「「さよなら。」」
「お疲れ様でした。」
私達を見て、警備員の人が言う。
ＩＤカードを見せながら、ゲートを出た。

地下鉄の駅に歩いていく。
商店街を歩いていくと、そこかしこに、バレンタインデーのディスプレイがあった。
なんとなく見ていた。
 

地下鉄車内

シンジと並んでつり革につかまっていた。
地下鉄特有の音が、あたりを満たしていた。
「もうすぐ、バレンタインデーだね。」
前を見たまま言った。
「ん？何？」
シンジが、私の方を見る。
「え、ううん。なんでも．．．」
「そう．．．」
シンジが、ほんの少し私を見て、そして、前を見た。
 

ダイニング

シンジと夕飯を食べていた。
ごはんを噛みながら、シンジを見ていた。
シンジが私を見る。
「どうかした？」
シンジが、ほんの少し心配そうな顔で私を見る。
「何か付いてる？」
続けて、シンジが言う。
「え．．．ううん。なんでもない。」
視線を生姜焼きの皿に落として、箸を生姜焼きにのばした。
「そう．．．」
シンジの声が聞こえた。
 

戦略自衛隊 松代駐屯地

「「おはようございます。」」
「おはようございます。」
警備員さんに、ＩＤカードを見せながら、軽く頭を下げて、ゲートを通った。
通路をしばらく歩いて、建物に入る。
「それじゃ、後で。」
シンジが微笑みながら言う。
「うん。」
そう言って、シンジに微笑んだ。

階段を上がって、３３号室に入る。
「おはよう。」
マヤが、私を見て微笑む。
「おはよう。」
マヤに微笑んだ。

バッグを机に置いて、椅子に腰を下ろし、端末のスイッチを入れた。
「もうすぐ、バレンタインデーね。」
なんとなく言ってみた。
「そうね。チョコ、買った？」
マヤが言う。
「ううん。」
「あげないの？」
「うーん。どうしようかな。マヤは？」
「え．．．うーん。秘密かな。」
「そう．．．やっぱり、貰うとうれしいのかな。」
「それは、うれしいんじゃない？義理でも。」
「アハハ。義理チョコも、用意したほうがいいのかな。」
「うーん。アスカは、別にいいかもね。シンジ君くらいでしょ？」
「そうね．．．」
「うん。」
「義理チョコかぁ．．．」
なんとなく、指令が浮かんだ。ま、それはいいかな．．．
そんな風に思いながら、端末のキーをたたきはじめた。

何度目かの昼休みを告げるベルが鳴った。
「行こう。」
マヤが言う。
「うん。」
そう言って立ちあがった。

階段を降りていくと、建物の入り口に、シンジと青葉、日向、そしてミサトが待っていた。
「お待たせ。」
シンジを見て言った。
「行こう。」
シンジが、微笑みながら言う。
皆が歩き出した。

マヤが青葉と話していた。
青葉にあげるのかな．．．それとも、リツコ．．．そんなことを、ふと考えた。
 

メゾン松代 リビング

ソファにもたれて、テレビを見ていた。
ミサトが、後ろを通った。
「ね、ミサト？」
ミサトが足を止める。
「何？」
「チョコ、買った？」
「チョコ？
  ああ、バレンタインデーの話ね。まだよ。」
「買う予定？」
「うん。シンジ君には、やっぱ、あげないとまずいっしょ。いつもご飯作ってもらってるしー。」
「そうよね。やっぱり。」
ミサトが、かがんで、私の耳に口を近づける。
「アスカは、義理じゃなくて、本命チョコなんじゃないの？」
ミサトがささやく。
ミサトを見た。
「．．．」
何か言おうとして、言葉が出なくて、ミサトを見ていた。
「アスカがあげないんだったら、私があげちゃおっかな。」
ミサトがいたずらっぽい顔をする。
「え．．．」
「ふふ。冗談よ。」
ミサトが、少し真顔になって言う。
ミサトを見ていた。
ミサトが右上に視線をそらす。
「ちょっと本気も入ってるけどね．．．」
ミサトが、私を見て、微笑んだ。
「まあ、シンジ君には、あげたほうがいいんじゃない。色々お世話になってるし。」
「そうね．．．」
「うん。」
そう言って、ミサトが立ちあがる。
「じゃね。」
ミサトが、自分の部屋に入っていった。
 

２／１４ 戦略自衛隊 松代駐屯地

何度目かの昼休みを告げるベルが鳴った。
「行こう。」
マヤが言う。
「うん。」
そう言って立ちあがった。

「チョコ、あげた？」
階段を降りながら、マヤが言う。
「え．．．うん．．．まだ、買ってもいないんだ．．．」
階段を見ながら言った。
「そうなんだ。」
「マヤは？」
「うん。あげたよ。青葉君と日向君。」
「そう。義理？」
「ふふ。秘密。」
「そう．．．」
沈黙が流れた。

階段を降りると、シンジ達が待っていた。
「お待たせ。」
シンジを見て言った。
「じゃ、行こっか。」
ミサトが、そう言って歩き出す。
皆、歩き出した。
マヤが、青葉に近づいて、並んで歩き出した。
 

「それじゃ、お先に。」
そう言って、マヤがバッグを持って立ちあがる。
「お疲れ様。」
マヤを見て、言った。
端末を落とし、生物の参考書と問題集を閉じて、バッグに入れた。

階段を降りていくと、シンジが待っていた。
「お待たせ。」
シンジに微笑む。
「うん。」
シンジが微笑んで、そして歩き出した。

「ミサトから、チョコ、もらった？」
商店街を歩きながら、聞いてみた。
「ううん。貰ってないよ。」
シンジが答える。
「そうなんだ。ちょっと前に聞いたとき、シンジにあげるって言ってたから。」
「そうなんだ。じゃ、夜にでもくれるのかな。」
「そうかもね。」
「．．．」
「ね？」
「何？」
「貰えるとうれしい？」
「え．．．うん、まあ、ね。」
「そう．．．」
沈黙が流れた。
 

メゾン松代

机に向かって、時計を見ていた。
２３：４２。
もう少しで、今日が終わりそうだった。
「やっぱり、欲しいよね。」
そう呟いて、椅子から立ちあがり、コートを着た。
 

ドアを閉めて、鍵をかけた。
リビングを通って、そして、シンジの部屋の前。
ドアをノックした。
「はい。」
中からシンジの声がした。
「入ってもいい？」
「いいよ。」
ドアのノブに手をかけて、ドアを開けた。
「どうしたの？」
シンジが、私を見る。
「あの．．．これ．．．もう、翌日になっちゃったけど。」
シンジのそばに歩いていって、コンビニで買ってきた、チョコを差し出した。
「あ．．．」
シンジが私を見る。
「ありがとう。」
シンジが微笑む。
「あの．．．これ、義理だから。いつもご飯作ってもらってるし。」
視線をシンジからそらして言った。
「うん。ありがとう。」
シンジが言う。
シンジを見た。
シンジが私を見ていた。
「好きだよ。アスカ。」
シンジが微笑む。
「うん．．．」
シンジに微笑んだ。
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モニターのこちら側 Genesis 3:41 完

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