「おまたせ。」
ミサトが、中から出てきた。
「ううん。」
ミサトに言った。
「それで、この後は、どうするんだっけ？」
ミサトが、シンジを見ながら言う。
「興福寺と春日大社、東大寺を歩いて回ろうと思うんですけど。」
シンジが、ガイドを見せながら言う。
「なるほど。駐車場、混んでるかもしれないしね。」
「ええ。」
「一応、バスもあると．．．」
「はい。」
「ＯＫ。じゃ、そうしましょう？」
ミサトが私を見る。
ミサトに頷いた。
「ＯＫ。じゃ、まず、興福寺だっけ？どっちになるのかな？」
ミサトがシンジを見る。
「こっちです。」
そう言って、シンジが歩き出した。
 

興福寺境内

五重塔の脇を通る。
「また、五重塔ね。」
五重塔を見上げながら、口を開いた。
「そうだね。」
シンジが言う。
「これって、釈迦の骨が入ってるの？」
なんとなく言ってみた。
「ああ。そうだっけ。そう言えば、そんなことも書いてあったような気がする。」
「そう。」
「まあ、全部が、そうじゃないと思うけど。」
「まあ、そうよね。」
「こういうのが、建築様式になってるんじゃなかったかな。」
「．．．」
「塔があって、お堂があるっていうのが。」
「そうなんだ。」
「うん。」
「そう．．．」
見えてきた東金堂を眺めながら呟いた。

東金堂と国宝館を見た。
元は、飛鳥の山田寺にあったものというのが、いくつかあった。
ガイドを見ると、飛鳥寺から飛鳥坐神社の方へ、もっと行ったところに跡地があった。不思議な感じがした。
 

国宝館前

シンジが腕時計を見ていた。
腕時計を見ると、１時を少し回っていた。
シンジがガイドを見ている。
「どうしたの？」
シンジを見て、口を開いた。
「うん？うん。ちょっとね。」
シンジがガイドを見たまま言う。
「ちょっと、何？」
「バスに乗ろうかどうしようか考えてるんだ。」
「ふーん。」
シンジの隣に行って、ガイドを覗き込んだ。
シンジが、ガイドの地図を指差す。
「今、ここなんだけど．．．」
国宝館を指差していた。
「春日大社がここで、バス停が、ここか、ここ。」
一方のバス停は、ここと春日大社の、ほぼ真中にあった。
「ただ、こっちは、別の系統らしいんだ。」
春日大社本殿と書かれた、春日大社に近い方のバス停を指して言う。
「あと、東大寺は、ここで、バス停がここ。」
そのバス停は、ここと春日大社の真中のバス停の近くだった。
「春日大社本殿に行けばいいんじゃないの？」
「うーん。ただ、表参道を歩くのがお勧めなんだって。」
「なるほど。悩ましいわね。」
「春日大社本殿に行けばいいんじゃないかな。」
覗き込んでいたミサトが言う。
顔を上げてミサトを見た。
「確か、そこ、駐車場があるでしょう。車で行けばいいわよ。」
ミサトが言う。
「けど、止められないかもしれないし．．．」
シンジが、ミサトを見て言う。
「まあ、その時は、その時で、私が、ここに戻ってくるとか、すればいいし。」
「けど、それじゃ．．．」
「ま、ちょっと残念だけど、大人は、そういうとこで我慢しないとね。」
ミサトがウインクしながら言った。
「それでよければ、いいですけど．．．」
シンジが、申し訳なさそうに言う。
「アスカも、それでいい？」
ミサトが、私を見る。
「いいけど．．．」
ミサトを見た。
「じゃ、行きましょう？」
ミサトが微笑んだ。
 

春日大社駐車場

ミサトが、ドアをロックする。
「止められてよかったね。」
ミサトに言った。
「そうね。ま、車で動ければ、それに越したことはないわ。」
ミサトが、私に微笑む。
「じゃ、行こう？」
ミサトが、シンジを見て言う。
「はい。」
シンジが微笑んだ。

駐車場から、ニノ鳥居をくぐり、茶店を右に見ながら参道を歩いて、門をくぐった。
４つ並んだ本殿に、１つづつお辞儀をした。

「４つも並んでるなんて、変わってるね。」
ミサトに言ってみた。
「そうね。まあ、大きいから分けてるだけかもしれないけど。」
「そうなの？」
「うん。箱根とか、１棟に３柱の神様がいたから。」
「そうなの。」
「そうじゃなかったかな。忘れちゃったわ。」
「ミサトらしいわね。」
思わず、少し笑ってしまった。

門を出た、すぐ前の道の奥にある若宮神社にも、お参りした。
その後、白い馬を見て、宝物殿を見た。
 

表参道

表参道を少し歩くと、立て札に鹿苑と書かれていた。
「鹿苑？」
なんとなく口に出してみた。
「鹿がいるのよ。」
ミサトが言う。
「ふーん。」
「行ってみる？」
「．．．そうね。」
「じゃあ、行きましょう？」
ミサトが脇道に入っていった。
 

鹿苑

鹿を見ていた。
「なんで鹿なのかな？」
聞くともなく呟いた。
「なんか、春日大社とか、その元の鹿島神宮と関係あるらしいよ。」
シンジが、鹿を見ながら言う。
「そうなの。」
沈黙が流れた。
 

表参道を抜けて、右に曲がり、しばらく歩くと東大寺の南大門についた。
南大門を抜け、右手に池が見えて、少しすると、門があり、そして、大仏殿があった。
 

大仏殿

大仏を見上げた。
「これが、奈良の大仏。」
思わず呟いた。
「そうね。」
ミサトが言う。
「五重塔もそうだけど、こんなのよく作ったわね。」
「そうね。」
「何で作ったのかな。」
「なんか、疫病とか内乱を鎮めるためだったみたいだよ。」
シンジが、立て札を眺めながら言う。
「そうなの．．．よく分からないけど．．．」
「昔は、宗教的な儀式と政治が一緒だったから。」
ミサトが言う。
「なるほど．．．」
なんとなく、補完計画が発動した時のことを思い出した。
エヴァみたいなものなんだ。これも。
 

正倉院

大仏殿を出て、少し歩くと、正倉院に着いた。
不思議な外見をしていた。
 

少し歩いて転害門を見て、正倉院まで戻り、大仏殿の裏手を歩いた。
道の脇の建物を眺めながら歩いていくと、二月堂と書いた石碑があり、目を移すと、少し大きな建物があった。隣に三月堂があった。

三月堂の中には、いくつも、国宝と書かれた仏像があった。

「この後は？」
シンジに聞いた。
「春日大社まで歩きかな。」
シンジが言う。
「結構ありそうね。」
「うん。けど、来るときの半分くらいだと思うよ。」
「そうなの。」

しばらく森の中を歩いていると、鹿を見かけるようになった。
 

水谷茶屋

シンジと甘酒を飲んでいた。
「なんか疲れた。」
シンジに言った。
「うん。かなり歩いたからね。お疲れ様。」
シンジが微笑む。
「あ．．．うん．．．ありがと。」
なんとなく、恥ずかしいような気がして、甘酒の湯飲みに口を付けた。
 

春日大社駐車場

シンジが、ドアを閉めて、シートベルトを締める。
「いい？」
ミサトが言う。
「はい。」
「ＯＫ。」
ルノーが動き出した。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 
モニターのこちら側 Genesis 3:52 完 

モニターのこちら側 Genesis 3:53へ

Evaメニューに戻る