「お疲れ様でした。」
警備員の人が言う。
「「さよなら。」」
警備員の人に言った。

商店街を通ると、クリスマスのイルミネーションが、そこかしこに飾られていた。

「クリスマスか．．．」
『何の思い出もないな．．．』
心の中で呟いた。
「クリスマス。何かする？」
シンジが言う。
「うん．．．」
そう呟いて、前を見たまま、歩いていた。
「少し飾り付けて、シャンパンを飲んで、七面鳥とか、ケーキとか食べる？」
「そう．．．そうだね．．．」
「そう．．．」
沈黙が流れた。
 

地下鉄 列車内

「アスカ？」
シンジが、少し大きな声で言う。
「何？」
シンジの方を見た。
「クリスマス、あんまり気が進まない？」
シンジが言う。
シンジの顔を見て、そして、前を向いた。
沈黙が流れた。

「何て言うか、あんまりピンと来ないの。ドイツにいたころに、パーティーっぽいのしたけど、なんだか．．．」
少し視線を下げた。
「．．．」
「なんだか．．．うん．．．そう．．．」
「．．．」
「私、一人で生きようとしてたから．．．子供じゃないって．．．早く大人になるって．．．」
「．．．」
「だから、なんだか子供扱いされてるみたいで、嫌だったの．．．嫌いだったの。」
「そっか．．．」
沈黙が流れた。
 

メゾン松代 ダイニング

「「「いただきます」」」
お味噌汁に口をつけた。

「ねえ、クリスマス、何かするの？」
ミサトが口を開く。
「それっぽい夕飯にはしますけど、それ以外は特に．．．」
シンジが、答える。
「そうなんだ。ま、いいかな。」
ミサトが、私を見る。
「．．．」
「アスカは、いいの？」
「うん．．．あんまり、思い入れないし。」
「．．．」
ミサトが、少し驚いたような顔をする。
「思い出もないから．．．」
「．．．そっか。」
ミサトが、少し悲しそうな表情で、視線を落とした。
 

１２／２４（月） 朝

「「「ごちそうさま」」」
シンジが、食器をまとめ始める。
私も、食器をまとめた。
「ね。」
ミサトが口を開く。
「ん？」
ミサトを見た。
「今日さ、夕飯食べにいかない？」
「クリスマスイブ？」
「うん。」
「予約とかしてあるの？」
「一応。駄目かな？」
シンジを見た。
シンジが頷く。
「いいわよ。」
「ＯＫ。じゃ、帰り、一緒に出ましょう？」
「うん。分かった。」
食器を持って立ちあがった。
 

戦略自衛隊 松代駐屯地

昼のシフト終了のベルが鳴った。
「それじゃ、お先に。」
マヤが、バッグを持って立ちあがる。
「お疲れ様。」
マヤが、部屋から出て行った。

英文法の参考書と問題集をバッグに入れる。
端末を落として、バッグを持って、立ちあがった。

階段を降りると、入り口で、シンジとミサトが待っていた。
「お待たせ。」
二人に微笑む。
「ううん。行きましょ？」
そう言ってミサトが微笑む。
「うん。」
シンジが微笑んだ。
 

ホテルメトロポリタン長野 スカイラウンジ「アポロ」

「いらっしゃいませ。」
ウェイターさんが言う。
「予約した葛城ですけど。」
「はい。承っております。こちらへ。」
ウェイターさんが歩き出す。
私達も歩き出した。

「こちらです。」
窓際の席に案内された。
椅子に腰を下ろした。
「お飲み物は、何に致しましょう？」
「私は、赤ワインで。」
ミサトが、視線を、ウェイターさんから、私達に移す。
シンジを見た。
シンジが、私に手を向ける。
メニューを見た。
「私は．．．グレープフルーツジュース。」
「僕は、ウーロン茶で。」
「前菜は、何に致しましょう？」
ミサトがメニューを見ている。
「じゃあ、かきの冷製、ホースラディッシュとクレソン風味。」
私もメニューを見た。
「じゃあ、私は、スクランブルドエッグの、うに添え。」
「僕は、ムール貝のスープ。」
「メインは、肉料理と魚料理、どちらに致しましょうか？」
「私は、肉料理で。」
ミサトが言う。
ウェイターさんが、私を見る。
「私も。」
「僕は、魚で。」
「デザートは、何に致しましょう？」
「．．．じゃあ、ジャスミンティーのフラン、メレンゲ仕立て。」
ミサトが言う。
メニューを見た。
「じゃあ、チョコレートのムース、フランボワーズ添え。」
「僕は、サヴァランのりんご添え、カルヴァドス風味。」
「食後のお飲み物は、コーヒーと紅茶がありますが。」
「私は、コーヒー。ホットで。」
ミサトが言う。
「私も。」
「僕は、紅茶をホットで。」
「レモンとミルクがありますが。」
「レモンティーで。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
ウェイターさんが、メニューを持って歩いて行った。

窓の外を見た。
たくさんの街の明かりが瞬くのをバックに、雪がちらちらと降っていた。
「綺麗ね。」
外を見ながら呟いた。
「そうだね。」
シンジが言う。
ミサトとシンジを見た。
二人共、窓の外を見ていた。
沈黙が流れた。

「お待たせしました。」
ウェイターさんが、私達の前に前菜を置いていく。
「ごゆっくりどうぞ。」
ウェイターさんが、歩いて行った。
「食べましょう？」
ミサトがウィンクする。
「うん。」
フォークを取って、うにをすくい、口に入れた。
「おいしい。」
思わず、微笑んで、ミサトを見た。
ミサトも微笑んでいた。
 

「お待たせしました。」
ウェイターさんが、私達の前にデザートを置いていく。
「失礼します。」
そう言って、ウェイターさんが、シンジのデザートに、何かをかけて火をつけた。

やわらかな炎が、ゆらゆらと揺らめくように燃えて、そして消えた。

「ごゆっくりどうぞ。」
ウェイターさんが、歩いて行った。
「それ、何？」
シンジに聞いた。
「忘れちゃった。後で、聞いてみるよ。」
「うん。」
「食べる？」
「いいの？」
「いいよ。」
「ありがと。」
思わず、微笑んでいた。
 

スカイラウンジ「アポロ」前

「ごちそうさま。」
ミサトに言った。
「ごちそうさまでした。」
シンジが言う。
「ううん。誕生日のプレゼント、色々もらったし。ま、ちょっと痛いけどね。」
ミサトが苦笑する。
「ふふ。じゃあ、今月は、節約モードね。」
「そうね。」
ミサトと微笑んだ。
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モニターのこちら側 Genesis 3:39 完

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