「惣流・アスカ・ラングレーです。よろしく。」
「あんた、バカぁ？」
「チャ〜〜ンス。」
「だから、あたしを見て！」
「違う！こんなの私じゃない！」
  ．．．

プラグスーツで港を、誰かを探しながら歩いている私。
汽笛の音。
遠くに人影を見つけて、そっちに歩き出そうとした。
突然、群集が現れて、もみくちゃにされ押し流されていく私。
「あ、助けて！助けて、加持さん！」

「アスカは、まだ、子供だからな。」
歩いていく加持さんの向こうにシンジが見えた。
「なんで、あんたが、そこにいんのよ！」
「何もしない！あたしを助けてくれない！抱きしめてもくれないくせに！」
「誰も。誰も。誰も！」
「だから、あたしを見て！」

「さびしいの？」
「．．．」
「さびしいの？」
「違う！
  そばにこないで！
  あたしはひとりで生きるの！」

ああ．．．んん．．．
ね、あたしのこと好き？
「誰にもたよらない！」

ん．．．は．．．はあ．．．
ほんとに、あたしのこと好き？
「ひとりで生きていけるの！」

「嘘ばっかり。」
「いやああああああああああああああああああ！！！！！！！！！！！！！！」
 

はっ．．．はあ．．．はあ．．．はあ．．．
目の前に布団、そして、いつもの私の部屋が見えた。
「夢．．．か．．．」
ひどく汗をかいていた。
右手で額の汗を拭う。
カーテンから光が漏れて、鳥が鳴いているのが聞こえた。

ダイニングを通ると、シンジが何か作っていた。
「おはよう。」
シンジが言う。
「．．．」
そのまま、バスルームに行った。

お湯に浸かって、天井を見ていた。

お風呂から出て、ダイニングに行くと、テーブルにメモと食パンが置いてあった。
『先に行きます。』
そう書かれたメモを置いて、オーブントースターにパンを入れて、ダイヤルを回す。
キッチンの鍋を見ると、シチューがはいっていたので、スイッチを入れた。

パンを食べて、シチューを飲んだ。

リビングのソファーに倒れこむように座って、窓から外を見た。
冬の透き通った空が広がっていた。
冬の陽射しが、窓から差し込んで、柔らかで暖かい感じがした。

ふと、時計を見ると１０時近かった。
「行こうかな．．．」
そう呟いて、ソファーから立ちあがった。
 

戦略自衛隊 松代駐屯地 ２５号ビル ３３号室

ドアを開ける。
マヤが私を見て、少し微笑んで、端末に向き直った。
ドアを閉めて、机に荷物を置いた。
端末を立ち上げて、ミサトにメールを打った。
 

何度目かの昼休みを告げるベルが鳴った。
「行く？」
マヤの方を見ると、マヤが私を見ていた。
「うん。」
マヤに微笑む。
「じゃ、行こう。」
マヤが微笑んだ。

階段を降りていくと、建物の入り口に、シンジ達が待っていた。
「お待たせ。」
シンジが微笑む。
「じゃ、行こっか。」
そう言って、ミサトが歩き出した。

「大丈夫？」
ミサトが私に聞く。
「うん。大分、気分よくなったから。」
「そう。調子悪いの？」
「うん．．．あのね．．．」
声を低めて、そう言いながら立ち止まった。
ミサトとシンジが立ち止まって、私を見る。
マヤ達が歩いていった。
「私、使徒に精神攻撃をかけられたことあったじゃない？」
「うん。」
ミサトが頷く。
「あの時の夢をみちゃって．．．」
「．．．」
「ちょっと、何もしたくなくなっちゃって．．．」
「そう．．．診てもらわないで大丈夫？」
「うん．．．そう．．．分かんない。診てもらったほうがいいかもね。」
「そう．．．」
ミサトがシンジを見て、私を見た。
「まあ、少し様子を見ましょうか。初めてだし。」
「うん。」
「あ．．．２度目か。」
ミサトが、悪戯っぽい口調で、けど、真顔で私を見ながら言う。
「そうね．．．」
「ま、とりあえず、お昼食べに行きましょう？」
ミサトが、微笑みながら言う。
「そうね。行きましょう？」
シンジを見た。
シンジが頷いた。
 

昼のシフト終了のベルが鳴る。
「それじゃ、お先に。」
立ちあがりながら、マヤが言う。
「お疲れ様。」
マヤが部屋を出ていった。
「さてと．．．」
国語の参考書と問題集を閉じて、バッグに入れた。

階段を降りていくと、入り口にシンジが立っていた。
「お待たせ。」
シンジに微笑む。
「ううん。」
シンジが微笑んだ。

二人で、通路を歩いていく。
「今日さ、誕生日だよね？」
シンジが口を開いた。
「え．．．あ、そうだね。あんな夢見たから、すっかり忘れちゃってた。」
「これ。」
シンジが、私に小さな箱を手渡す。
「あ．．．ありがとう。開けていい？」
「いいよ。」

包みを開けると、ブルーの石のついたイヤリングが入っていた。
右の耳につけてみる。
「ね、似合う？」
シンジに見せるようにして、右手で、軽く髪を掻き上げるようにした。
「似合うよ。アスカ。」
「ふふ。ありがと。」
シンジに微笑んだ。
もう一つを左の耳につけた。
 

地下鉄内

シンジと並んでつり革につかまっていた。
窓に、シンジと私が並んで映っている。
シンジの耳に口を近づける。
「ね？」
シンジが、私の耳に口を近づける。
「何？」
「私のこと好き？」
「好きだよ。」
「本当に、私のこと好き？」
「うん。」
「そう．．．」
窓に映っているシンジを見ていた。
 

メゾン松代

シンジがドアの鍵を開ける。
ドアを開けて中に入った。
シンジが、靴を揃えている。
シンジが、立ちあがって、私を見る。
「ん、何？」
「ううん。」
もたれるようにして、軽く、シンジに抱き付いた。
「アスカ．．．」
「あの頃、私、一人で生きてくって決めてたの．．．」
「．．．」
「けど、一人ではいられない私がいて．．．」
「．．．」
「ずっと忘れてた．．．ううん、思い出さないようにしてたの．．．」
「．．．」
「けど、使徒に見せられちゃって．．．」
「．．．」
「けど、許せなかったの．．．」
シンジから体を離して、シンジを見た。
「私．．．」
シンジが私を抱きしめる。
「アスカ．．．」
「．．．」
「好きだよ。アスカ．．．」
「うん．．．」
シンジの腕が緩んで、シンジが、私を見つめる。
「．．．」
「好きだよ．．．」
シンジの唇が、私の唇を塞いだ。
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モニターのこちら側 Genesis 3:37 完

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