目覚ましの音が響いていた。

「ん．．．」

手を伸ばして、目覚ましを止めて、体を起こす。
目をつぶったまま、息を吸いこむ。

「はーーーー。」

少し重い感じのする目を開けた。
「朝か．．．」
布団から出て立ちあがった。

トイレに行く途中、ダイニングを通ると、シンジが、何か作っていた。
「おはよう、シンジ。」
「おはよう。」
シンジが、ガス台の方を向いたまま答えた。

トイレから出て、洗面台の鏡の前に立つ。
髪がぼろぼろになっていた。
暑かったしなー。
ちょっとシャワー浴びちゃおうかな．．．

タンクトップとジョギパン、パンティーを脱いで、浴室のドアを開けた。
シャワーヘッドを持ち、蛇口をひねって、少し暖かくなるのを待った。
シャワーヘッドを上の止め具にかけ、シャワーを浴びる。

手で、頭から顔、肩、胸、お腹、股、背中、お尻にお湯を流し、そして、シャワーヘッドを持って、足にお湯をかけた。

シャワーを止め、シャワーヘッドを止め具にかける。

「ふーー。」

タイルの床を見ながら、なんとなく微笑んだ。
 

部屋で髪を乾かしてから、ダイニングに行くと、シンジが、パンを食べていた。
シンジの向かいの席に、スクランブルエッグの皿が置いてあったので、そこに腰を下ろす。
「いただきます。」
シンジを見ながら言った。
「うん。」
シンジが、私を見て言った。
箸を取り、スクランブルエッグを、ひとかけら口に入れた。

「ミサトは？」
パンを齧りながら言った。
「そろそろ起きてくるんじゃない？」
シンジが、新聞を眺めながら言う。
「新聞、面白い？」
シンジを見ながら言った。
シンジが私を見る。
「見る？」
シンジが、新聞を閉じながら言う。
「ん．．．いいわ。漢字読むの、まだ、ちょっと大変だから。」
漢字は、拘置所にいた頃から、かなり勉強したので、漢字のせいでテストの点が悪いということはなくなっていた。しかし、それでも、ドイツ語や英語と比べると、読み書きは面倒だった。
「そう。ごめん。」
シンジが、畳んだ新聞をテーブルの上に置いた。
「どうしたの？」
シンジが私を見る。
「うん。なんとなく．．．ね。」
「そう。」
シンジに微笑む。
シンジが、私に微笑んだ。

「おはよう。」
ミサトが、眠そうに言いながら、ダイニングに入ってきた。
「おはようございます。」
シンジが言う。
「おはよう。」
ミサトに言った。

ミサトが、トイレから戻ってきて、私の隣りに腰を下ろす。
シンジが、水の入ったコップと、スクランブルエッグの皿をミサトの前に置いた。
ミサトが、水を飲む。
「あー、水がおいしい。」
ミサトが、微笑む。
「昨日も、飲んだの？」
飲んでいた紅茶のカップを置いて言う。
「ちょっちね。」
そう言いながら、ミサトが、スクランブルエッグを口に入れた。
 

部屋で支度を終えて、ダイニングに行くと、シンジが椅子にかけていた。
「ミサトは？」
シンジの隣りの椅子に腰を下ろす。
「まだみたい。」
シンジが、私の方を見て言う。
「そう。
  二人で行っちゃおっか。」
「それでもいいけど．．．」
シンジが、立ちあがって、ミサトの部屋の前に歩いていく。
「ミサトさん？」
「なーに、シンジ君？」
「アスカと、先に行っていいですか？」
「いいわよ。ただ、遊びに行っちゃうのは、後々面倒だから止めてね。」
「はい。」
「行ってらっしゃい。」
シンジが、歩いてくる。
「いいって。」
シンジが微笑む。
「うん。」
鞄を持って立ちあがった。
 

地下鉄 車内

つり革を掴んで、シンジと並んで立っていた。
窓に、シンジと私が映っている。
「ね。」
シンジの耳に口を寄せて言う。
「何？」
シンジが私の耳に口を寄せて言う。
「私達、どんな風に見えるのかな。」
「カップルとか？」
「．．．シンジも言うようになったわね。」
「ごめん。」
「ううん。」
沈黙が流れる。
窓ガラスを通して、シンジを見ていた。
 

戦略自衛隊 松代駐屯地

「「おはようございます。」」
「おはようございます。」
警備員の人にＩＤカードを見せて中に入る。
敷地内をしばらく歩いて、建物に入った。
「それじゃ。また後で。」
シンジが言う。
「うん。」
シンジに微笑んだ。

階段を上がって、３３号室に入る。
「おはよう。」
マヤが、私の方を見て言う。
「おはよう。」
マヤに微笑んだ。

「暑いわね。」
自分の席に歩きながら、なんとなく口を開いた。
「ホント。けど、前みたいに、一年中じゃないし。」
マヤが、端末を見たまま言う。
「ま、それはそうかな。けど、季節が変わると、色々、調子が崩れて大変。」
「そうね。まあ、すべてよしって言うふうには、なかなかうまくいかないわよ。」
「そうね。」
沈黙が流れた。
 

何度目かの昼休みを告げるベルが鳴った。
私達には、最後の時間帯が割り当てられていた。
「行こっか。」
マヤが言う。
「ええ。」
マヤの方を見た。

階段を降りていくと、建物の入り口に、シンジと青葉、日向、そしてミサトが待っていた。
「お待たせ。」
口を開いた。
シンジが微笑む。
「じゃ、行こっか。」
ミサトが、そう言って歩き出した。
 

カフェテリア

空いているテーブルにトレイを置き、椅子を引いて腰を下ろす。
シンジが、トレイを置き、椅子に腰を下ろした。
「食べよう。」
「うん。」
焼き魚に箸を付けた。

「ね。」
お味噌汁の御椀を置いて、口を開いた。
「何？」
シンジが私を見る。
シンジから軽く目を逸らした。
「今度、どこか行かない？」
「どこかって？」
「．．．どこか。」
シンジを見た。
シンジが、私を見て、そして、視線を外した。
「そう．．．」
沈黙が流れた。

「泊まりじゃないよ。」
シンジから視線を外して言う。
「．．．うん。」
シンジを見た。
シンジが、顔を上げて、外を見ていた。
「．．．」
「夏か．．．」
シンジが呟いた。
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モニターのこちら側 Genesis 3:30 完

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