ぼんやりとテレビを見ていた。
「そう言えばさ、初詣、どうする？」
ミサトが口を開く。
ミサトの方を見た。
「ミサトは、いつも行ってるの？」
「あんまり。けど、３人で行くのもいいかな、って思って。」
苦笑いしながら、ミサトが言う。
「私、今まで行ったことないけど、すごく混んでるみたいじゃない？」
「それは、そうなんだけど．．．」
ミサトが、困ったような、訴えるような目つきをする。
軽くため息をつきながら、視線をテレビに戻して、口を開く。
「ここだと、どこに行くの？」
「松代っていう手もあるけど、やっぱり、善光寺かな。」
ミサトを見た。
「すっごい混んでそう。」
ミサトを見て言った。
「そうなんだけどー。」
「．．．」
「朝早くとか、夜とかなら、列が動かないっていうことはないから．．．」
「．．．」
シンジの方を見た。
「シンジも黙ってないで、何とか言いなさいよ。」
「え．．．うーん．．．」
「シンジは、行くわけ？」
「え．．．いや、アスカが行くなら．．．」
「．．．」
テレビの方を見た。
沈黙が流れた。

「ま、いいわ。行っても。」
テレビを見たまま、そう言った。
「ありがと。で、夜行く？それとも、朝行く？」
ミサトが答える。
「うーん、朝がいいかな。」
「じゃ、６時少し前ね。」
「はーい。」
少し嫌そうな声で答えた。
 

２０１９年１月１日

「．．カ、アスカ。」
肩が揺らされていた。
「ん．．．」
目を開けると、シンジが、私を見ていた。
「おはよう。」
シンジが言う。
「うん．．．あけましておめでとう、よね？」
「うん。今年もよろしく。」
「ふふ。今年もよろしく。」
体を起こして、シンジと短くキスした。
「結構、混んでるの？」
「まだ、列はできてないかな。」
「そう。じゃ、早く行かなくちゃ。部屋、出てて。」
「うん。リビングにいるから。」
「うん。」
シンジが部屋を出ていく。
パジャマのボタンを外し始めた。
 

メゾン松代 前

「地下鉄で行くんだ。」
歩きながら、口を開いた。
「うん。車で行っても止める場所ないから。」
ミサトが答える。
「そう。」
「ま、非常事態って感じね。」
「ふーん。」
「ま、他のところにいくのなら、逆に車が少なくて、いいんだけど。」
「そうなの。」
「うん。」
「ふーん。」
なんとなく呟いた。
 

善光寺 参道

「結構、混んでるわね。」
ゆっくりと足を動かしながら言った。
「そうね。ごめんね。」
ミサトが言う。
「別に、ミサトが悪いわけじゃないから。」
「そう．．．」
沈黙が流れた。
先の方に見える山門を、なんとなく眺めていた。

山門をくぐると、一挙に境内と言う感じになって、さらに人の動きが鈍くなった。
「何かあるの？」
ミサトに聞いてみた。
「本堂の下に通路があって、そこの本尊の下にあたるところに鍵があるの。それに触ると極楽往生できるっていうのが、ここの売りかな。」
ミサトが言う。
「極楽往生って？」
「死後、天国に行けるってこと。」
「ああ、宗教って、みんな、そういうこと言うのね。」
「そういうこと。」
「ふーん。」
ミサトから本堂の方に、視線を戻した。
 

本堂

普通にお参りをして、その後、お戒壇巡りをした。
真っ暗な通路を手探りで進んで、お錠前に触る。
外から見たら、随分、おかしなことしてるんだろうな。
そんな風に思った。

エヴァに乗ってたのも、エヴァのパイロットだったのも、ホントのこと教えられないで、命をかけて戦ってたのも、外から見たら、随分おかしかったのかもしれない。

そして、おもてに出た。
光がまぶしかった。

「触れた？」
ミサトが言う。
「うん。」
頷きながら答えた。
「シンジ君は？」
「ええ。」
「そう。じゃ、よかったかな。」
沈黙が流れた。
 

善光寺 城山公園方面出口

「何か食べようか。」
ミサトが言う。
「お腹ぺこぺこ。」
ミサトに答えた。
「けど、この辺じゃ食べられないし．．．」
「はい。」
シンジが、私達の前に袋を出した。
「何、これ？」
シンジの方を見た。
「おまんじゅう。参道で、のろのろ動いてるときに買っておいたんだ。
  ちょっと冷めてるかもしれないけど。」
「さすが、シンジ。こういうことには、抜け目がないわね。」
「なんか、それ、誉めてないように聞こえるよ。」
シンジが、ちょっと不機嫌そうな顔をする。
「あ、ごめん。そんなことないから。ね。
  それで、貰っていい？」
「うん。どうぞ。」
「ありがとう。うれしー。」
満面に笑みを浮かべながら、袋の中から、おまんじゅうを、一つ取出して、口に入れた。
「おいしー。
  なんか、このためだけでも、来たかいあったわ。」
「私も、貰っていい？」
ミサトが言う。
「はい。」
シンジが、ミサトの方に袋を差し出し、ミサトが、手を入れて、おまんじゅうを取出す。
「ありがとう。」
ミサトが、そう言って、おまんじゅうを口に入れた。
「ホントにおいしいわ。」
ミサトがシンジを見る。
「ありがと。」
ミサトが微笑みながら言う。
シンジが微笑んだ。
 

メゾン松代

うがいをして、手を洗って、ダイニングの椅子に腰を下ろした。
「少し待ってて。」
シンジが、キッチンに向かったまま言う。
「うん。」
シンジを見ていた。

「はい。」
城山公園に出ていた、お好み焼き屋さんで買ってきた、お好み焼きを切って、お皿にのせたものと箸が、私の前に置かれた。
「あ、ありがと。」
お好み焼きを箸で切って、口に入れる。
シンジを見た。
「うん。なかなか。」
「そう。」
ミサトが、お好み焼きを口に入れる。
「そうかも。」
シンジが、椅子に腰を下ろし、お好み焼きを口に入れる。
「一応、焼き直したかいはあるみたいだね。
  冷めないうちに食べたほうがいいよ。」
そう言って、シンジが、もくもくと食べていく。
視線をシンジからミサトに移したら、ミサトと目があった。
少し首を傾けるようにする。
ミサトが、手のひらを上に向けて、首を振った。
お好み焼きに視線を戻して、箸で一口大に切った。

リビングで、シンジと外を見ていた。
「ね。」
シンジに話しかけた。
「何？」
シンジが私を見る。
「．．．今年もよろしく。」
シンジが、虚をつかれたような顔をする。
「今年もよろしく。」
シンジが微笑んだ。
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モニターのこちら側 Genesis 3:40 完

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