−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 2019年9月23日 目覚ましが鳴っていた。 「ん...」 手を頭の上に伸ばして、目覚ましを止める。 「ふー。」 息を吐いた。 目覚ましを見る。 「6時10分前。」 ちょっと早いよね... そう思いながら、ベッドから起きあがった。 顔を洗って、ダイニングに入ると、シンジが何か作っていた。 椅子に腰を下ろす。 少しの間、シンジを見ていた。 「おまたせ。」 そう言って、シンジが、ホットケーキを載せた皿を、私の前に置く。 「ありがと。」 シンジに微笑んで、ナイフとフォークを、手に取った。 「おいしい。」 最初の一口を飲みこんで、言った。 「朝早いから、こういうのがいいかと思って。」 シンジが微笑む。 「うん。」 そう言いながら、ナイフで、次の一切れを切り始めた。 「おはよう。」 ミサトが、準備万端といった感じの格好で、ダイニングに入ってきた。 「おはようございます。」 「おはよう。」 ホットケーキを飲みこんで言った。 「私にもある?」 ミサトが、シンジに言う。 「ええ。ちょっと待ってください。」 シンジが、椅子から立ちあがった。 コーヒーを飲みながら、シンジが、食器を洗うのを見ていた。 「昼頃着くの?」 聞くとはなしに、なんとなく呟いた。 「そうね。ちょっと遅めかな。」 ミサトが、少しだるそうに言う。 「そう。」 沈黙が流れた。 「お昼、どうしようか?」 シンジを見ながら呟いた。 沈黙が流れた。 「その場で決めるって感じかな。高速が長いから。」 ミサトが言う。 高速が長いから... なんとなく、意味も分からずに頭の中でくりかえしていた。 メゾン松代 駐車場 ミサトが、運転席に乗り込む。 トランクが開いた。 シンジが、トランクを開けて、バッグを入れていく。 シンジが、トランクを閉め、私を見る。 「ありがと。」 シンジに微笑んだ。 「ううん。」 シンジが微笑む。 「乗ろう?」 そう言って、シンジが、私の横を通る。 「うん。」 踵を返して、シンジの後から歩き出した。 シンジが、座席を立て、助手席に乗り込み、ドアを閉める。 「いい?」 ミサトが、バックミラー越しに、シンジと私を見る。 「はい。」 「ええ。」 ルノーが走り出した。 街中を走っていく。 「まだ空いてるね。」 フロントグラスから道路を見ながら言った。 「そうね。ぎりぎりってとこかな。」 ミサトが答える。 「そう。」 流れていく街並みを見ながら呟いた。 長野インターから長野自動車道に乗る。 スピードが上がった。 左右に山並みを見ながら、変わり映えのしない風景が続いていく。 「なんか退屈ね。」 軽く伸びをしながら、言葉を吐き出した。 「そうなのよ。まあ、高速だから仕方ないわ。柵立ってるし。」 ミサトが、バックミラーを、ちらっと眺めて呟いた。 うつらうつらしながら前を見ていた。 「少し休憩しよっか。」 ミサトが言う。 「ん? うん...そうね...」 少しして、ルノーが、サービスエリアへの道に入った。 恵那峡サービスエリア トイレから出て、自販機に囲まれた椅子の並んだエリアに行くと、ミサトとシンジが何か飲んでいた。 「何飲んでるの?」 二人に聞いた。 「私は、コーヒー。」 「僕は、ウーロン茶。」 「そう...私も買ってくるね。」 「うん。」 シンジが頷いた。 「何にしよう...」 並んでいる自販機を眺めながら歩いていく。 あんまりおいしそうなのないな... 結局、ボトルのウーロン茶を買って戻った。 「お待たせ。」 二人が、私を見て頷いた。 「お昼、どうします?」 シンジが言う。 「12時だと、ちょうど京都かな。」 「混みそうですね。」 「うん。それに、京都は、3泊するし、少し前のサービスエリアか、奈良まで行って食べるのがいいと思うけど。」 「そうですね。」 シンジが私を見る。 「お昼、何がいい?」 「なんか、飛鳥鍋ってあった気がするんだけど...」 「アスカ鍋...ガイドとか?」 「うん。」 「じゃあ、調べて教えてよ。」 「分かった。」 そう言って、ウーロン茶を飲んだ。 ルノーがサービスエリアを出ていく。 私はガイドを見ていた。 「あった。これ。」 「あった?」 シンジが、首を回して、私を見る。 助手席のシンジにガイドを差し出した。 「なるほど。」 シンジが、ガイドを少し見ている。 「名物みたいだね。何箇所か食べられるところがあるんだ。」 「そうみたいね。」 「どこがいいかな?」 「『めんどや』でいいんじゃない?予約もしなくていいみたいだし。」 「そうだね。じゃあ、そうしようか。」 シンジが、ガイドのページに付箋紙を貼りつけた。 「これ、借りてていい?」 シンジが私を見る。 「うん。いいよ。」 「じゃあ、たどり着くまで。」 シンジが微笑む。 「うん。」 シンジに微笑んだ。 2時間程走って、高速を降りた。 街中を走り、しばらく線路と川の間の道を走った。 林や田畑が続いていく。 標識に橿原神宮とか飛鳥が出始めた。 「この辺?」 ミサトが言う。 「とりあえず、飛鳥の方に行ってください。」 シンジが答える。 「了解。」 ミサトが答えた。 「村役場に、郵便局...そろそろね。」 ミサトが言う。 「そうですね。この先、左です。」 シンジが地図を見ながら言う。 めんどや 「おまたせしました。」 店員さんが、たくさん具の入った大きな鍋を、コンロに置き、火をつける。 周りに、取り皿、生卵の入った器、葉っぱでくるまれたものの載った皿を置いていく。 「ごゆっくりどうぞ。」 店員さんが歩いていく。 「食べましょう?」 そう言って、ミサトが、葉っぱでくるまれたものを取り、葉っぱを取り始めた。 「それ何?」 「お寿司よ。」 「お寿司?」 手にとって、ミサトの真似をして、葉っぱを取った。 中から、確かにお寿司のような形をしたものが出てきた。 ミサトが、それを口に入れる。 「おいしい?」 ミサトに聞いた。 「うん。食べてみれば。」 「うん。」 お寿司を口に入れた。 ちょっと保存食っぽかったけど、おいしかった。 「おいしい。」 ミサトを見た。 「でしょ?」 ミサトが微笑んだ。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− モニターのこちら側 Genesis 3:48 完 |