「「おはようございます。」」
「おはようございます。」
警備員の人にＩＤカードを見せて中に入る。
敷地内をしばらく歩いて、建物に入った。
「それじゃ。また後で。」
シンジが言う。
「うん。」
シンジに微笑んだ。

階段を上がって、３３号室に入る。
「おはよう。」
マヤが、私の方を見て言う。
「おはよう。」
マヤに微笑んだ。

「毎日、暑いわね。」
バッグを机に置きながら、マヤに言った。
「そうね。来るだけで疲れちゃうわ。」
モニターから視線を外してマヤが言う。
「そうね。」
椅子に腰を下ろし、端末のスイッチを入れた。

「そう言えば、昨日、リツコに会ったわよ。」
バッグから参考書と問題集を出しながら言った。
「そう．．．」
マヤが言う。
「マヤ、リツコと仲良くなかったっけ？」
「え．．．うん．．．そうかな．．．」
マヤが歯切れの悪い言い方をした。
「そう．．．」
マヤを見た。
マヤが、モニターを見ていた。
沈黙が流れた。

マヤって、リツコと仲悪いのかな．．．
そう思った瞬間、頭の中に、あの時、レイに見せられた映像の一部が流れた。

「ＡＴフィールドが．．．
  みんなのＡＴフィールドが消えていく．．．」
「これが答えなの？
  私の求めていた．．．」
「！！」
「センパイ。」
「．．．マヤ。」
「センパイ、センパイ、センパイ、センパイ、あっ。」

思わず、マヤの顔を、まじまじと見た。
マヤが私を見る。
「どうかした？」
マヤが微笑む。
「え．．．ううん。なんでもない。」
無理やり笑顔を作った。
「そう．．．」
マヤが立ちあがって、私の方に歩いてくる。
「けど、なんだか、調子悪いみたい。大丈夫？」
マヤが私の額に手を当てた。
「．．．」
マヤが手を離す。
「熱は無いみたいね。今日、あの日？」
「あ、ううん。大丈夫だから。ありがとう。」
「そう。調子悪かったら、無理しないで、医務室に行ったほうがいいわよ。」
「ええ。心配させちゃって、ごめん。」
「ううん。」
マヤが微笑みながら、席に戻り、端末に向かい始めた。
メールをチェックしてから、端末をロックして、部屋を出た。
 

４２号室前

コンコン。

ミサトの部屋のドアを叩いた。
「はい。」
インターホンからミサトの声がした。
「ミサト？」
「あら、珍しいわね。どうしたの？」
「ちょっといい？」
「いいわよ。開いてるから、入って。」
ドアを開けて、部屋に入った。

「どうしたの？」
机に近づくと、私を見て、ミサトが言った。
「うん．．．」
椅子に腰を下ろした。
「．．．」
ミサトが私を見た。
「マヤってさ、リツコと仲悪いのかな。」
「はあ？」
ミサトが、虚を突かれたように、目を丸くして、私を見る。
「．．．」
ミサトを見た。
「うーん。どっちかって言うと、仲良いんじゃないの？」
「やっぱりそう？」
「なんで、そんなこと聞くわけ？」
「．．．」
沈黙が流れた。

「昨日、リツコに会ったじゃない。」
気を取りなおして、説明を始めることにした。
「ええ。」
「マヤに、そう言ったんだけど、なんか反応が芳しくなくて。」
「．．．」
ミサトが私を見ている。
「リツコと仲良くなかったっけ？って聞いても、反応が芳しくないのよね。」
「そう．．．」
「それでね。」
「．．．」
「私が、あそこで、レイに会ったの、言ったことあったっけ？」
「どうだったかな。忘れちゃったわ。」
ミサトが、左上の方を見て言う。
「うん、まあ、会ったのよ。それで、あのときの一部始終を見せられたんだけど．．．」
「．．．」
「皆が、ＬＣＬ化するとき、その人の好きな人が、その人の前に現れて、それで、ＬＣＬ化していったの。」
「そうだったんだ。」
「うん。それで、マヤの前には、リツコが現れてたわ。」
「そう．．．」
「．．．」
ミサトを見た。
ミサトが私を見ていた。
「まあ、私もそうだけど、あの世界で、イヤなもの見ちゃったんじゃないの。マヤも。」
「あ、そういうことか。」
「多分ね。」
「じゃあ、大丈夫かな。」
「大丈夫？何が？」
「え．．．うん．．．」
「．．．」
「マヤの前にリツコが現れてたのを思い出して、思わず、マヤをまじまじと見たら、マヤが変に思ったみたいで、席を立って、私に近づいてきて、額に手を当てられて、熱があるかみられちゃったんだけど．．．」
「それ、考えすぎ。」
ミサトが、笑いながら言う。
「えー、けどさあ。」
口をすぼめて、不満そうに言ってみた。
「まあ、少し様子を見てみたら。今まで、問題なかったんでしょう？」
「それはそうだけど。」
「ま、私は、マヤじゃないから、分からないわ。それに、そういう意味では、私の方が危ないかもよ。」
ミサトが、私を見ながら言う。
「今でも、おかしくなることある？」
ミサトを見ながら言った。
ミサトが、手を首の後ろに回して、背中を伸ばすようにしながら、背もたれに頭をのせる。
「時々ね．．．」
ミサトを見る。
沈黙が流れた。

椅子から立ちあがり、ミサトの脇に立った。
ミサトが私を見上げる。
「ミサト．．．」
「ママ．．．」
ミサトの額に左手を置く。
右手で、ミサトの髪を梳くようにした。
ミサトが目を閉じる。
沈黙が流れた。

ミサトから手を離した。
ミサトが目を開け、頭を戻し、軽く俯いた。
「ありがとう。」
ミサトが呟く。
「ううん。」
ミサトを見ながら呟いた。

「それじゃ、少し様子を見てみることにするから。」
ミサトを見たまま言った。
「それがいいと思う。」
ミサトが私を見る。
「うん。それじゃ。
  ありがとう。」
ミサトに言った。
「うん。それじゃ。
  ありがとう。」
ミサトが微笑む。
ミサトに微笑んだ。
 

何度目かの昼休みを告げるベルが鳴った。
「行こっか。」
マヤが言う。
「ええ。」
マヤの方を見た。

階段を降りていくと、建物の入り口に、シンジと青葉、日向、そしてミサトが待っていた。
「お待たせ。」
口を開いた。
シンジが微笑む。
「じゃ、行こっか。」
ミサトが、そう言って歩き出した。
 

カフェテリア

空いているテーブルにトレイを置き、椅子を引いて、腰を下ろした。
前の椅子に、シンジが腰を下ろす。
「食べよう？」
シンジに言った。
「うん。」
シンジが、微笑んだ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
モニターのこちら側 Genesis 3:35 完

モニターのこちら側 Genesis 3:36へ

Evaメニューに戻る