「とりあえず、服着よう？」
脱衣籠の棚に歩いていき、バスタオルを取った。

下着を変えて、ブラウスを着て、ショートパンツを履いた。
ミサトを見ると、Ｔシャツにショートパンツを履いて、私を見ていた。
「行く？」
ミサトに言った。
「ええ。」
ミサトが呟いた。

食堂に入ると、シンジが、椅子にかけていた。
「シンジ？」
シンジが私達を見る。
「ああ。ちょっと待ってて。」
シンジが、立ちあがって、調理場に歩いていく。
「座ろう？」
ミサトを見た。
「ええ。」
ミサトが私を見た。

「それで、どう思う？」
私の前の椅子に腰を下ろすと、ミサトが聞いてきた。
「さっきも言ったけど、あんまり意味ないと思う。」
ミサトから、少し視線を外して、答えた。
「そう。」
ミサトが、テーブルに視線を落として答えた。

シンジが、湯のみを持って、やってくる。
「ちょっと待っててね。」
シンジが、ミサトと私、そして、私の隣りに湯のみを置いて、調理場に戻っていった。
湯のみを取り上げて、お茶を少し啜った。
湯のみをテーブルに置く。
「前のアクセスが残っているとすると、今日、アクセスするのは、居場所を特定させるだけだし、第３新東京市が破棄されるのに乗じて、逃げ延びるとすれば、ここにいるしかないと思うし、だとしたら、今日、アクセスするのは、自分で自分の首を締めるだけだと思うけど。」
ミサトを見た。
ミサトが視線を落としている。
「そうね。」
沈黙が流れた。

「お待たせ。」
シンジが、焼きおにぎりと、お味噌汁、漬物、鮭の缶詰をお皿にあけたものを置く。
「足りなかったら、ご飯、あるから。」
シンジが言う。
「了解。」
「じゃ、いただきます。」
「「いただきます。」」
お味噌汁に口をつけた。

「今夜、マギにアクセスするのって、どう思う？」
焼きおにぎりを飲みこんで、シンジに言った。
「．．．」
シンジが、鮭を口に入れ、ご飯を口に入れる。
シンジを見ていた。
「ミサトさん？」
シンジが、ご飯を飲みこんで、口を開く。
「そう。」
ちらっと、ミサトを見て、そして、シンジを見て、言った。
「．．．」
シンジが、鮭に箸を伸ばし、口に入れ、ご飯を口に運ぶ。
シンジを見ていた。
「どっちがいいのか、よく分からないね。」
シンジが言う。
「．．．そう。」
「アスカが、いいと思うほうで、いいよ。」
シンジが、鮭とご飯を口に入れる。
「そう。」
なんとなく、複雑な気持ちになった。
沈黙が流れた。

デザートのパインの輪切りを食べていた。
多分、何を言っても、ミサトは、アクセスするんだろうな．．．
そんなことを考えながら、パインを食べていた。

「「「ごちそうさま」」」
シンジが、お皿と御椀をまとめて、立ちあがる。
「少し持とうか。」
シンジに言った。
「拭いておいてくれる？」
シンジが、テーブルを見て、言う。
「うん。分かった。」
テーブルを布きんで拭いて、布きんを調理場に持っていった。
「ありがとう。」
洗い物から目を私に移して、シンジが言う。
「どういたしまして。」
シンジに微笑んだ。

調理場から出て、食堂から出ると、ミサトが待っていた。
「お待たせ。」
「ううん。」
ミサトが言う。
広間に歩き出した。
「シンジ君、やさしいね。」
ミサトが言う。
「え？ああ。そうね。」
「うらやましい。」
ミサトが、小さな声で言う。
思わず、ミサトを見た。
「ミサト．．．」
ミサトが、私から顔を逸らすように俯いていた。
「ごめん。」
「．．．」
「なんでもないから。」
ミサトが呟く。
ミサトと手を繋いだ。
ミサトの体が、ほんの少し逃げるようにして、そして、緩んだ。
「ごめん。」
「．．．」
「ミサト。」
視線を前に落として呟いた。
沈黙が流れた。

「ミサト？」
布団に横になって、天井を見ていた。
ミサトの手が、私の手を軽くつかんでいた。
「何？」
「マギへのアクセス。どうするの？」
ミサトの手が、ぴくりと動いた。
「とりあえず、止めとく。」
ミサトの声がした。
「そう。」
そう声を出した。
沈黙が流れた。

「校庭、耕したりしないといけないかしら。」
ふと呟いた。
「そうね。」
ミサトが呟く。
「子供とか作ったりするのかな。」
なんとなく呟いた。
「そうかもね。」
ミサトが呟いた。
沈黙が流れた。
 

ふと目が醒めた。
時計は、午前３時をさしていた。
隣りの布団を見ると、ミサトは、いなかった。
「そう。」
呟いて、起き上がり、廊下に出た。

トイレに行き、その足で、制御室に歩いていった。
制御室のドアを開けると、ディスプレイを見ていたミサトが振りかえった。
ミサトの隣りに歩いていく。
ディスプレイを見ると、ハンブルグのマギのアクセス・ログを見ているようだった。

アクセス無し。

「ミサト？」
ミサトに話しかけた。
「何？」
「アクセスなし？」
「ええ。」
「他は？」
「全部。」
「そう。」
沈黙が流れた。

「アスカ？」
ミサトが口を開く。
「何？」
ディスプレイを見たまま答えた。
「私のこと、殺してくれない？」
ミサトが低い声で言う。
「何故？」
「一人で生きていくのは、嫌。」
「．．．」
沈黙が流れた。

「アスカ？」
ミサトが呟く。
ミサトを見た。
ミサトが、銃口をこめかみに当てていた。
「な．．．」
「私が死んだら、悲しんでくれる？」
ミサトが目を閉じる。

ミサトを椅子ごと突き飛ばし、拳銃を蹴り飛ばした。

ミサトが私を見る。
「あんた、バカ！？」
ミサトが、私から目を逸らし、体を丸めた。
「今度死んだら、もう生きかえれないのよ。分かってる？」
「分かってるわよ。そんなこと。分かっ．．．て．．．」
ミサトがすすり泣きを始めた。

涙が出た。
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モニターのこちら側 Genesis 3:23 完

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