから降りた。
「顔、洗ってくるね。」
立ち上がりながら言った。
「うん。」
シンジの相槌が聞こえた。

トイレを使って、顔を洗った。
鏡を見る。
昨日よりは、調子いいかな．．．
そんな風に思った。

シャワー、浴びようかな。
そうしよう。

Ｔシャツとパンツ、そして、パンティーを脱いで、シャワーに入った。
お湯が出るのを待って、髪を洗い、体を洗う。
石鹸が残ってないか、よく確かめて、シャワーを止めた。
髪と体の水を拭きとって、パンティー、パンツ、そして、Ｔシャツを着た。

シャワーから出ると、シンジが、ガイドを見ていた。
「ごめん。お待たせ。」
シンジに声をかける。
「ううん。」
シンジが、私を見て、微笑んだ。
「ミサト、起こすよね？」
「うん。」
「分かった。」
ミサトのベッドの脇に行って、ミサトの肩を揺らす。
「ミサト。ミサト。」
「ん．．．」
ミサトが、目を開ける。
「朝よ。」
「そう．．．」
ミサトが、起き上がって、のそのそという感じで、トイレに歩いていった。
 

コーヒーハウス コルベーユ

ベーコンエッグとポテト、それに、ホットケーキと紅茶を取って、席に着いた。
ミサトが、トーストをかじりながら、ガイドを見ている。
「今日は、バスの方が、よさそうな感じですけど。」
シンジが言う。
「駐車場、ないところもあるみたいね。」
ミサトが、答える。
「ええ。」
「そうね．．．回る予定が、三十三間堂に、清水寺、智恩院、南禅寺、銀閣寺、それと、行けたら、京大と．．．」
「．．．」
「まあ、なんとかなりそうかな．．．」
ミサトが、シンジを見る。
「ええ。」
シンジが、頷いた。
 

京都駅前 Ｄ１バス停

１０時を少し過ぎて、銀閣寺行きのバスがやってきた。
「来たみたいね。」
ミサトが言う。
「あれに乗るんだ。」
ミサトに、相槌を打ってみた。
「ええ。そうよ。」
ミサトが、バスを見たまま答えた。

「次は、博物館三十三間堂前。」
ミサトが、降車ボタンを押す。
乗ってから、まだ、１０分もたっていなかった。
「もう降りるの？」
ミサトに聞いてみた。
「ええ。１Ｋｍくらいしかないから。」
ミサトが答える。
「そうなの。」
そう言いながら、バスが減速するのを感じていた。
 

三十三間堂

「ずいぶん、長い廊下ね。」
不思議な建物だった。
柱が、妙にたくさんある。
「そうだね。」
シンジが答えた。

仏像も、ずいぶんたくさんあった。不思議な感じがした。重要文化財．．．

向かいに、古い西洋風の建物があった。
「こっちは、何？」
シンジに聞いてみた。
「京都国立博物館、だって。」
シンジが答える。
「ああ。そう言えば、バス停に博物館って入ってたわよね。」
「そう言えば、そうだね。」
「ふーん。何があるの？」
「．．．仏教関係って書いてあるね。」
「そう。じゃあ、お寺にあるようなものがあるのかな。」
「そうかもね。」
「ふーん。」
バスを待ちながら、博物館を眺めていた。

バスに少し乗って、降りた後、しばらく歩くと、清水寺に着いた。
 

清水寺

清水の舞台から、京都の町を見た。
「見晴らし、いいわね。」
「そうだね。」
シンジが答える。
「確かに、ここから飛び降りるのは、ちょっと蛮勇って感じ。」
「そうだね。確かに。」
シンジと、京都の町を見ていた。

舞台を下から見た。
支えている柱の並び方が、ちょっと綺麗な感じがした。
そして、音羽の滝を見た。

バス停まで戻って、また、バスに乗り、降りた後、少し歩くと、知恩院に着いた。
 

知恩院

三門や御影堂、そして、七不思議を見ていたら、１２時半を回っていた。

「シンジ。」
「何？」
シンジが、私を見る。
「お腹減った。」
「．．．僕も。」
シンジが苦笑する。
「もうちょっと我慢してくれる？」
ミサトが私を見て、言う。
「どのくらい？」
「ちょっとバスに乗るんだけど．．．」
「分かった．．．」
思わず、ミサトを少し睨んでしまった。

結局、バス停には戻らず、道に出たところで、タクシーを拾った。
 

瓢亭別館

「松花堂弁当、お待たせしました。」
女中さんが、瓢箪のようなお盆の上にのせられた、小鉢のついたお弁当を、私たちの前に置いていく。
「ごゆっくりどうぞ。」
女中さんが、歩いていった。

「食べましょう？」
ミサトが言う。
「ええ。もう、お腹ぺこぺこ。」
「いただきます。」
そう言って、シンジが、ゆで卵を取って口に入れた。
ミサトは、わさびを醤油に溶かして、お刺身をつけ、口に入れる。
私は、湯葉を取って口に入れた。微妙なおいしさが、口の中に広がる。
「これ、名物でしたっけ？」
シンジが言う。
「そう言えば、そんなこと、ガイドに書いてあったかな。」
ミサトが答える。
「ええ。」
シンジが、卵の脇の照り焼きを、口に入れた。
 

瓢亭別館前

店の前で、ミサトが出てくるのを待っていた。
「おいしかったね。」
シンジに言う。
「うん。京都のお店は、おいしいところが多いね。有名なお店ばかりっていうのもあるとは思うけど。」
シンジが、私を見て答える。
「そうなの？」
「うん。ここも、かなり有名みたいだよ。」
「そうなの。まあ、高そうなのは、分かるけど。」
苦笑しながら言った。
「そうだね。」
シンジが、苦笑いした。
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モニターのこちら側 Genesis 3:56 完 

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