アスカの左腕に腕を絡めて、加持一尉の方を見た。
「じゃ、撮るぞ。はい、チーズ。」
カシャ。
「もう一枚撮ってくれる？」
「ああ。」
アスカが、私を横から軽く抱き、右頬に唇を押し当てた。
カシャ。
「アスカ？」
「さっきのお返しよ。」
「アスカ．．．」
葛城三佐がカメラを持って歩いてくる。
「はい。」
アスカがモニターを見る。
私も、横から覗きこんだ。
二人とも顔が赤くなっていた。
「お返しにならなかったわね。」
「アスカ．．．」
アスカが微笑む。
アスカに微笑んだ。
「もー、熱いわね。」
葛城三佐が言う。
「ミサトと加持さんほどじゃないわ。」
「よくゆーわね。こんな所で、キスまでしておいて。」
「ミサトはしないの？」
「う。そういうこと言うわけ？加持？！」
「おいおい。その辺にしとけよ。」
「アスカに、こんなこと言われて平気なわけ？」
「宿の部屋、別々にしたんだろ？そういうことは、宿でって、ことにしようや。」
「加持．．．」
「不潔。」
「アスカに言われる筋合いはないわ。」
「それもそうね。」
アスカと葛城三佐が笑い出す。加持一尉が、それを見て微笑んだ。

バタン。葛城三佐がドアを閉める。
「この後、どうしようか。」
「三笠ハウスと白糸の滝に行くかどうか？」
「ええ。」
「まだ、２時だからな。いいんじゃないか？行けば。」
「そうね。」
車が走り出した。
カラマツ並木を抜けて、程なく車は右に入り止まった。
「ここ？」
「ええ。」
葛城三佐がドアを開けて降り、シートを前に倒す。
車を降りた。

「へー。ドイツの建物みたいね。」
「でしょ？昔は、こういうのが流行だったのよ。ホテルだったんだけど。いまは、重要文化財になってるわ。」
「ふーん。」
「写真撮る？」
「レイ？」
「ええ。」
「全景が入る感じで撮ろうか。」
「そうね。」
少し離れた位置に並んで立った。
「背中合わせに立ってみて？」
葛城三佐が言う。
横を向いたアスカの背中に背中を合わせて、手を繋いだ｡
葛城三佐の方を見る。
「じゃ、撮るわよ。はい、チーズ。」
カシャ。
「加持？」
「ああ。」
「アスカ、よろしくね。」
「ええ。」
葛城三佐と加持一尉が歩いてきて、カメラを渡す。
葛城三佐がいた位置に歩いていく。
加持一尉が葛城三佐の肩を抱いている。
「はい、チーズ。」
カシャ。

バタン。葛城三佐がドアを閉める。
「次は、白糸の滝？」
「そうよ。軽井沢に来たら、一応、寄っておかないとね。」
「名所なわけね。」
「そういうこと。」
車が動きだした。
林の中、緩い上り坂を走っていく。
白糸ハイランドウェイの小瀬温泉のゲートを通る。
林の中をしばらく走ると白糸の滝の看板。
右に入り、駐車場に車が止まる。
葛城三佐がドアを開ける。

「滝は？」
「あそこから少し歩くのよ。」
葛城三佐が道を指差している。
「そうなの。」
加持一尉がドアをロックした。
「行こうか。」
「ええ。」
加持一尉と葛城三佐が歩き出す。
「行きましょ？」
アスカに肯いた。

幅の狭い通路を、少し歩くと視界が開けて、幅広く広がる滝が現れた。
細く白い流れが何十も何百も並び、流れ落ちている。
滝の大きさと比べて、小さな水音が静けさを感じさせる。
傾いた日差しが流れの所々を照らしていた。

「不思議な所ね。」
「そうね。」
アスカに葛城三佐が答える。
加持一尉が写真を撮っている。
沈黙が流れた。

「行こうか。」
「ええ。」

車に戻った。
車が走り出す。
林の中をしばらく走ると、白糸ハイランドウェイの峰ノ茶屋のゲート。
ゲートを抜けると、程なく四つ辻に。
向こうに浅間山が見える。
地震観測所の看板。
車が看板の指す道を入っていく。すぐに、地震観測所の前に着いた。
「降りるかい？」
「どうする？」
葛城三佐が私達を見る。
「いいわ、別に。」
「ええ。」
「そう。行きましょ。」
「ああ。」
大回りして、道に戻っていく。
「北軽井沢の方を通って行くんでいいのかな？」
「鬼押出しの方が、景色がいいんじゃない？」
「そうかもしれないな。」

鬼押ハイウェイのゲートを通った。
左手に小浅間山。
しばらく行くと浅間山が見え始める。
鬼押出し園の看板。
プリンスランド。
ゲートを過ぎる。
万座鹿沢口まで５Ｋｍの標識。
しばらく川沿いを走り、草津道路へ。
２０分ほどで温泉街に、程なく宿に着いた。

「さ、着いたぞ。」
葛城三佐がドアを開ける。
アスカを見た。アスカが微笑む。
トランクの開く音。
葛城三佐がシートを倒し、トランクにまわる。
車を降り、トランクにまわる。
「どっち？って、もしかして、赤い線の入ってる方がアスカで、白の方がレイ？」
「ご名答。」
「了解。はい、アスカ、レイ。」
葛城三佐がバッグを渡してくれる。
「Ｄａｎｋｅ！ミサト。」
「ありがとう。」
「どうしたしまして。」
葛城三佐が大き目の荷物を出し、下に降ろす。
トランクを閉めた。横に加持一尉。
「駐車場は？」
「この裏よ。」
「じゃ、その荷物は、俺が持つから、葛城が止めてこいよ。」
「サンキュー。じゃ、ちょっと、待ってて。」
葛城三佐が車に乗り込み、動かし始めた。
「じゃ、中に入って、待とう。」
「ええ。」

「ごめんください。」
「はーい。」
仲居さんが出てきた。
「昨日、お願いした、加持ですが。」
「はい、承っております。４名様？」
「一人、車を停めにいってまして。」
「承知しました。では、あちらでお待ちください。」
手の先にソファがあった。
「はい。
  じゃ、あがろうか。」
「ええ。」
「下駄箱は適当に使っていいんですか？」
「はい。」
木の札のようなものが一つ一つの箱に付いていた。
加持一尉が靴を入れ、戸を閉めて木の札を抜き取っている。
続いて、アスカが靴を入れた。
私も入れた。

ソファに腰を下ろす。
「アスカと葛城は、前に来たことがあるんだよな？」
「ええ。露天風呂が広くて気持ちいいの。」
「そうか。楽しみだな。」
「加持さんは、一人になっちゃうけど。」
「ああ。ま、仕方ないさ。」
「この後は？」
「そうだな。まだ４時だから、辺りを少し歩いて、その後、ここの露天風呂に入
るか。」
「湯畑ね？」
「アスカは、行ったのか。」
「ええ。」
「じゃ、レイに見せるという感じだな。」
「湯畑？」
「見てのお楽しみよ。」
アスカがウインクした。

「お待たせー。」
葛城三佐が靴を脱いで、下駄箱に入れている。
「お待たせ。」
葛城三佐がソファの脇に来た。
「いらっしゃいませ。お疲れ様でした。それでは、ご案内致します。」
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モニターのこちら側 Genesis 2:5 完 

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