シンジが、御椀と箸を纏めている。
器とフォークを纏めた。
シンジの後から調理場に入っていく。
「そこに置いておいて。」
「うん。」
流しの脇に器とフォークを置いた。
「ごめんね。」
「そんなことないよ。」
箸を洗っているシンジを見て、そして、調理場を出た。

食堂を出ると、ミサトが待っていた。
「お待たせ。」
「ううん。」
二人で広間に歩き出した。

布団に横になって、天井を見ていた。
ミサトが私の手を軽く握っている。
「なんだか不思議ね。」
なんとなく呟いた。
沈黙が流れた。

「何が？」
ミサトの声がした。
「こんな風に３人で、なんとなく過ごしてることが。」
沈黙が流れた。

「食べ物がなくなる心配をしているわけでもなく、どこかへ逃げることを考えるわけでもなく、自給自足する心配をするわけでもなく．．．」
「．．．」
「それどころか、家に服を取りに行ってる。」
「．．．」
「なんなんだろう。これ。」
沈黙が流れた。

「私がおかしくなってたから。」
ミサトが呟く。
「皆、おかしくなっちゃったのかな。」
「．．．」
「私のせいね。」
ミサトの手が離れた。
起きあがってミサトを見た。
ミサトが向こう側を向いて、体を丸めていた。
「ミサト。」
ミサトが体を震わせる。
「そんなことないよ。」
ミサトの肩に手を置いた。
「ごめん。」
そう言って、ミサトを背中から抱きしめた。
沈黙が流れた。
 

「．．．カ．．．アスカ。」
目を開けると、シンジが私を見ていた。
「シンジ。」
体を起こした。
「今、何時？」
「２時５０分。」
シンジが答える。
「了解。ちょっと待っててくれる？」
「分かった。」
シンジが立ちあがって、外に出ていく。
「ミサト。」
隣りに寝ているミサトの肩を揺らした。
「ん．．．」
ミサトが目を開ける。
「アスカ。」
「２時５０分だって。」
「ふーー。」
ミサトが体を起こして、ゆっくりと息を吐き出した。
「了解。」
ミサトが微笑んだ。

校舎を出たのは、３時１５分過ぎだった。
外に出ると、風が涼しかった。
「生きかえるわね。」
思わず口を開いた。
「そうね。校舎の中、暑すぎ。」
ミサトが言う。
「本当。」
思わず、笑っていた。

話しながら、しばらく歩くと、コンフォート１７マンションに着いた。
「ちょっと待ってて。」
ミサトが、鍵を開けていく。
「お待たせ。」
その言葉を受けて、シンジがドアを開けていく。
中に入り、シンジがドアを閉めるのを見ていた。

ミサトが、部屋のドアを開ける。
３人で、中に入った。
部屋に入り、カーテンと窓を開ける。
水筒の蓋を開けて水を飲んだ。
「水もないんじゃ、ここには、住めないわね．．．」
水筒の蓋を閉めながら、呟いた。

押し入れを開けて、収納箱を眺める。
「今度は、何を持っていこう。」
なんとなく、うきうきした。
 

紙袋を持って、リビングに行くと、シンジがソファにもたれていた。
窓が開け放たれて、涼しい風が入ってきていた。
シンジは、目を閉じて眠っているように見えた。
シンジの隣りに腰を下ろす。
シンジが目を開けて、私を見る。
「アスカ。」
シンジが呟いた。
「お待たせ。」
シンジが紙袋を見る。
「一つ？」
シンジが私を見て言う。
「うん。ドイツから持ってきた服はたくさんあるけど、背、伸びるし、日本では、思ったほど買ってなかったから。」
「そう。」
シンジの脇を見ると、ボストンバッグが一つあった。
「そのボストンバッグ、見たことある。」
「引越しの時？」
「そう。」
「いろんなことあったね。」
シンジが窓の外に目を向ける。
「そうだね。」
私も窓の外を見た。
沈黙が流れた。

「お待たせ。」
ミサトが紙袋を２つ持って、リビングに入ってくる。
「ミサト、もしかして、紙袋４つ？」
「そ。駄目？」
ミサトが甘えるような仕草をする。
「しょうがないわねー。」
思わず苦笑した。
シンジを見ると、シンジも苦笑していた。

ドアの鍵を閉めて、階段に歩いていく。
「明日も来る？」
ミサトが言う。
「うーん。思ったほど、持ち出すものないのよね。」
通路に目を落としながら答えた。
「そうね。」
ミサトが、少し低い声で答える。
「けど、来るのは、いいかも。気が向いたら、持って帰ればいいし。」
ミサトを見た。
「そうね。」
ミサトが前を見たまま微笑んだ。

玄関の鍵を閉めて、学校に歩き出した。

学校に着くと、辺りは、もう暗くなり始めていた。

シンジが、ミサトの紙袋を、床に置く。
「じゃ、私達、シャワー浴びるから。」
シンジに言った。
「うん。僕もそうする。」
「夕飯は、その後ね。」
「あ、おにぎり貰える？」
「あ、そうだったわね。ミサト？」
鞄を開けて、おにぎりの包みを取り出して、シンジに渡した。
ミサトも鞄から包みを取り出している。
「はい。」
ミサトが包みをシンジに渡した。
「ありがとう。それじゃ、後で。」
シンジが微笑んで、広間から出ていった。

シャワーを止めて、顔と髪の水を拭き取る。
体の水滴を拭き取っていた。
「アスカ？」
ミサトの声。
「何？」
ミサトに答えた。
「マギ、アクセスした方がいいと思う？」
ミサトが言う。
「．．．」
体を屈めて、足の水を拭き取っていた。
沈黙が流れた。

体を伸ばして、ミサトを見た。
「アクセスして、何かできる？」
ミサトから視線を外して、言った。
「．．．あまり有効な手は打てないと思う。」
「そう．．．」
沈黙が流れた。

「アクセスを察知される危険性は？」
口を開いた。
「あるわ。この前のアクセスも、検知されているかも。」
「そう．．．」
沈黙が流れた。
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