上空で旋回しているエヴァシリーズを見ていた。
「来ないね。」
エヴァシリーズを見上げたまま言ってみた。
「そうね。」
ミサトが答える。
「どう来ると思う？」
「さっきのリツコの口ぶりだと、アスカを殺して、シンジ君に補完を起こさせるみたいだったけど．．．」
シンジを見た。
シンジがミサトを見る。
「あれを起こしたのは、綾波だと思うけど．．．」
シンジが言う。
「それに、初号機もないし．．．」
「そうね．．．あのレイは、偽者みたいだし．．．どうするつもりなのかしら．．．」
ミサトが、シンジを見て、そして、私を見た。
沈黙が流れた。

ミサトが空を見上げる。
「１、２、．．．１０か。」
ミサトが呟く。
「１０？」
そう聞きながら、私もエヴァシリーズを数えてみた。
「１０だわ。」
「あれの中の一機に、シンジ君を乗せる？」
シンジを見た。
「だとしたら、遅かれ早かれ、一機降りてくることになりますね。」
シンジが言う。
「そういうこと．．．かな。」
ミサトが言う。
「まともに動かせるかしら。」
聞いてみた。
「それは、ないね。多分。」
シンジが言う。
ミサトを見た。
「．．．」
沈黙が流れた。

「けど、乗るしかないかもね。」
ミサトが口を開く。
「少しでも生きのびるために？」
ミサトに聞いてみた。
「ええ。」
ミサトが頷いた。
 

少しして、羽の音が聞こえてきた。
「来たみたいね。」
空を見上げて、ミサトが言う。
「そうね．．．」
私も空を見上げて答えた。

程なくして、私たちから少し離れたところに、エヴァが一機舞い降りた。
同時にミサトの携帯が着信音を発した。

「はい。」
『ミサト？』
「ええ。何の用。リツコ？」
『さっき、あなたたちが姿を消したときは、驚いたわ。』
「そう。」
『それで、エヴァ、届いてるでしょう？』
「ええ。目の前にいるわ。」
『乗ってもらえる？』
「断ったら？」
『それは止めておいた方がいいと思うわ。これは、友人としての忠告。』
「そう．．．」
『じゃあ、後はよろしくね。』

ミサトが携帯を耳から離し、オンフックボタンを押した。

「あれに乗って欲しいそうよ。」
ミサトが、エヴァを見ながら言う。
ミサトが私たちを見た。
「避けられなさそうね．．．」
ミサトに言った。
「そうね．．．」
ミサトが呟いて、エヴァを見た。
 

エヴァに近づくと、手が下りてきた。
手に乗ると、手が、背中に回り、エントリープラグの辺りに接した。
エントリープラグがリリースされ、ハッチが開く。
エントリープラグの中に乗り込んだ。
 

エヴァ操縦席

「やっぱり、僕が席に座るんでしょうね．．．」
シンジが、そう呟いて、席に座った。
「大丈夫？」
聞いてみた。
「今のところは．．．」
インジケーターが動き出す。
「う．．．ぐ．．．」
シンジが呻いた。
「大丈夫？」
返事がなかった。
「シンジ！」
シンジの肩を揺らした。
その瞬間、後ろで物が倒れる音がした。
振り向くと、ミサトが倒れている。
「ミサト？！」
『まさか、精神汚染？！』
その瞬間、頭の中に鋭い金属音がした。
思わず目を閉じた。
『来た？！』
しかし、次の瞬間、何もなかったように音は消えていた。
目を開けると、モニターに、小さくなった第壱中学校が映し出されていた。
エヴァが上昇を始めたらしかった。
そして、倒れているミサト。
振り返ると、シンジが、操縦席で上体を倒れこませていた。
「私だけ？」
『ええ．．．』
『レイ？！』
『久しぶり。』
『あんたが、私を守ってくれたわけ？』
『ええ。』
『二人は大丈夫なの？』
『多分、大丈夫。二人の中にも、私がいるから。』
『そう。私ほどじゃないと言うこと？』
『そう。』
モニターを見ると、かなり上空まで来ているようだった。
『これ、どうにかならないの？』
『まだ分からない。』
『まだ分からないって。この後、リリスが出てくるんじゃないの？って、リリス．．．？』
『．．．』
『リリスは、ここにいる．．．じゃあ、何が．．．』
 

発令所

「エヴァパイロットは、２名が意識を失い、１名が意識を維持しているようです。」
オペレーターが報告する。
操縦席の映像がフロントスクリーンに映し出される。
シンジとミサトが倒れ、アスカがモニターを見ている。
「アスカの状態を詳しく。」
リツコが指示する。
「駄目です。詳細な情報が取れません。」
オペレーターが答える。
「情報収集続けて。」
スクリーンを見つめながらリツコが言った。
 

エヴァ操縦席

モニターに、地上から、巨大な白い人型の物体が浮かび上がるのが映った。
『リリス。』
アスカが頭の中で呟く。
『そのようね。』
レイが頭の中で答えた。
『どうするつもり？』
『何も。』
『あんた、これ、動かせないの？』
『動かせないわ。』
『じゃあ、仕方ないわね。』
『ごめんなさい。』
『．．．あんたが謝る事ないわ。』

そうこうするうちに、リリスが目の前に浮かび上がり、そして、手を伸ばしてきた。
『来るわね。』
『そうね。』
『本当に何もしないつもり？』
『．．．』
『本当にまずいことになりそうになったら、なんとかしなさいよ。』
『．．．』

そして、ＬＣＬ化が始まった。
シンジが、砂場で泣いてるシーンや、ミサトが、加持さんと寝てるシーンや、シンジが、台所で私と言い合ってるシーンや、．．．
『え？』
『これが、碇君が、あの時見たもの。』
『そう．．．』
シンジが、レイに組み敷かれてるシーンや、レイに膝枕されているシーンや、レイや渚カヲルといるシーン。
そして、シンジが、シンジのママと話しているシーン。
『終わり？』
『ええ。』

元のエヴァの操縦席に戻った。
モニターの向こうには、リリスがまだいた。
そして、周囲には、エヴァシリーズ。
『夢？』
『いえ。補完は起こったわ。』
『そう。それはいいとして、リリスとエヴァシリーズ。どうするつもり。』
『．．．』

モニターに、リツコの映像が現れた。
「聞こえる。アスカ？」
リツコが言う。
「ええ。」
リツコに答えた。
「補完、失敗したみたいね。」
「そうみたいね。」
「あなた、何者？」
「さあ。私のせいじゃないわよ。」
「やっぱり、あなたを殺さないといけないみたいね。」
「．．．」
「ＬＣＬ濃度上げて。」
『本当に殺すつもりみたいよ。どうする？』
次の瞬間、息が苦しくなった。
『少し隠れていて。』
『え？！』
体がＬＣＬ化した。
 

発令所

「エヴァ操縦席に、アンチＡＴフィールドが展開。パイロットがＬＣＬ化しました。」
オペレーターが言う。
「何をするつもり？」
リツコが呟く。
「エヴァ操縦席に、高エネルギー反応。パターン青！人間！綾波レイです！！」
そう言って、オペレーターがリツコを見る。
フロントスクリーンを食い入るように見つめるリツコ。

フロントスクリーンに映るエヴァ操縦席に、紅眼、蒼髪のレイが立っていた。
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モニターのこちら側 Genesis 3:101 完 

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