アスカが鍵を締める。

エレベーターを降りて、外に出ると、見覚えのある青い車が止まっていた。
ドアが開いて、加持一尉が降りてくる。
「加持さん！」
「久しぶりだな、アスカ。さ、乗って。おっと、その前に荷物をもらえるかい？」
「はい！」
アスカが加持一尉に荷物を渡している。
「レイも。」
「はい。」
加持一尉に荷物を渡して、車に乗り込んだ。

「ちょっち窮屈だけど、我慢してね。」
「ま、しょうがないわね。我慢してあげるわ。」
「アスカぁ？！」
「あー、怒らない怒らない。しわが増えるわよ、ミサト。」
「いちいちうるさいわね。もー、少しは、レイを見習いなさいよ。」
「へいへい。分かりました。」
二人のやり取りに思わず苦笑した。
バタン。加持一尉がドアを閉める。
「いい？」
葛城三佐が聞く。
「ああ。」
加持一尉が答えた。
車が動きはじめる。

アスカが耳に口を寄せてくる。
「加持さんて、死んだんじゃなかったの？」
アスカを見た。
アスカが真顔で私を見ている。
アスカの耳に口を寄せた。
「ガフの部屋が開いたから、死んだ人もいるの。その意味では、葛城三佐もそう。」
アスカを見た。
アスカが耳に口を寄せてくる。
「そういえば、私もそうだったわね。」
アスカが私を見る。
アスカに肯いた。

「加持さん。ここには、いつごろから？」
アスカが聞く。
「いつだっけ、葛城？」
「そうねー。沖縄から帰ってきてすぐよ。一月位前かしら。」
「沖縄なんて行ったんだ。」
「ええ。修学旅行行けなかったからって、アスカにねだられたの。」
「なるほど。あの時、アスカ、楽しみにしてたからな。」
アスカが話しだす。
「そ、行ける時に行っとかないとね。」
「そうだな。」
加持一尉が答えた。

車は、程なく、御殿場を抜け、山中湖、河口湖を過ぎた。
車だと早いのね。
碇君と歩いた時の事を考えながら、外を見ていた。
「勝沼、寄って行かない？」
葛城三佐が言った。
「朝っぱらから、ワインかい？しかし、まだ、９時前だぞ。開いてないんじゃないか？」
「あー、確かに。しまった。計画ミスだわ。」
アスカと顔を見合わせて笑った｡
「笑うことないでしょー。」
「ごめん。ミサト。」
笑いながら、アスカが言った。

車は、甲府を経て、須玉へ。
道路脇に増富ラジウム鉱泉の看板。
「温泉か。近くにも結構あるもんだな。」
「近くと言えば、箱根にもあるわよ。」
「そうだな。」

なだらかな山並みを、遠くに見ながら、車が進んでいく。

「レイ。」
「ん．．．」
「レイ、起きて。」
目を開けた。
アスカにもたれて眠っていた。
「アスカ。」
「お昼、食べるわよ。」
「ここは？」
「信濃追分の蕎麦屋さんだって。」
「そう。」
「結構、有名みたいよ。」
「そう。」
「さ、早く降りて。」
「ええ。」

「お決まりになりましたら、お呼びください。」
店員さんが、お茶とメニューを置いていく。
メニューを開いた。
「俺は、割り子そばかな。」
「そうね。私もそうしようかな。」
「それおいしいの？」
「ああ。アスカ達には、ちょっと多いかもしれないな。」
「そう。この、そばやきもちっていうのは？」
「あ、忘れてた。それも頼まなくちゃ。」
「俺は、いいよ。その辺で適当に調節するか。」
「レイは？」
アスカを見た。
「少し、もらってもいい？」
「いいわよ。」
「じゃ、私は、山菜そば。」
「了解。
すみません！」
葛城三佐が店員さんに声をかけた。

「おまたせしました。」
店員さんが、膳を置いていく。最後に蕎麦湯の入った湯差し。
「ごゆっくりどうぞ。」

「それじゃ、食おうか。」
「ええ。」
「「「「いただきます。」」」」
アスカが膳の上を見回してから、私を見た。
「それ、ちょっと、もらっていい？」
「ええ。」
アスカが椀を私に渡す。
椀に蕎麦と山菜を入れて、アスカに渡した。
「ありがとう。」
アスカが蕎麦をすする。
私も一口。
「ん。なるほど。」
アスカが言った。
アスカが蕎麦つゆを椀に注いでいる。
アスカが蕎麦をつけ、すすっている。
アスカが私を見て微笑む。
アスカが椀を私に渡す。
「ありがとう。」
蕎麦を取って、軽くつゆにつけ、すすった。
「おいしい。」
アスカに微笑んだ。
アスカが私に微笑む。
「たべよう？」
「ええ。」
 

「よろしいですか？」
「はい。」
店員さんが膳を下げる。
すぐに、そばやきもちが来た。
「へーっ。これが、そばやきもち？」
「ええ。食べましょ？レイ、取って。」
「あ、はい。」
「これ付けてね。」
葛城三佐の皿から一つ取り、たれを付けて一口。
味噌の味が口の中に広がる。
「結構あいますね。」
「でしょ？」
葛城三佐が、一口食べている。

蕎麦湯を飲みおわって、一息。
「それじゃ、行こうか。」
「その前に、ちょっち、お手洗い。」
「あ、私も。」
「じゃ、先、行ってるよ。葛城？」
「ええ．．．はい。」
葛城三佐が、加持一尉に、キーを渡している。
「レイは？」
「あ、私も。」
「ＯＫ。俺も、行っておくかな。」
加持一尉が苦笑しながら言った。
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