自分の広間に戻って、部屋着がわりのジャージとタオルを取る。
ミサトの広間に寄った。
「ミサト？」
「ママ。」
ミサトが出てきた。
「下着がいるのかしら？」
「うん。」
「じゃ、衣料庫に行きましょう。」
「うん。」
衣料庫で下着を取って、浴場に行った。

脱衣所で、制服を脱いでいく。
リボンを外し、ベストを脱いで、スカートを下ろす。
シャツを脱いで、ブラジャーを外し、ショーツを脱ぐ。
ミサトを見た。
ミサトが私を見ていた。
「入ろうか。」
「うん。」
浴場に入った。

なんとなく、小さい浴槽にお湯を入れた。

体を洗って、浴槽に体を沈めた。
久しぶりな感じがした。
「入っていい？」
ミサトが聞く。
「いいよ。」
ミサトに答えた。
ミサトが浴槽に入ってくる。

ザー。

お湯があふれた。
ひどく贅沢なことをしている。そう思った。
「久しぶりな感じ。」
ミサトが呟く。
ミサトを見た。
「そうね。」
「ママと一緒にお風呂に入ったのって．．．」
ミサトが遠くを見る。
ミサトを見ていた。
突然、ミサトが、俯いて、額を押さえる。
「大丈夫？」
立ちあがって、ミサトの肩に手を置いた。
「．．．」
「ミサト？！」
ミサトの頭に顔を寄せ、手を置いた。
「あ．．．うん．．．大丈夫．．．」
ミサトの体が水の中に倒れ始めた。
「ミサト！」
ミサトの脇の下に手を入れて、浴槽の脇に引き上げた。
ミサトの体を床に寝かせる。
「ミサト？」
「．．．うん。」
ミサトが目を開けて、私を見た。
「よかった。頭痛いの？」
ミサトが私を見ている。
「温泉．．．」
「温泉？」
．．．あのときのこと？
「アスカ？」
「！」
「私．．．」
ミサトの顔を見ていた。ミサトの髪を撫でる。
「私がアスカだって分かる？」
ミサトに言った。
「．．．ええ。」
「．．．そう。よかった。」
「私．．．」
「レイのことを聞いて、ちょっとおかしくなっていたのよ。」
「．．．そう。」
ミサトが起きあがる。
ミサトが、湯船を見ていた。
ミサトを見ていた。

「ね、アスカ？」
唐突にミサトが口を開く。
「何？」
「ママって呼んでいい？」
「．．．いいよ。」
「ママ。」
ミサトに抱きしめられた。
「ミサト。」
ミサトの髪を撫ぜた。

体を拭いて、下着とジャージを着た。
ミサトを見た。
ミサトも着替え終えて、私を見ていた。
「お待たせ。」
ミサトに言った。
「ううん。」
ミサトが言う。
「行こうか。」
「ええ。」
浴場を出て、ランドリーの洗濯機に服を入れ、スイッチを入れた。

食堂に入ると、シンジが椅子に腰を下ろしていた。
「シンジ。お待たせ。」
シンジが私達を見る。
「今から用意するね。」
シンジが立ちあがり、調理場に入っていった。
椅子に腰を下ろした。
ミサトが私の前に腰を下ろす。
シンジが、私達の前に湯のみを置く。
「ありがとう。シンジ君。」
ミサトが言う。
シンジが少し驚いたような顔をする。
「直ったんですか？」
シンジが言う。
「ええ。ありがとう。」
「そうですか。」
シンジが私を見る。
「よかったね。」
「うん。」
シンジに微笑んだ。

シンジがカレーの皿を並べていく。
「カレー．．．」
ミサトが呟く。
「嫌いだっけ？」
ミサトに聞いた。
「ううん。そんなことないよ。」
ハッと思いつき、シンジを見た。
「．．．シンジ？」
「何？」
「まさか、ミサト・カレーじゃないわよね？」
シンジが苦笑する。
「さすがに、あれを、今ここで食べるのは、よくないと思うよ。」
「よかった。」
思わず、息をつく。
「てっきり、ミサトの記憶を取り戻すために、あれを作ったのかと思ったわよ。」
シンジが苦笑いしている。
「それって、なんだか、私の作るカレーが、まるで毒みたいな言い方じゃない？」
ミサトが、膨れっ面をして言う。
「「そのとおり！」」
思わず、シンジとユニゾンしてしまった。
「ハハハ。」
シンジが笑う。
「フフフフ。」
私も笑った。
「何よ、二人でユニゾンして笑っちゃって。ふん、だ。どうせ、私は料理が駄目ですよーだ。」
ミサトが半分笑いながら、いじけていた。

「「「ごちそうさま。」」」

シンジが食器をかたし始める。
私も皿を持って立ちあがった。
「あ、別にいいよ、アスカ。」
「え、でも。」
シンジが、ミサトを見て、私を見た。
「分かった。じゃ、これ。」
シンジに皿を渡した。
椅子に座った。
「屋上、行こうか？」
ミサトに言った。
「．．．そうね。」
ミサトが立ちあがる。
私も立ちあがった。

屋上で、星を見ていた。
街には、明かりもなく、静かに夕闇が広がっていた。
「今日のこと覚えてる？」
ミサトに聞いてみた。
「ええ。」
「そう。」
沈黙が流れた。

「アスカ？」
ミサトが唐突に口を開く。
「何？」
少し沈黙が流れた。
「ありがとう。」
「ううん。別に。」
「．．．」

ミサトを見た。
ミサトが泣いていた。
「ミサト？」
「え？」
ミサトが私を見る。
「．．．」
ミサトを抱きしめた。

「ありが．．．と．．．アス．．．う．．．うわああ．．．」

ミサトを抱きしめながら、空を見ていた。
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モニターのこちら側 Genesis 3:14 完 

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