「はい．．．」
受話器を置く音がした。
トイレのドアの閉まる音がした。

「アスカ．．．アスカ．．．」
肩が揺らされた。
「ん．．．」
顔を上げると、シンジが私を見ていた。
「起きる時間」
「うん．．．」
身体を起こして、ベッドから降り、スリッパを履いて、トイレに歩いていく。

トイレを使って、顔を洗って、ベッドに戻った。
シンジが、ベッドに横になっていた。
「シンジ？」
少し小さめの声で言った。
「何？」
シンジが私の方を見る。
「ミサト起こす？」
「うん。」
シンジが、身体を起こす。
「あ、私が起こすから。」
「ありがと。」
シンジが、また、ベッドに横になった。

「ミサト．．．ミサト．．．」
ミサトの肩を揺らしながら言う。
「うん．．．」
「朝よ。起きて。」
「うん．．．」
ミサトが、少し眠そうな顔で起き上がる。
「シャワー使うんでしょう？」
「うん．．．そうだね。」
ミサトが起き上がり、トイレに入っていった。

ベッドに腰を降ろした。
「なんか、疲れた感じ。」
なんとなく呟いた。
「そうだね．．．」
シンジが答える。
「今日は、どうするんだっけ？」
ベッドに寝転がりながら言った。
「洛西かな。金閣寺とか。」
「そうなんだ。」
「．．．」
「．．．」
「疲れた？」
「うん．．．なんかだるい感じ。」
「じゃあ、今日は、休もうか。」
「．．．それも、ちょっとね．．．」
沈黙が流れた。

うとうとしていると、トイレのドアが開いた。
足音がして、そして、隣のベッドに腰を下ろす感じがした。
「今日は、どうするんだっけ？」
ミサトの声がした。
「金閣寺とかを回る予定です。」
シンジが答える。
「金閣寺って、どう行くんだっけ？」
「バスです。」
「そうなの。電車とかないわけね？」
「ええ。色々回るのも、ちょっと不便なんですよね。」
「そうなの。」
「多分、自転車とか使うんだと思いますけど．．．」
「ああ。なるほど。ガイド見せてもらっていい？」
「ええ。」
シンジが、立ち上がって、私たちの方に歩いてくる。
私も起き上がった。
「はい。」
「ありがと。」
ミサトが、ガイドを見ている。
「行くのは、どこだっけ？」
ミサトが言う。
「金閣寺、等持院、龍安寺、仁和寺、妙心寺、法金剛院、広隆寺、天龍寺くらいですか？」
「そう．．．」
ミサトがガイドを見ている。
「金閣寺と龍安寺。仁和寺と天龍寺は、駐車場、大きいみたいね．．．
  妙心寺は、分からない．．．と。
  適当に減らさない？」
「そうですね．．．」
シンジが、私を見る。
「ちょっと疲れてる感じだし、別にいいわよ。」
ミサトを見て言った。
「了解。そうねー。」
ミサトが、ガイドをめくる。
「お昼、グルメしちゃっていいかな？」
ミサトが、私を見る。
「いいわよ。」
ほんの少し投げやりな感じで答えた。
「じゃあ、１１時ごろに嵐山に着くように出るのでいいかな？」
ミサトがシンジを見る。
「ええ。」
シンジが私を見る。
「うん。分かった。」
「じゃあ、とりあえず、朝ご飯、食べに行こう？」
ミサトが、立ち上がった。
 

コーヒーハウス コルベーユ

バイキングだったので、私は、ベーコンエッグと、ポテト、トーストを１枚、それに紅茶を取って、席に着いた。
シンジは、ご飯に魚とお味噌汁、ミサトは、私と同じような感じだった。

ミサトが、トーストをかじりながら、ガイドを見ている。
シンジの方を見た。
「どんな風に行くの？」
シンジが、私を見て、そして、ミサトを見る。
「どんな感じですか？」
ミサトが、シンジを見る。
「まあ、あんまり欲張らないで行きましょう。金閣寺は見るとして。」
「そう。」
そう言って、紅茶のカップに口をつけた。
 

８１２号室

食事から戻ると、９時ちょっと前だった。
「いつごろ出るの？」
ミサトに聞く。
「そうねー。まあ、１０時ちょっと過ぎかな。」
「了解。洗面所使っていい？」
「いいわよ。」
「サンキュー。」

歯を磨いて、トイレを使った。
部屋に戻ると、ミサトが、コンパクトを見ながら、メークしていた。
シンジは、荷物を片付けている。
私も、バッグからポーチを出して、少しだけメークした。

ソファーにもたれて、目を閉じていた。
「そろそろ行こうか。」
ミサトの声がした。
「うん。」
目を開けて答えた。
 

阪急嵐山線 嵐山駅前 駐車場

「結構空いてたわね。」
ミサトが言う。
「そうね。それで、どこに行くの？」
ミサトに聞いた。
「ここから、５、６分だと思う。」
「そう。」
「うん。こっちね。」
ミサトが歩き出した。

少し歩いて、橋を渡り、公園の脇を進むと、竹の柵で囲われた、木造の家が見えてきた。
「ここね。」
ミサトが言う。
 

料亭 錦

「なんか、場違いな感じ．．．」
ミサトに言った。
「まあ、いいじゃない。こんなことでもないと、京都の料亭なんて来れないし。」
ミサトが、竹にのったさしみを口に入れる。
私も、引き出しの中の器に入った、煮物を口に入れた。
「確かに、おいしいんだけどね。」
苦笑しながら、言った。
「おいしいものは、食べられるうちに食べておかないとね。」
そういいながら、ミサトが、煮物に箸をつける。
「．．．そうね。」
そう言って、和え物を口に入れた。
 

料亭 錦 前

ミサトが、中から出てきた。
「次は？」
ミサトに聞く。
「次は、天龍寺よね。」
ミサトが、シンジを見る。
「そうですね。」
シンジが頷いた。

駅前に戻って、ほんの数分走り、川を渡ると、天龍寺に着いた。
 

天龍寺

拝観料を払って、庭園を見た。

「特別名勝？」
駐車場の方に歩きながら言った。
「そうだね。」
シンジが言う。
「やっぱり、見る人が見るとすごいのかな。」
「多分ね。色々、由来があるんじゃないかな。それぞれの石とか、木とか。こういうのに似せているとか。」
「．．．そうかもね。」
沈黙が流れた。
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モニターのこちら側 Genesis 3:54 完 

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