| −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 目覚ましが鳴っていた。 「ん．．．」 手を頭の上に伸ばして、目覚ましを止める。 手を落とした。 「んーっ。」 両手を上げて、伸びをする。 目を開けた。 「朝か．．．」 起きあがって、部屋を出た。 ダイニングに行くと、シンジが何か作っていた。 「おはよう。」 「おはよう。アスカ。」 シンジがキッチンに向かったまま言った。 顔を洗って、ダイニングに戻ると、シンジが、トーストを齧っていた。 シンジの前の椅子に腰を下ろす。 シンジが、トーストを置いて、立ちあがった。 キッチンで、鍋からカップにスープを入れて、そして、私の前に置く。 「ありがとう。」 「ううん。」 シンジが椅子に腰を下ろした。 チン。 トースターが音を立てて、トーストが出てきた。 シンジが、トーストを取り、バターを塗っていく。 「はい。」 シンジが、私の前にあるお皿に、トーストを置いた。 「ありがと。」 「どういたしまして。」 シンジが、お皿に置いたトーストを取り上げ、一口齧る。 私も、そうした。 「おはよう。」 ミサトが、ダイニングに入ってきた。 「おはようございます。」 「おはよう。」 ミサトが、洗面台の方に歩いていった。 ミサトが、戻ってきて、私の隣りに腰を下ろす。 シンジが、スープをついで、ミサトの前に置く。 「ありがと。」 「いいえ。」 チン。 シンジが、トースターからトーストを取り、バターを塗って、ミサトの前に置いた。 「ありがと。」 「どういたしまして。」 ミサトが、スープを啜った。 「今日、同窓会だっけ？」 ミサトが口を開く。 「ええ。」 シンジが答える。 「そっか。よろしく言っといてね。」 「ええ。」 「機会があったら、家に来てもらうのもいいかもね。」 「許可とかいらないんですか？」 「うーん。いるかもね。けど、まあ、いるにしても、私が取ればいいことだから。」 「そうですね。」 「うん。その辺も聞いといて。」 「分かりました。」 ミサトが、トーストを齧った。 「「「ごちそうさま。」」」 シンジが、お皿を重ね始める。 ミサトと私も、お皿を重ねた。 シンジが、お皿を持って立ちあがる。 私も、残りのお皿を持って立ちあがった。 お皿をキッチンに置く。 「ありがと。」 「ううん。」 「昼までどうしようか。」 「外、雨でしょう？」 「うん。」 「ここにいれば、いいんじゃない？」 「そうだね。」 「じゃ、私、部屋にいるから。」 「うん。」 シンジから離れて、洗面台の方へ歩き出した。 トントン。 ドアを叩く音がした。 「はい。」 「アスカ。そろそろ行こう。」 シンジの声。 「うん。ちょっと待ってて。」 「うん。リビングにいるから。」 「うん。」 地理の参考書と問題集を閉じて、椅子から立ちあがった。 リビングに入ると、シンジがソファに座って、外を見ていた。 「おまたせ。」 シンジが私を見る。 「ううん。行こうか。」 「うん。」 いつもの地下鉄に乗って、少し手前で降りる。 少し歩くと、定鑑堂に着いた。 入り口脇の歓迎の札の中に第３新東京市立第壱中学校同窓会の文字がなかった。 「ないね．．．」 シンジに呟いた。 「そうだね。どうしてかな．．．」 シンジが呟く。 「ちょっと危ない感じ．．．」 「そうだね．．．」 「けど、とりあえず入ってみるしかないよね．．．」 「うん．．．」 シンジが歩き出す。 私も歩き出した。 シンジが仲居さんに声をかける。 「あの、洞木の名前で昼食の予約が入ってると思うんですけど。」 「洞木さん。はい、どうぞお上がりください。」 仲居さんが、スリッパの方に手を向ける。 シンジが、靴を脱いで、スリッパに足を入れた。 私もそうした。 「こちらです。」 襖を開けると、すでに、ヒカリ、そして鈴原と相田が来ていた。 「久しぶりやな、シンジ。」 「シンジ、久しぶり。」 ヒカリが、私に小さく手を振る。 私も手を振った。 「ごめん。遅くなっちゃって。」 シンジが言う。 「まだ、時間になってないから、謝ることないわよ。」 ヒカリが微笑みながら言う。 シンジが、鈴原、相田の隣りに座ったので、私は、シンジの前に座った。 「お飲み物は、どうしましょうか。」 すでに、ヒカリの前にはジンジャーエール、鈴原の前にはウーロン茶、相田の前にはコーラが置かれていた。 シンジを見た。 「じゃあ、僕は、ウーロン茶。」 「私は、ジンジャーエールで。」 「かしこまりました。」 仲居さんが出ていった。 「これで全部？」 席がほぼ埋まってしまったお膳からヒカリに視線を移して聞いた。 「うん。ごめんね。同窓会なんて言っちゃって。」 ヒカリが答えた。 「まあ、あのクラスは、元々、全国から、第３新東京市へ越してきた人達だったから、仕方ないかもね。」 