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「手、繋ぐの嫌？」
シンジに聞いてみた。
「え？」
シンジが、私の方に首を回す。
「．．．」
シンジを見ていた。
シンジが、目を逸らし、前を見る。
「そんなことないよ。
ちょっとはずかしい感じがしただけだから。
ごめん。」
シンジが、前を見たまま小さく言う。
「そう。」
シンジから手を離した。
シンジが、立ち止まって、私の方に振りかえる。
「何？」
「アスカは、手を繋ぐの好き？」
「．．．」
シンジから目を逸らして、考えた。
シンジを見る。
「好きかな。なんとなく。
そういえば、はじめてだっけ？」
「うん。
繋ごうか。」
「．．．」
「いい？」
「いいよ。」
シンジが、私の手を握る。
シンジに微笑んだ。
「いこう。」
シンジが微笑む。
「うん。」
シンジと歩き出した。
マットに腰を下ろした。
シンジが、となりに腰を下ろし、仰向けになった。
シンジを見ていた。
「疲れた？」
シンジが目を閉じていた。
「．．．ほんのちょっと。」
「そう。」
「夏の浜辺は、気持ちがいいね。」
シンジが言う。
「そうね。」
沈黙が流れた。
私も、仰向けになって目を閉じていた。
「中学の時に．．．」
シンジが口を開く。
「ん．．．」
ぼーっとしていたので、なんとなく、相槌を打った。
「修学旅行で、沖縄に行ったじゃない。僕達は行けなかったけど。」
「うん。」
「沖縄の浜辺も、こんな感じかな。」
「沖縄は、海の色が、もっと緑っぽい感じだったわよ。」
「そうなんだ。」
「あと、もっと暑いんじゃないかな。」
「じゃあ、６月とか、９月に行くといいかもね。」
「そうね。」
「第３新東京市も、海が近いんだよね。」
「そうね。」
「小田原だっけ。」
「そうだったかな。」
「色々、行ってみたいところあるな。」
「．．．」
「アスカは、どこか行きたいところある？」
「．．．そうね．．．」
少し考えた。
沈黙が流れた。
「シンジって、第３新東京市に来る前は、どこにいたの？」
ふと思いついて聞いてみた。
「第２新東京市から少し離れた所。松代よりは田舎かな。それが、どうかしたの？」
「え．．．ううん。別に。」
「そう。」
「行きたいところを考えてて、ドイツの家とか、思い出したから。」
「．．．そっか。」
「．．．」
「義理のお母さんがいるんだっけ？」
「うん。そうなんだけど．．．まあ、色々、都合があるから、そのうちにね。」
「そうだね。」
「．．．」
沈黙が流れた。
「私達って、何時まで、監視されるのかな。」
なんとなく、呟いた。
「何時までだろうね。」
「一生かな。」
「そうかもしれないね。」
「．．．」
「．．．」
「仕方ないのかな。」
「．．．」
シンジの手のひらが、私の手のひらに乗った。
沈黙が流れた。
「お腹すかない？」
シンジが口を開く。
「．．．すいた。」
「じゃあ、ちょっと海に入って、それで食べに行こう。」
「うん。」
シンジが、立ちあがって、私の方に手を伸ばす。
シンジの手を取って、立ちあがった。
シンジと、足がつくかつかないか、というくらいのところまで泳いでいき、そして、帰ってきた。
「結構、疲れるね。」
シンジが言う。
「そうね。浮き輪とかで、休めたほうがよかったかも。」
「そうだね。」
シンジの手を掴んだ。
海の家
「はい、ラーメンとおでん。お待たせしました。」
おかみさんが、ラーメンとおでんを、お盆に載せてきた。
「あ、はい。」
シンジが、器を取り、私の前に置く。
「どうもすみません。」
シンジが、自分の前に器を置いた。
「どうもすみません。ごゆっくりどうぞ。」
おかみさんが、歩いていく。
「食べようか。」
シンジが、割り箸を渡しながら言う。
「うん。」
シンジが、割り箸を取る。
「「いただきます。」」
シンジが、はんぺんに箸をつける。
シンジが、半分に切るのを見ていた。
「なんか、思い出すわね。」
なんとなく、口を開いた。
「何を？」
「シェルターでの食事。」
「ああ。そうだね。
けど、そう言えば、ラーメンもおでんも食べなかったね。」
「そう言えばそうね。真っ先に食べそうなメニューだけど。」
「賞味期限が長かったのかな。」
「クス。そうかもね。」
シンジが、ラーメンを啜る。
私もそうした。
「おでん、おいしいね。」
「そうだね。他に、何か食べる？」
「え？
うーん。」
壁のメニューに目を移した。
焼きイカ、焼きとうもろこし、氷イチゴ、氷あずき．．．
「とりあえずいいわ。」
「そう。」
「それで、海、また入る？」
「どうしようか。」
「なんか、もう、いいかなっていう気になってきたんだけど。」
「それじゃ、もう少ししたら着替えて帰ろうか。」
「うん。そうする。」
着替えて、お店の方に戻ると、シンジが、テーブルの脇に座って、海を見ていた。
「お待たせ。」
「ううん。」
シンジが、私を見て微笑む。
シンジの隣りに座って、海の方を見た。
「お待たせしました。」
声の方を見ると、おかみさんが、氷あずきを載せたお盆を持っていた。
「あ、すみません。」
シンジが、氷あずきを受け取る。
「ごゆっくり。」
おかみさんが、歩いていった。
スプーンが二つ付いていた。
「食べない？」
「一緒に？」
「一人じゃ多いかと思って。」
「クス。そうね。いいよ。」
氷あずきを見た。
スプーンを一つ取って、下の方から、あずきと氷をすくい、口に入れた。
「おいしい。」
シンジを見る。
シンジが微笑んで、私を見ていた。
「．．．カ。アスカ。」
目を開けると、前の座席が見えた。
シンジの肩に寄りかかっている。
起きあがって、シンジを見た。
「着いたよ。長野。」
「うん。」
シンジが、立ちあがる。
私も立ちあがった。
「夕飯、何にしようかな。」
階段を降りながら、シンジが言う。
「そうめんとか。」
「ごはん物がよくない？お昼、ラーメンだし。」
「そっか。」
「カレーにしようか。」
「カレー？ 海の家にもあったよ？」
「嫌？」
「ま、いいかな。」
「ちょっと、疲れてるから、簡単なものってことで。」
「フフフ。いいよ。」
「ありがと。」
シンジが微笑んだ。
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