トイレへ行く途中、ダイニングを通ると、シンジが、何か作っていた。
「おはよう、シンジ。」
「おはよう。」
シンジが、振りかえらずに言った。

顔を洗って、軽く髪を梳かしてから、ダイニングに戻ると、シンジが、トーストを食べていた。シンジの前に、スープとベーコンエッグが置かれていたので、そこに腰を下ろした。
「食べていい？」
シンジを見た。
「うん。」
シンジが、口を動かしながら言った。
ベーコンを、ナイフで切って、口に入れた。

「ミサトは？」
トーストを齧りながら、聞いた。
「そろそろ起きてくるんじゃない？」
「そう。」

「おはよう。」
そう言って、ミサトが、ダイニングに入ってきた。
「おはようございます。」
シンジが言う。
「おはよう。」
ミサトに言った。

ミサトがトイレから戻ってきて、私の隣りに座る。
シンジが、スープとベーコンエッグの皿をミサトの前に置いた。
「ありがとう。」
シンジが、椅子に腰を下ろす。
ミサトが、スープに口をつけた。

「いつごろ行くの？」
シンジに聞いた。
「洗濯物、干してからかな。」
「１０時くらい？」
「そうかな。」
「ミサトも行くの？」
ミサトを見た。
「ええ。」
ミサトが、口を動かしながら言う。
「そう。」
「アスカも会う？」
「そうねー。けど．．．」
シンジを見た。
「なんだったら、待ってもいいわよ。」
ミサトが口を開く。
「どうする？」
シンジに聞いた。
「皆で会おうか。」
シンジが言う。
「だって。」
ミサトを見た。
「了解。」
ミサトが、トーストを齧った。
 

メゾン松代 駐車場

ミサトが、キーを開ける。
「乗って。」
ミサトがドアを開け、ルノーに乗りこみながら言う。
シンジがドアを開け、座席を倒して、私を見る。
「ありがと。」
後部座席に乗り込んだ。
シンジが、座席を立て、助手席に乗り込み、ドアを閉める。
「いい？」
ミサトが、バックミラー越しに、シンジと私を見る。
シンジが、シートベルトを締めた。
「はい。」
「ＯＫ。」
ルノーが走り出した。
 

第２新東京市拘置所

３人で、受付の前の長いすに腰掛けていた。
「あんまり来る人いないのかな。」
シンジを見て、囁いた。
「そうかもしれないね。」
シンジが囁く。
沈黙が流れた。

「碇シンジさん、惣流・アスカ・ラングレーさん。第１面会室へどうぞ。」
「「はい。」」
立ちあがって、ミサトを見た。
「ちょっと待ってて。」
「ええ。」
ミサトが微笑んだ。

第１面会室のガラスの前に座っていると、奥のドアが開き、司令が看守に連れられてやってきた。
司令が、ガラスの向こうの椅子に腰を下ろし、シンジと私を見る。
「体調は、どう？」
シンジが、口を開く。
「特に問題ない。」
司令が、シンジを見て呟く。
「そう。」
沈黙が流れた。

「今は、どうしている。」
司令が口を開く。
「ミサトさんと、アスカと、一緒に住んで、それで、松代駐屯地で、資料の整理をしてる。けど、別にやることはないんだ。だから、勉強してる。」
「そうか。」
司令が、私を見る。
「いつもシンジが、世話をかけているようで、済まない。」
「あ．．．そんなことないです。家事は、シンジに任せっきりだし。こちらこそ、いつもすみません。」
「これからもよろしく。」
司令を見た。
司令が、微笑んだような気がした。

「大学には行けそうか？」
司令が、シンジを見る。
シンジが、司令を見た。
「．．．」
「．．．」
「よく分からないけど、通信制なら行けるんじゃないかな。」
「そうか。」
「何故？」
「俺も行ったから。」
「．．．」
「それだけだ。」
「そう。」
沈黙が流れた。

「時間です。」
看守が言った。
「体に気をつけて。」
シンジが言う。
「ああ。」
そう言いながら、司令が立ちあがる。
軽く頭を下げた。
司令が頷く。
司令が、看守に付き添われて、ドアから出ていった。
シンジが立ちあがり、事務官に軽く頭を下げ、ドアの方へ歩き出す。
私もそうした。
 

受付に戻った。
ミサトが、私達を見る。
「お疲れ。」
「．．．」
ミサトに微笑んだ。
ミサトの隣りに腰を下ろす。
「そろそろ？」
「多分ね。」

「葛城ミサトさん、碇シンジさん、惣流・アスカ・ラングレーさん。第５面会室へどうぞ。」
「はい。」
ミサトが立ちあがる。
私達も立ちあがった。

第５面会室のガラスの前の椅子に座っていると、奥のドアが開き、リツコが、看守に連れられてやってきた。
リツコが、ガラスの向こうの椅子に腰を下ろす。
「久しぶり。元気してた？」
ミサトが言う。
「ええ。ここも、そんなに悪くはないわ。
  今日は、３人揃って来たの？」
リツコが、微笑みながら言う。
「ええ。シンジ君とアスカが、司令に会うっていうから。」
「．．．そう。」
リツコが、左下に視線を落とす。
ミサトが、ほんの少し唇をかみ締めるような表情で、リツコを見ていた。
沈黙が流れた。

「指令、元気だった？」
リツコが、シンジを見て、言う。
「ええ．．．」
シンジが、ほんの少し辛そうな顔をして言う。
「そう．．．」
リツコが、左下に視線を落とした。
沈黙が流れた。

「時間です。」
看守が言った。
「ごめんね。」
リツコが、顔を上げ、作ったような笑みを浮かべて言う。
「ううん。私こそ、ごめん。」
ミサトが、申し訳なさそうな顔をする。
リツコが微笑んで、立ちあがり、看守に付き添われて、ドアから出ていった。
ミサトが、立ちあがり、事務官に頭を下げ、ドアの方へ歩き出す。
シンジを見た。
シンジが頷く。
私達もそうした。

拘置所の建物を出て、車に歩いていく。
「副指令って、会いに行ってる？」
ミサトを見て、言った。
「ううん。そうね。時々、会いに行ったほうがいいかな。」
ミサトが、前を見たまま言う。
「ミサトも、あんまり付き合いなかったの？」
「まあね。」
「そうなんだ。」
沈黙が流れた。

「ミサト？」
前を見たまま呟いた。
「何？」
ミサトが言う。
「ごめん。」
「．．．」
「．．．」
「アスカのせいじゃないわ。
  強いて言えば、私と、リツコのせいね。アスカの気にすることじゃないわ。」
ミサトを見た。
「ごめん。」
ミサトが呟いた。
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モニターのこちら側 Genesis 3:34 完

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