「一応、連絡取ってはみたんだけど、転居先不明とか、凄く遠くだったりして、結局、この５人になっちゃったの。」 ヒカリが、私から、シンジ、相田、そして鈴原に視線を走らせた。 「皆、この辺りに住んでるの？」 鈴原と相田を見た。 「ああ。あいかわらず、お父んもおじんも研究所勤めやから。」 鈴原が答える。 「俺のところもそうさ。」 相田が答えた。 「研究所？」 聞いてみた。 「人工進化研究所っていうところ。前のネルフの松代支部。まあ、ほとんど変わらないよ。」 相田が、あっけらかんと答える。 「そう。」 そう呟いて、シンジを見た。 シンジが、少し難しそうな顔をして頷いた。 『人工進化研究所．．．ネルフの松代支部．．．国連が動いてるってこと？．．．また、起こそうとしてるのかしら．．．』 「失礼します。」 仲居さんの声がした。 障子が開いて、料理が運びこまれる。 甘露煮、あえもの、てんぷら、そば、おやき．．．長芋料理が並べられていく。 小さな鍋に火がつけられた。 シンジと私の前に、飲み物のビンとコップが置かれた。 「それでは、ごゆっくり。」 「はい。」 ヒカリが答える。 仲居さんが出ていった。 「アスカ。」 シンジが、ジンジャーエールを私のコップに注ごうとする。 「あ、うん。」 コップを持った。 ジンジャーエールが、コップに注がれる。 「あいかわらずみたいやな。」 鈴原が言う。 「何か言った？」 鈴原の方を見た。 「ホント、相変わらずみたいだね。」 相田が言う。 相田の方を見た。 「うるさいわね。」 「アスカ。」 シンジが言う。 「え？」 「この位でいい？」 コップを見た。 「あ．．．うん。ありがと。」 シンジがジンジャーエールのビンを置く。 シンジのウーロン茶のビンを持った。 「シンジ。」 「うん。」 シンジがコップを持つ。 コップにウーロン茶を注ぐ。 「ありがと。」 「ううん。」 ウーロン茶のビンを置いた。 「それじゃ、再会を祝して、乾杯！」 「「「乾杯！」」」 皆がグラスを置く。 「食おうぜ。」 「うまそうやな。」 「そうだね。」 皆、それぞれに料理に箸をつけ始めた。 「今も、ミサトさんと一緒に住んでるんやて？」 お吸い物の御椀を置いて、鈴原が口を開く。 「うん。監視の都合だけどね。よろしくって言ってたよ。」 シンジが、お吸い物の御椀から口を離して言う。 「そうか。」 「また、遊びに来て下さいって。」 「そうか。じゃあ、今度の日曜にでも。」 「あ、けど、事前に許可を取らないといけないって言ってたから、次の日曜の方がいいかもしれない。」 「．．．」 鈴原と相田、ヒカリが顔を見合わせている。 「あの、そんなに気にしなくても、大丈夫だから．．．」 シンジが小さな声で言った。 「皆は、拘束されたりしなかったの？」 シンジが口を開く。 「ああ。ワシらは、そういうのなかったんや。お父んとおじんは、しばらく拘束されとったけどな。」 「俺もそうだよ。」 「私もそう。」 「そう。よかった。」 シンジが、少しほっとしたような顔をして、鈴原を見た。 「トウジ？」 「何や？」 「あの時は、ごめん。僕には止められなくて。」 「もう済んだことや。」 「ごめん。」 「あんまりグチャグチャぬかしとると、パチキかましたるぞ。」 「ごめん。ありがとう。」 「あいかわらずやな。シンジ。」 鈴原が苦笑いしている。 「うん。」 シンジが苦笑いした。 「そうだ、住所か電話番号、教えてよ。」 そう言って、ヒカリが私に手帳を渡す。 「ああ。ちょっと待って。」 手帳に、住所と電話番号を書いていく。 「はい。」 手帳を、ヒカリに渡した。 「ありがとう。」 「後で、教えてくれや。」 「俺にも。」 「うん。」 ヒカリが答える。 「ただ、手紙も電話もチェックされてるから、差し障りのありそうなことは、書いたり、言ったりしないでね。それだけよろしく。」 ヒカリ、鈴原、相田が顔を見合わせる。 沈黙が流れた。 「あ、私達、ここだから。」 そう言って、ヒカリが席を立つ。 鈴原と相田も席を立った。 「それじゃ、またね。」 ヒカリが手を振る。 「またな、シンジ。惣流。」 「それじゃ。」 「うん。それじゃ。」 「またね。」 ヒカリに手を振った。 ３人が地下鉄を降りていく。 ３人が手を振る。 私達も手を振った。 列車が駅を出て、３人が見えなくなった。 「皆、あんまり変わってなくてよかったね。」 「そうだね。」 「人工進化研究所．．．」 「ネルフの前身の名前かな。」 「そうなの。」 「うん。地下に、そういう表札があったんだ。」 「そう．．．」 沈黙が流れた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− モニターのこちら側 Genesis 3:45 完 |