生きてるみたいね．．．

どういうこと？

これから、どうする？
 

しばらくしてシンジが泣き止んだ。
「シンジ。」
シンジが私を見る。
「．．．」
「どいてくれる？」
「．．．」
シンジが立ち上がり、私の脇に腰をおろす。
体を起こして、シンジを見た。

「なんで、私の首を絞めたわけ？」
シンジが私を見る。
シンジが俯いた。
「アスカが僕を殺そうとしたんだ。」
「．．．」
何言ってんの、こいつ。
「僕を助けてって．．．」
「．．．」
「一人にしないでって．．．」
「．．．」
「見捨てないでって．．．」
「．．．」
「殺さないでって言ったんだ．．．」
「．．．」
「だけど、アスカは、『イヤ』．．．って．．．」
沈黙が流れた。

「それ、いつの話？」
「．．．」
「．．．」
「ダイニングで．．．エヴァの中かな．．．分からない．．．」
「そう．．．」
「．．．」
海に視線を移した。
私が殺されるのを繰り返してた頃の話かしら。
「私は、シンジにそんなこと言った覚えはないわ。」
「．．．」
「ひとつに溶けてた時に、夢でも見たんじゃないの？」
「．．．」
「．．．」
「そう．．．そうかもしれない．．．」
「．．．」
「けど、アスカは．．．」
「何？」
「そんな風に思ってるんじゃないの？」
「．．．」
思わず、シンジを見た。
シンジが私を見る。

「私は、量産機に何度も殺されたわ。」
「．．．」
「その後、レイが私を殺そうとした。」
「！」
「その後、私がレイを殺そうとしたら、ここに来てたわ。」
「．．．」
「シンジの事なんて、ほとんど考えてなかった。」
「．．．」
「それどころじゃなかったのよ。」
「．．．」
「．．．」
シンジが海を見る。
「そう．．．」
沈黙が流れた。

「一つになってる時、シンジは、何を見たの？」
海を見ながら言った。
「何って．．．」
「．．．」
「小さい頃のこととか．．．」
「．．．」
「ミサトさんの事とか．．．」
「．．．」
「アスカの事とか．．．」
「．．．」
「その後、綾波と話してた。」
「そう。」

海を見ながら言った。
「他に誰もいないのかしら？」
「分からない。」
「そう．．．」
「綾波と母さんは、他の人も戻ってくると言ってたような気がする。」
「そう言えば、そうだったわね。」
「？」
「．．．」
「なんで知ってるの？」
「ああ．．．ここに来る前に、シンジとシンジのママが話してるのが見えたのよ。」
「そう．．．」
沈黙が流れた。

ここにいても仕方ないわよね。
そう思って、おもむろに立ち上がった。
「アスカ？」
シンジを見た。
シンジが私を見上げる。
「何？」
「どこか行くの？」
「ええ。だって、ここにいても、仕方ないでしょ？食べ物もないし。」
「そうだね。」
「だから、食べ物を探しにいくの。」
「そう．．．」
シンジが俯く。
沈黙が流れた。

しょうがないな。
「あんたは、どうするわけ？」
「え？」
「行くの？行かないの？」
「あ．．．だって．．．」
「食べ物を見つけても、迎えになんて来ないわよ。」
「いいよ、別に．．．」
「ここに残って死にたいわけ？」
「そういう訳じゃ．．．」
「それに、道が岩で塞がれてたりしたら、シンジにどかしてもらわなくちゃいけないし。」
「そういう事だけ、僕に押し付けるんだ。」
「あー、もう、ぐずぐず、うざったいわね。あたしが、ここまで言ってるんだから、とっとと来なさいよ！」
「僕のことなんて、どうでもいいんだろ。」

バシッ

思わず、シンジの頬を叩いていた。
シンジが、目を見開いて、私を見ている。
シンジから目をそらして、立ち上がった。
「勝手にすればいいわ。」
そう呟いて、歩き出した。
 

少し離れて、シンジがついてくる。
これで、少しは、生き延びるチャンスが増えた。
一人じゃ、動けなくなった所で終わりだから。

波打ち際を歩きながら、見覚えのある風景を探していた。
まず、現在位置を把握しなくちゃいけない。
山の配置から、第三新東京市なのを期待してるんだけど。

しばらく歩いて、明るくならないと埒があかないことに気づいて、
座り込んだ。
シンジを見た。
シンジが、立ち止まって、私を見ている。
シンジが近づいてきた。
「どうしたの？」
シンジが私に問う。
「明るくならないと、ここがどこなのか、分からないわ。」
「そう。」
「それに、ちょっと疲れたし。」
「そうだね。」
シンジが、少し離れて腰をおろす。

砂の上に横になった。
「これから、どうなるんだろう。」
思わず呟いた。
 

「．．．カ．．．アスカ。」
「ん．．．」
目を開けると、シンジが見ていた。
「明るくなったよ。」
「．．．そう．．．」
そう言って、起き上がった。
海が目に入る。
「芦ノ湖みたいだね。」
「多分ね。」
立ち上がって、周りを見てみた。
山肌に道路が這っているのが見える。
見覚えのあるパターン。
結構、家に近いのかもしれない。
とりあえず、あの一番低い道路まで、上がらなくちゃ。
けど、斜面が急すぎる。

「シンジ。」
「何？」
「あの道まで、登るわよ。」
シンジが山肌を見る。
「斜面が、もっと緩やかな所を探した方がよくない？」
「やっぱり、そう思う？」
「うん。」
「そう．．．」
「少し戻るといいかもしれないよ。」
「そう．．．」
そうかもしれない。
「じゃ、そうしようか。」
「うん。」
シンジと歩き出した。
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モニターのこちら側 Genesis 3:3 完

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