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「．．．ア．．アスカ．．．」
肩を揺らされる感じがした。
目を開けるとシンジの顔が見えた。
「アスカ。」
シンジが微笑む。
「ああ．．．おはよう、シンジ。」
布団の上に起きあがった。
周りを見まわす。
ミサトが隣りに寝ていた。
シンジを見た。
「．．．お昼だっけ？」
「うん。」
「そう．．．」
ミサトに近づいて、ミサトの肩を揺らした。
「ミサト。」
「ん．．．」
「ミサト。」
ミサトが目を開く。
「あ．．．」
ミサトが私を見る。
「お昼だって。」
ミサトに微笑んだ。
「うん。」
ミサトが起きあがり、視線を落とした。
「別にいいよ。ママって呼んでも。」
ミサトが、ハッとしたように私を見る。
「．．．」
ミサトに微笑む。
「うん．．．ありがと。」
ミサトが視線を落とした。
「．．．」
ミサトを見ていた。
シンジを見た。
「屋上で食べる？」
シンジに言った。
「いいよ。」
「おにぎり？」
「ううん。冷麦。」
「へー。冷麦かあ。楽しみね。」
シンジが微笑んだ。
シンジがレジャーマットを敷いていく。
「いいよ。」
「了解。」
靴を脱いで、レジャーマットにあがり、腰を下ろす。
ミサトが、立ったまま、私を見ていた。
「ミサト、どうしたの？」
「．．．うん。」
「はやく。」
「うん。」
ミサトが靴を脱いで、私の隣りに腰を下ろした。
シンジが、冷麦を盛ったざるの向こうに座り、汁を御椀に注ぎ、私達の前に置いていく。
シンジが汁を注ぎ終わった。
「食べようか。」
シンジが私達を見て言う。
「うん。」
「「「いただきます。」」」
箸を取った。
「ね、薬味ある？」
シンジに聞いた。
「七味と練りわさびと、あとカイワレがあるけど。」
「じゃあ、とりあえず、全部頂戴。」
「了解。」
シンジが笑いながら、七味のビンと、練りわさびのチューブと、カイワレののった皿を、
私の前に置いた。
「サンキュー。」
七味のビンのキャップを外し、汁に一振り、二振り。
「ちょっと、多かったかな。ミサト、使う？」
「うん。」
ミサトに渡した。
練りわさびのチューブのキャップを外し、５ｍｍくらい出して、御椀につけた。
ミサトの前に置いた。
カイワレを一つまみ取って、御椀に入れた。
わさびを汁に溶かした。
シンジを見た。
「じゃ、お先に。」
シンジが微笑む。
冷麦を一塊取って、汁に漬け、口に入れる。
だしの味と薬味の辛さが口の中に広がり、冷麦の冷たい喉越しを感じた。
「なんか、幸せって感じね。」
シンジに微笑んだ。
「．．．」
シンジが微笑んだ。
「ふー、ごちそうさま。」
後ろに下がって、後ろに手をつき、足と背中を伸ばした。
「蕎麦湯、飲む？」
シンジが言う。
「あ、あるんだ。じゃ、頂戴。」
シンジがヤカンを取りあげ、私の汁の御椀に蕎麦湯を注ぐ。
「あ、もういいわ。」
シンジがヤカンを戻す。
御椀に持ち上げ、口をつけた。
シンジが立ちあがる。
「？」
シンジを見ていた。
屋上への階段のドアを開け、中に入り、すぐに出てきた。
手に缶詰を持っている。
「なに？」
シンジに聞いた。
「あんみつ。」
「なんか、最近、やけに気が利くわね。」
「お褒めにあずかり光栄です。」
「ぷっ。」
「ははは。」
シンジが笑いながら、缶を開けていく。
「はい。」
シンジがあんみつの盛られた御椀を私の前に置く。
「ありがと。」
「ミサトさんも食べますよね？」
シンジがミサトを見る。
「あ、うん。ありがとう。」
ミサトが冷麦を食べる手を止めて、シンジに言った。
「「「ごちそうさまでした。」」」
シンジが、手早く、御椀を片して行く。
「何か持っていこうか？」
シンジに聞いた。
「じゃ、ヤカン持ってくれる？」
「了解。」
ヤカンを取った。
「私も、何か持とうか？」
ミサトが言う。
「じゃあ、ざると御椀、持っていってもらえますか？」
シンジが、ざると御椀をお盆に載せて、レジャーシートの脇に置きながら言う。
「了解。」
ミサトがお盆を持つ。
シンジがレジャーシートを畳み始めた。
ミサトと広間に戻った。
「なんか、食べて寝てばかりね。」
苦笑いしながら、ミサトに言った。
「それじゃ、運動も兼ねて、明日は、芦ノ湖に行かない？」
ミサトが言う。
「そうね。けど、少ししたら出かけるっていうのもいいと思うけど。」
「けど、暑いし、何もないし．．．」
「そうね。」
「結構、眠れるし。」
「そうなのよ。」
「疲れてたのかしら。」
ミサトを見た。
ミサトが遠くを見る目をしていた。
沈黙が流れた。
「ミサト．．．」
ミサトが私を見る。
ミサトの首に手を伸ばした。
ミサトが私を見ている。
ミサトの首に手をかけた。
ミサトの首をしめる手に、少しづつ力を入れる。
「あ．．．アス．．．カ？」
ミサトが私を見る。
「私が帰ってきたとき．．．」
「．．．」
「気がついたら、シンジが私の首を締めてた．．．」
「．．．」
「私がシンジの頬に右手を添えたら．．．」
「．．．」
「シンジが泣き出して．．．」
「．．．」
「シンジが手を緩めたの．．．」
「．．．」
「ミサト．．．」
ミサトが悲しそうな目をして、私を見る。
ミサトが目を閉じた。
ミサトの目から涙が流れた。
ミサトの首から手を離した。
「ミサト．．．」
ミサトが目を開き、私を見る。
「．．．」
「ね。」
ミサトに言った。
「何？」
「どうして？」
ミサトが私から視線を逸らして俯く。
「私、アスカに酷いことをしてきたから。」
「．．．」
「仕方ないかな、と思って。」
「．．．」
沈黙が流れた。
「ミサト？」
「何？」
ミサトが体を動かさずに言う。
「ごめん。」
沈黙が流れた。
「ごめん。」
ミサトが呟く。
ミサトの後ろに回り、ミサトの背中にもたれるように座った。
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